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2020年観てよかった映画10本+α

 2020年の頭に立てた目標が、「今年は映画を劇場で50本観る!」だったのですが、コロナ禍で劇場から足が遠のき、22本ほどで2020年を終えました。

 動画配信で観て達成すればよいではないかと思われるでしょうが、家だとテレビを独占して2時間也を集中できるかというとできないわけですよ。できないながらも配信で観た作品もあり、それを考えると50本は観られたかなぁ、という気もしなくもないですが、とりわけ印象に残ったものについて書いてみたいと思います。ブルーレイやDVDが発売になっているものはリンクを貼っておきます(アフィリエイトではありません)。動画配信の方が手軽に観られる時代になったので、気になった方は検索してみてください!

 なお、順番はテキトーでして、良かった順ではありません。

1.僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46

 のっけからグループアイドルのドキュメンタリーかよ、と思うこと勿れ。内容からは当然、絶対的センターであった平手友梨奈の脱退表明の背景がなんとなく察せるわけだが、それ以上にたった1つの衝撃的なシーンが頭から離れず、それがこの映像作品のぼくの評価を揺るぎなきものにしている。

 アート表現に心血を注ぎ込みすぎて満身創痍といってもいい平手友梨奈が、ライブ中ステージ裏で疲労困憊で立つこともままならない姿が映し出される。スタッフや仲間の手を借り、肩を借り、パイプ椅子に項垂れる彼女の口に水筒のストローが突っ込まれる。そして精根尽きたのかうわごとのように受け答えする平手を、あろうことかスタッフはレールの上にあるカタパルトに載せ、三人がかりでそれを勢いよく押し出し、ステージ上へと射出するのだ。

「これ、エヴァンゲリオンで観たやつ……」そのシーンの偽らざる最初の感想。

 ステージ上に降り立った平手は、しばしの静寂を漂わせる。それまでのシーンで、気持ちを奮い立たせられない瞬間や、怪我を負うところを見せられていたこともあり、観ているこちらが唾を飲み込む。歌い始められるのか、崩れ落ちてしまうのではないか。

 平手の腕がスッと上がり、静かに、そして力強く表情豊かなダンスが始まる。「なんだよ、ハラハラさせやがって」と思う頃には、もう傍観者ではいられない自分を感じてしまっている。

 映像は全編に渡って、欅坂46のメンバーへの丁寧なインタビュー、それこそ無言になってしまったり、言葉を濁すことへの躊躇をしながらも気丈にふるまったりする姿をさしはさみながら、グループアイドルの姿を切り取っていく。

 対照的なのが日向坂46ドキュメンタリー映画『3年目のデビュー』である。もともと欅坂46の二軍、シャドーキャビネット的な役割を負わされていた「けやき坂46」が、アイデンティティを獲得し「日向坂46」としてメジャーシーンへ躍り出てあれよあれよという間にヒットしていく姿を描いているが、これは苦悩すべてが成長譚に欠かせないシーンであり、清々しいものだ。

 だが、この2つを見ると明らかに違いわかるのが「呪詛たる言葉」の有無だ。昨年公開された乃木坂46のドキュメンタリーも含めて3つの「坂道グループ」の映像のうち、秋元康プロデューサーが姿をもって登場するのは「欅坂46」のドキュメンタリーだけ。

 そして、その貴重なシーンで、氏はあろうことか欅坂のメンバーに「これまでに無いものが見たい、後年にそのルーツが欅坂であったと振り返られるような、そういうものが見たい」と激励するのだ。

