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自作詩『雨の余韻』

自作詩『雨の余韻』

雨の日に
傘をさして歩くと
ポツポツとした音が
体の内側へ落ちていく

それは天からの
おすそわけかもしれない
わかりやすいやり方で
いつもそうだった

私が私になる前から
いつだってそうだった
だからおんぶにだっこで
この世に現れたのだ

 胸の底に静かに置かれた
 満たされない無数の空洞が
 古びた記憶の断片に
 そっと目配せをしている

 気にせずに行ってしまえ
 目の前に集まる悲しみが
 足元へと落ちていく前に
 止まらずにいってしまえ

 空き地と路地との境目で
 待っている
 錆びついた子どもの影が
 まっている

朽ち果てた進入禁止のロープでさえも
かすかな命綱としての使命を帯びて
しだいに細く冷たく落下していく

きれいな音のひとすじが
するどい尾を引いて
果てしない空洞を
どこまでも伸びていく

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