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『カメラを止めるな!』について書くのを止めるな! -sio.note-

テーマ▶映画

 『カメラを止めるな!』の感想です。当然ネタばらしまくりです。

 やっとこの映画について語ることができて嬉しいかぎりです。#カメラを止めるな!以外から来た方は閲覧ご注意ください。

 『カメラを止めるな!』――まずタイトルが秀逸ですね。内容をそのものズバリ、シンプルに一言で言い表わしてます。
 何があっても撮り続けるぞ! みたいな映画人魂も伝わってきますし、主人公たちがカメラを止めなければならないようなトラブルに見舞われることも予感させ、内容をほとんど知らずに劇場に足を運ぶひとたち(この映画はとくにネタバレにシビアなので)の期待感を盛り上げます。タイトルだけでこの映画、半分ぐらい成功してるんじゃないでしょうか。

 つづいて2番目の成功ポイントは「ロケーション」ですね。
 前半に登場する廃墟のすばらしさ、まったくよくこんな場所を見つけてきたもんだと感心しました。まあ僕があまりホラー系見ないので免疫が低いのかもしれませんが。
 あの廃墟(揚水機場でしょうか)の構造って、ワンカットの長まわしにぴったりな気もします。
 上の階と下の階が吹き抜け? で、階段をのぼったりおりたりのアクションにも適してるし、上と下で別々に進行してる状況も手に取るように把握できます。

 そして第3の成功ポイントは「ボルテージの高さ」。
 役者陣の演技はもちろん、前半およそ40分の長まわしをハイテンションで下支えしつつの全力疾走感。そのパワーにグイグイ引っ張っていかれます。ポスターからも映画のボルテージが伝わってきますね。

 さて、多くの人が絶賛する「斬新な形式と見事な伏線」ですね。

 これはもう僕ごときがゴタクを並べなくても誰もが認めるところなので、省略させていただきます。
 この形式って、映画のDVDにボーナスでメイキング映像がついてますよね。あれを本編のあとにそのままくっつけたようなもので、もしかしたら同じことを考えつく人は意外といるかもしれません。
 ま、この映画の場合、伏線とその回収が一番のキモなので、もう必然的にこの形をとるしかなかったんでしょうが。
 逆にいえば、これだけ巧みに伏線が張られていなければ、わざわざこの形式にする必要もなかったんじゃないかってくらいで。
 省略するといいつつ、ずいぶん語ってしまいました。

 まさか『カメ止め』がただゾンビが襲ってくるだけのドタバタ映画だと思ってる人はいないでしょうが……。
 (いや、逆に未見の人たちには「たんなるゾンビ映画」と思わせて劇場へ向かわせたほうが効果的かもしれませんが)
 個人的にこの映画の一番魅力に感じるところは「映画にとりつかれた人々の情熱」でしょうか。
 後半、伏線を回収していく過程で、作品づくりの理想と現実、芸術とビジネスのぶつかりあい、そのはざまで葛藤する映画人の思いが浮かび上がってきます。
 生活のために(それ以外の理由も含め)ムチャぶりな仕事を引き受ける監督、引退したものの芝居への思いが消え残る元女優の妻、父と同じ世界を目指しながらも業界の現実を知って幻滅する娘など主要な人物をはじめ、ひと癖もふた癖もある役者連中、プロデューサーやスタッフたちが、よいものを生み出すために悩み、迷い、格闘し、一喜一憂する姿が『カメ止め』の隠し味的なもう一つの魅力です。
 いや、ほんとうに描きたいテーマだったのかもしれません。

 まあ、これは自分が若い時にちょっとテレビや映画の裏方をやったり、自主映画や小劇団にかかわったことがあったので感情移入してしまったのかもしれません。撮影現場のシーンを見てついあの頃を思い出してしまいました。
 『カメ止め』全編をとおして流れる、もの創りに携わる人々への愛情、リスペクト、優しいまなざしは、映画にかぎらず、演劇、小説、音楽など、すべての作り手の胸に響くのではないでしょうか。

 低予算で、短い尺でこれだけ面白い映画ができたことにも大拍手です。
 なお、原作・原案問題がまだ解決をみていませんが、今回はあくまで映画『カメ止め』に話を限定しました。
 どこまでが芝居のアイデア&ネタなのか、舞台未見につき比較のしようがないので、「映画に出てきたアイデアは映画のアイデア」というやや乱暴なスタンスで書きました。
 映画であろうが舞台であろうが、僕がもとめるものは上質のエンタメという一点だけですので。映画の人気を借りて芝居も再演すればさらに楽しいのではとも思います。円満な解決を願っています。

#映画 #カメラを止めるな

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