 ぼくはこれを、メンバーが素直に受け取って信念としてしまえばしまうほど「呪い」となる言葉、すなわち呪詛だと感じた。

 果たして平手友梨奈はこの言葉に呪われてしまったということなのだろうか。事実は、ぜひ観て確かめてほしい。

 そして、欅坂46、日向坂46、どちらの映像にも登場するもう一人の重要人物がいる。「長濱ねる」がそれだ。オーディションを通過していたにも関わらず欅坂46発足当初には事情から参加できず、その居場所として作られた「けやき坂46」で絶大な人気を得た彼女だったが、「欅」と「けやき」の兼務の過酷さを発端としていずれ精彩を欠いていき、挙句、グループアイドルとしての舞台を去ってしまう。2つの映像を並べて観ると、彼女が「欅坂」と水が合わなくなってしまっていただろうこと、「けやき坂」の他のメンバーの梯子を外してしまっただろうということが透けて見えてくる。

 これはアイドルというものが「アイドルという役割」を演じさせる職業であるのなら、周囲の大人がうまく采配すべきだったともいえる。だが、生身の人間を扱うのは難しいこともあるし、おそらく小手先の運用ではならないほどに「駆け出してしまった」のがこの2つのグループなのだ。

 現代のアイドルシーンを語るなんてことは、熱烈なファンでもない限り一般の人にそうそう起こることではないが、「櫻坂46」へと改名し憑き物がとれたかのように年末歌番組で舞い踊る彼女たちや、メンバーそれぞれがバラ売りとでも言わんばかりにどのチャンネルのバラエティー番組にも「日向坂46の○○です」と登場する彼女たちを目にするときに、そのバックグラウンドストーリーを知っておくのは悪くない。グループアイドルは存在そのものが虚構でありつつも、2作とも垣間見える真実を描くドキュメンタリー、否、ドキュメンタリー「調」の映画として優れている。オススメです。

2.AI崩壊

 テレビシリーズ『仮面ライダーゼロワン』が、人間型AIアンドロイド「ヒューマギア」と人間の関わり方という命題を処理しきれずに物語が失速して迷走していった中で、同じようにAIが浸透した社会と人間との関わり方を突きつけてきたこの映画は、科学とファンタジーのバランスも「まあ、エンタメだから目をつぶるか」の範囲内でおさまっており(おさまっていたか?)、肩肘張らずに楽しめるものだった。

 何だかんだと肉体派の主人公が目前の危機をパワーと頓智で切り抜けていき、仲間と市民の支援を得て逆転勝利するストーリーは王道の安心感がある。主演がカッコいいのでそれだけで画がもつ点でもまったく飽きのこない映画、オススメです。

 ところでさきほどテレビシリーズは失速して迷走したと書いたが、『劇場版仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』は、ヒューマギアや高度なAIは人間世界でどうやって共存していけるのかという重いテーマをまるで元から無かったかのように中核から外し『医療用ナノマシンを暴走させられたことで恋人の命を救えなかった研究者が、悪意を持つネット利用者を扇動しアバター型仮面ライダーを使役して市民をデータ化、仮想世界の住民を増やしてその中で恋人を電子的に生かそうとしていた。だがそれを矮小な野望であると喝破した研究者一派の幹部が反旗を翻しただけでなく現実世界でのテロリズムへと走ったので、仮面ライダーゼロワンが、秘書アンドロイドの変身するゼロツーやかつて敵対していたアンドロイド軍団ほか武装警察のライダー達と協力し、テロリストと化した幹部を成敗した。仮想世界を担っていたデータセンターのあるビルが大爆発して大団円』というシンプルな物語へ昇華していた。

 というわけで2020年は、AI崩壊に始まり仮面ライダーゼロワンで終えられた、日本にとって骨太な『AI映画』が揃った稀有な年と言えるのではないだろうか。無理があるか、無理があるな。

3.フォードvsフェラーリ

 映画館で二度観た上に、ブルーレイディスクまで買ってしまった。とにかくクリスチャン・ベールが良い……。ビジネスとアートはとにかく相容れないもんだな、というありきたりの感想で良ければ各シーンに照らしながらいくらでも書いていけるのだが、おそらく本作の影の主役はエンジン音。IMAXで観たときに、なんというか震えた。

