【シネマで社会勉強】No.19~奇妙な偶然? ラリー映画2連チャン②~「僕と彼女とラリーと」




【1】
 2022年に入りました。年をまたいでしまいましたが前回の続き、奇妙な偶然の後編です。

 スカパーから録画したラリー映画「OVER DRIVE」を見た次の日、何か面白い映画でもやってないかなーとネットで探していたら、「僕と彼女とラリーと」という作品が公開中という情報が。

 ラリーの映画って、ゆうべ見たばかりじゃん……。

 まるでこの映画を見るために昨夜の「OVER DRIVE」でラリーについて予習した感じです。

 世の中には不思議なタイミングもあるものだなーと思いつつ、これは観るしかない!と近所のシネコンへ向かいました。

【2】
 「僕と彼女とラリーと」……浜省の曲か片岡義男の小説みたいなタイトルのこの作品、監督は塚本連平、森崎ウィン、深川麻衣らが主演をつとめラリーに賭ける若者たちを描いています。

 物語は、東京で俳優業を続けながらもいまひとつパッとしない主人公が、故郷に戻って家業の自動車整備工場に携わり、ラリーの魅力に目覚めていくというもの。

 幼馴染じみとのロマンスや仲間たちとの友情、家族内の対立など青春ストーリーの要素も盛り込んだところは「OVER DRIVE」にも通じます。若い層のクルマ離れが叫ばれていますが、まだまだ青春映画にクルマは欠かせないようですね。

【3】
 愛知県豊田市周辺がメインの舞台となる「僕と彼女とラリーと」は、地元の風景や風物を生かした「地域発映画」でもあります。

 最近、映画づくりを利用して地域をPRしようという動きが活発です。その土地の生の表情をとらえ、暮らしぶりを伝える地域発映画が自分はけっこう大好物でよく観ています。この作品に関心をもったのにはそんな理由もありました。

 豊田市といえばトヨタ自動車のお膝元。まちをPRする映画のテーマがラリーとなるのも必然かもしれませんね。

 自分は豊田という町にはそれほど縁がないのですが、いったいこの映画でどんなふうに描かれているのか興味津々で観始めました。

【4】
 主人公の実家の小さな自動車整備工場があるのはわりとひなびた感じの山あいです。けれどデートしたりレストランで食事するのはオシャレな都会だったりして、けっこうギャップが激しいなーという感じがありました。豊田ってそういう感じの町なのでしょうか。

ざっと映画を観た印象では、それほど地元名物のPRを前面に押し出している感じはありません。

 観光PRに力を入れすぎで、ストーリーと関係なしに名物店とか名物料理とかがやたら出てくる作品は観ていて冷めるときがあります。テレビの2時間サスペンスなどでホテルの看板が大映しになったりするとドン引きしますが(笑)。

それと較べるとこの映画はほどほどで、逆にもう少し地域の特色を出してもいいんじゃね?という印象でした。

【5】
 映画の後半、主人公たちは地元で行われる「ラリージャパン」という世界ラリー選手権出場に向けて挑戦します。

 これは実際に存在するイベントで、2020年、2021年にも愛知・岐阜での開催が決定していましたがコロナのために2年連続で中止となってしまいました。

 「僕と彼女とラリーと」もこのイベントが重要な要素となっているのでこれは痛恨だったでしょう。実際のラリーの現場を背景にたっぷりとカメラをまわすことも当初の構想にはあったのかもしれません。

 クライマックスにはラリーの場面もありますが、やや尻すぼみ感が匂ってしまうのもそんな事情があるでしょうか。

【6】
 本筋とはあまり関係ないかもですが、東京で売れない俳優をしている主人公は完全に役者をやめて東京から地元に帰ってきたというわけでもないようです。

 東京のマンションの部屋は役者仲間に貸し、地元にいるあいだも所属プロダクションから大きな仕事の話が舞い込んできます。役者の仕事はけしてうまくいっていないものの、スッパリ足を洗って故郷で第二の人生をやり直すという感じでもありません。

 従来この手の映画は都会で夢破れた若者が生まれた土地に戻って再出発するというのがお決まりのパターンでした。主人公も都会での挫折を引きずり、屈折を抱えていたものです。

 東京での暮らしをキープしつつ地元でも活動するという主人公のスタンスにはとても今風なものを感じます。東京か地元か究極の選択をしなければならないのはもう過去の話なのだというメッセージが作品から感じられます。

 コロナの影響もあってネットを使ったリモートワークやリモート授業が行きわたり、地方に移住する人々も増え、自分の好きな場所にいながら好きな仕事ができるようになりました。現実的には難しいかもしれませんが理屈としてはそういうライフスタイルが可能な時代になったのです。

 これからもますます地元の魅力を伝える「地域映画」が全国各地から登場することを願っています。

(2022/01/13)

written by 塩こーじ

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