 ぼくは車の運転はまったくしないのだが、エンジンの回転数の仕組みがわかったので、この映画を観た後、レースゲームが少しだけ上達した……。具体的にはエンジンブレーキをかけられるようになった。ということで、細かいこと抜きに「いい映画を観た」と感想を持てるので、オススメです。

4.初恋

 三池崇史監督によるアクションドラマ映画。2020年の後半NHK朝ドラの顔となる窪田正孝主演。命のやり取りは時に滑稽。登場人物全てが何かしら極まっている状態で、緊迫が描かれているほどに笑ってしまう。様々なところで語られているが、ベッキーの怪演やそれを引き出す「ここでそうなる?」シチュエーションが秀逸。息をも継がせぬ展開というのはこういうことか、と納得させられる映画になっていて、オススメです。

(ブルーレイがなぜかAmazonに無い。もともと無いのかな)

5.ヲタクに恋は難しい/新解釈 三国志

 どちらも福田雄一監督映画。賀来賢人が出てくる映画ばっかり観てる気がしてきた(AI崩壊も含めて)。

 「ヲタク〜」は、そのオタク描写がステレオタイプで、そんなに恥ずかしい生態ばかりのオタクじゃないだろうという点では違和感があったが、何らかの趣味嗜好をカリカチュアとして誇張するのは同監督の『女子ーズ』も同じなので、そこにヒリついてもしょうがないといえばしょうがない。ミュージカル映画なので、セリフの応酬から歌やダンスが始まってしまうのが苦手な人はいると思う。まあアニメ『劇場版SHIROBAKO』で不意打ちのミュージカル演出に戸惑ってしまったが、実写でミュージカル映画だとわかった上で観るなら大丈夫だろう。

 特筆すべきは賀来賢人の顔芸……なのだが、何よりもその賀来賢人の顔芸が存分に堪能できる声優のライブシーンで、我らが(?)内田真礼ちゃんが本人役で出てくるのが素晴らしい。映画のために書き下ろされた曲を歌うだけなら舞台装置としての役割だが、そうではなくファンなら納得の『ギミー!レボリューション』披露! 誰だこの選曲をしたのは! 神采配じゃないか! 映画館かつ応援上映じゃないにも関わらず「レスキュー!」ってコールしちゃったじゃないか!

 そして年末にかけてプチ炎上してたっぽいのが『新解釈 三国志』。これも賀来賢人の顔芸が楽しくてしょうがないのだが、ところどころで顔を出すジェンダー的なギャグはもう流行らない、むしろドン引きだよねというのが近年。

 おそらく監督としては10年前の「勇者ヨシヒコ」で、生贄の女を護衛しながら悪者へ届ける話で、「誰からどう見てもブスじゃん」とやったやつのセルフパロディでもあるのだろうけれど。同じ渡辺直美をあてているし。あの時は「今どきそういうギャグやる?」というメタ的な面白さもあったけれど、今それをやると「今どきそういうギャグやる?ってツッコミを期待するようなギャグを今どきやる?」となってしまうというか。

 酒宴の余興である漢の裸踊りのシーンでさえも「現代で上長が部下にそれやらせたらパワハラだよね」とそっちばかりが気になってしまうのは、ネットに毒されているからだと思わないでもない。フィクションはフィクションだ。

 以前連続テレビドラマとしてやっていた『新解釈 日本史』の劇場版として考えると、映画としてのスケールも納得なのだけれども、同じ監督の実写版『銀魂』と比較してしまうと、役者の繰り出すアドリブや「間」に身を委ねることができなければ見づらいだろうなぁ、という感じもしなくもない。

 というわけでヲタ恋、賀来賢人の顔芸を味わい尽くしたいなら、オススメです。

6.1917 命をかけた伝令

 この映画を見終わり、帰宅したぼくがしたことはゲーム『スカイリム』でフィールドの端から端まで走破したことです。

 主人公の背面カメラをベースに時折イベント的な俯瞰視点が入り、途中うまく繋いであるが「ワンカットすげぇな!?」と思わせ続ける。主人公が気絶してしまうシーンで、演出とわかっていても「えー、ここでカメラ切っちゃうの?」と違和感を感じたほど。

 伝令というテーマはそれだけで道中の困難がドラマの姿をもって観客に立ち現れるため、物語の筋書き自体はシンプルなものだ。だが目を逸らす暇が無いという点ではテーマと撮影手法が合致していて、生き残るという行為そのものの偉大さを突きつけてくる。私たちはそういう偶然の合間を縫って生きながらえているだけなのだ、と。

 オープンワールドのゲームでただその世界で生きていることだけでも楽しめるという人には尚更オススメです。

(まだ発売前ということなので、動画配信がよい感じです)

7.TENET

 一度観ただけでは理解するのが不可能とまで言われた、クリストファー・ノーラン監督作品。時間を「逆行」しているという状況を映像化してしまったという驚きがある。

 とはいえ、タイムリープ系のSF物語をどうやったら面白くできるかを始終考えているような人(って作家以外にどんだけいるんだとは思うが)にとっては、大筋を捉えるのはそんな難しくないのだけれど、「時間の逆行に実時間をかける」ギミックがこれまでありそうで無かったアイディアで、これがほんとうに白眉。

 逆行中には順行の酸素は吸えないという制限を作り出したことで数多の舞台装置の所以を成り立たせてしまった。時間逆行のアイディアもとんでもないが、おそらくこの逆行中の登場人物を不自由にする設定のほうが映像を「理屈はわからないが面白い」ものにしていると思う。期せずして日本中の人々がマスクを着用して生活をしているわけで「(酸素)マスクをしていると誰だかわかりづらい」というのも現実の延長として感じられたことだろう。

 理詰めで世界が設定されていることは無論楽しいのだけれども、複雑に絡み合っている要素があるからこそ解きほぐせず、そこで人間の業が生まれるストーリーのほうがもっと大好物なので、ラストシーンをもって頭の中で「登場人物の相関図」がスパッと完成したときにこそ感動が押し寄せてくる。この構成に、ただただ敗北感があった。これを作ろうと思って作れる、その作家性に嫉妬するしかない。

 そういうSFで練り上げられた世界の中で、強烈な感情を自覚したい、目の当たりにしたいなら、オススメです。

8.ミッドサマー

 男ってセックスが絡むと基本クズだよね、みたいなことが最初に感想として出てくる。これはデート向き映画ではないなぁ、ということだけは確実に言えるのだけれども、かといって女性と観たく無い映画かというとそうではなくて、なんというかサブカルやオカルトに素養がありつつ、セックスの話とかをあけすけにしても関係性に変化が無いような異性の友達であるなら悪趣味を共有できて楽しいんじゃないですかね、と一緒に観る相手を選ぶ映画。

 何で誰と観にいくかなんてことを書いたかというと、ぼくは学生時代から映画を観にいくのが趣味で、いわゆるサブカル糞野郎だったんですけど、それなりにいろんな女の子と映画を観にいくなんてのはあったんですね。何かの映画について「観たいなぁ」っていうのが会話に出てきたら、週末に行こうかって誘えば一緒に観にいくことができたので、そんなに四半世紀前のおれって陽キャだったっけ? って今となっては思うのだけれども、当時はそんな感じ。『バッファロー'66』(こんどリバイバル上映されるとのこと)とか『アナザー デイ イン パラダイス』とか。タイトルを聞いただけで「あー、わかる」と共感していただきたい、サブカル糞野郎の青春時代を。

 そういう単館上映のアンニュイな映画やらハリウッド謹製の恋愛映画やらを観て浸るんだけど、彼女は別の男のことを考えてて、映画のあとで喫茶店に行ったら彼氏にちゃんと愛されたいとか泣かれたりして、ぼくはこの子とセックスしたいなぁって思ってるのに、そんな顔されたら悔しくて優しさの1ミリも見せたく無くなっちゃうじゃんみたいな、なんかそういう距離感をあの時代とともに思い出してしまう映画がこの『ミッドサマー』なのだよな、と。長いフリだなオイ。

 雰囲気や構成において諸星大二郎の漫画っぽいというのはネットでもよく言われていたことで、ぼくもそう思いながら観ていた。自分たちが住んでいるところと地続きに、怪異とその風習が存在するというのは、ロマンがあるしタブーへの興味を駆り立てる。

 今回の舞台はあきらかにカルトが集団生活してる場所でしかなさそうなのに、登場人物たちが正気よりも若気の至りを勝らせてホイホイ乗り込んでいくあたりも含め、この作品がスリラーの類であることは冒頭からこれでもかと提示されているのに、どういうわけかのめり込んでいってしまう。

 おそらくそれは映像が語ってくるディテールの力なのだろうなとは思う。描かれる祭の装飾をはじめとした景色であったり、シンプルだけれども自然がもつビビッドな色彩だったりが、狂気への憧れみたいなものを観客の内側から引っ張り出して喚起させていく。これがちょっと怖い。この映画の断片が、誰もが持つ漠然とした憧憬へと侵蝕していくように思える。

 そういう精神への侵蝕があった弊害が如実にあって、ミッドサマーを観た後に、乃木坂46白石麻衣の卒業シングル「幸せの保護色」MVを観ると、どうしても映画の数々の光景がフラッシュバックしてきてしまい、「アーッ! アーッ!」と咽び泣いてしまいそうになる。この現象、誰の責任でもなくて、ぼくの思い込み……

 そんなわけで、精神世界を侵蝕されてもよいかた、悪趣味を共有して楽しめる異性の友人がいる方に、オススメです。

9.映像研には手を出すな!/スマホを落としただけなのに2/ぐらんぶる

 乃木坂46ファンなので。コロナ禍で鈴木絢音の出演作だけ上映期間が短めだったので間に合わなかった……。

『映像研〜』は、漫画もアニメもそれほど観ておらず、実写ドラマとこの劇場版のみ履修している感じ。劇場版で一番の疑問点は「浜辺美波の役、必要だったか!?」で、いや、これは実写化作品の女王たる浜辺美波にとっては出なければならない作品だったのだと自分を納得させている。

 齋藤飛鳥、山下美月、梅澤美波のいずれも適役だと思うし、アイドル映画かつ漫画原作ということで馬鹿にしてしまいがちな人は、その先入観を崩してよいんじゃないかなぁと。

『スマホ2』は、ほんとうによい「続編」で、こんなに文脈の乗った続編あるのかよ、と。まず「スマホを落としただけなのに」もかかわらず発生することがもうスマホ落とさなくてもヤバない? ってレベルなので、グイグイ引き込まれる。前作で千葉雄大が全部持ってったって感想を抱いたけれど、今作は成田凌ですね。

 稀代のアイドル白石麻衣の熱演も凄くて、白石麻衣の卒業告知があった後なもんだから、こりゃグループアイドルを卒業して独り立ちしてもやっていけるわ……という頼もしさを感じさせた。

『ぐらんぶる』は、仮面ライダーはじめ特撮俳優たちが全裸になるという掴みだけである意味スーパーヒーロー大戦でしたね……。

 与田祐希の野生児っぷりをもっと観たかった感じはするが、ダイビングはかつて乃木坂の番組で訓練されていたので、そういう安心感はあった。アイドルはなんでもやるし、スタントマンなしでも正しく潜れる、素晴らしい。

 アイドル映画あるいはアイドルの出演映画がが酷評されがちな背景には、20年前の『ピンチランナー』(モーニング娘。主演)があると思うのだけれども、もうあれから20年ですよ。もちろん、世の中には色モノなアイドル映画はいくつもあるのだろうし、クオリティは千差万別だろうけれども、少なくとも最近は「当たり」が多い。むしろちゃんとした映画しか話題にならなくて、話題になるような映画にはそれに見合う演技力のアイドルが起用されている、という至極当然のことだけなのかもしれない。

 というわけで、最新のアイドル映画、アイドル出演映画に触れてみたいという人にオススメです。

10.ビルとテッドの時空旅行

 この憂いに満ちた2020年を、コメディー映画で終えることができて良かった! キアヌ・リーブスは今でこそ当たり役の『ジョン・ウィック』で語られることが多いわけだけれども、いい感じに「中年になったあの頃の若者」を演じている。時空旅行とタイトルに冠するだけあって、時代を超えて集う面々がメチャクチャ楽しくてある意味アベンジャーズ。

 ぼくは学生時代にある理由から『ウェインズワールド』のビデオテープを何度も何度も何度も何日も渡ってリピートして観ていたことがあり、細かいことはどうでもいい系のノリとパワーで全てを解決する映画には弱い。ということで、鬱屈した年末年始を過ごしたくない人にオススメです。

番外編:エクストリーム・ジョブ

 配信作品。韓国映画といえば『パラサイト』がとにもかくにも映画界を席巻し、『82年生まれ、キム・ジヨン』も色々と考えさせる2020年だったけれど、この『エクストリーム・ジョブ』も面白くてしょうがなかった。「脱サラしてチキン屋をやる」という韓国社会の文脈については、かなり前から半ばドメスティックなギャグ的に聞かされていたので、労働従事世代の幅が狭いという社会問題であってそれは深刻なのだけれども、そういう中でエネルギッシュなフィクションをぶち当てていくというのは、重要なことだなと思う。パラサイトにとどまらず、もっと韓国映画を観てみたいという人にオススメ。

番外編:ザ・ボーイズ(シーズン2)

 毎年1シーズンずつ公開なのはもったいない、というほど次回作を渇望してしまう連続ドラマ。アベンジャーズはじめいわゆる「アメコミヒーロー」へのアンチテーゼを含んだドラマなのだけれども、全編通じてエログロナンセンス。シーズン2に至っては、人種やジェンダーやとにかく中途半端に触ってはいけない問題に下世話に触りまくってその本質を露出させるような内容で、まかり間違っても「この作品が好き」と言おうものなら、誤解を受けかねない。

 とはいえ、人間はそもそも野生でどうしようもなくて、それを社会とするのに法律はじめとしたルールが必要で、そこをヒーローたる力を得てしまった人々が遵法意識と「正常とされる」倫理観の内側だけで生きていけるかというと、そうではないよねという。

 エログロナンセンスに耐性があって、かつ、法や倫理とはどういうものだったかを考えてしまう人に、オススメです。

おわりに

 コロナ禍でおちおち繁華街や人の多い場所に行ってられない状況ではありましたが、席が一つおきになったり、換気をよくされたり、その他、新しい観劇様式みたいなものが、仕方なくではあるんですがコンセンサスができてきて、今後映画館が建て替わるときとかは、どういう形態に設計されるのか興味があります。元の通りつくって、運用でカバー、というのが当分の落とし所ではあるのだろうけれど。

 映画の撮影に関しても諸々の制限が生まれていることは容易に想像でき、これは作家が作品中の世界をどのように構成するかにもよるんだけれども、登場する人物がマスクをしていてソーシャルディスタンスを徹底されて、というところで織りなすドラマというのは、どうしてもまだそういう世界であることを、リアルがそうであるにも関わらず、脳が拒否してしまっていると感じます。

 そういう「コロナの影響」をきちんと踏襲した映像作品が出来上がってきても、マスクやらアクリル板やら店に入るときに必ず消毒液をシュッシュッとやる仕草やらが映像上のノイズになって、集中できない気もするのです。

 2021年の映画、映像作品、どうなっていくのだろうな……。

 ……え? 『ウルトラマンZ』も映像作品として紹介しないのかって? そんなの、別記事に独立させるに決まってるじゃあありませんか……

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