【シネマで社会勉強】No.12~上映後も熱いトークセッション! 福岡発地域映画『翔べない鳥も空を見る。』
【福岡発の地域映画を無料上映】
7月27日、埼玉県吉川市の市民交流センター「おあしす」にて九州・福岡発の地域映画『翔べない鳥も空を見る。』の上映会が多くの観客を集め行われました。
「SNSが当たり前な若者、当たり前じゃなかった大人たちに贈る」と題されたこの映画はアジアフォーカス・福岡国際映画祭2018の招待作品にもなりました。監督と脚本を手がけたのは1988年生まれの若手、小田憲和監督です。
最近はインターネットにまつわる事件やトラブルがたびたび報じられていますが、本作品は孫娘とのコミュニケーションのためにツィッターを始めた老人と女子高生の心の交流を描いています。
女子高生愛美(まなみ)がひょんなことから76歳の老人北山和夫と知り合うところから物語は始まります。
和夫の孫娘栞里(しおり)は自分の部屋にもう3カ月間も引きこもっており、和夫は愛美のアドバイスに従いながらツィッター上で孫娘と交流をはかろうとするのですが……。
十代のいじめやスクールカーストなど現代の社会が抱える問題を正面からとりあげたこの作品、女子高生が老人にSNSやインターネット用語を説明するという形でふだんネットになじみが薄い人が観ても理解しやすいよう工夫されています。栞里の部屋の中など、光と影のコントラストのきいた映像も印象的でした。
【交流会でもネット社会について討論】
上映のあと、小田監督(写真奥)と主演の老人北山和夫役の中尾新吾さん(写真手前)を囲んで交流会が行われました。
「年長世代が若者世代を理解できないまま思考停止してしまうことに疑問を感じたのが作品のヒントだった」と小田監督。「いまの若い人はスマホばかり。僕らが小さいころは上の世代から昔の遊びを教えてもらった。逆に現代のツールを年上の人に教えるべきではないだろうかと考え、今回の設定が生まれた。あらゆる人たちが世代を越えて向き合っていければ」と作品づくりの動機を語りました。
交流会の参加者からも「心にじわりとくる。人と人とのつながりや主演の中尾さんの演技力に感動した」という感想や、インターネットやスマホを子どもにどう使わせたらいいかといった真剣な質問も寄せられました。
ネットとのつきあい方について小田監督は「ネガティブな情報にふれたときはスルースキルも大切。9割が肯定的でも、マイナスの意見が1割あればそれがすべてのように受け取られてしまいがちです」と、ネットやスマホの利用に慎重な参加者の方たちひとりひとりの問いに真摯に言葉を選びアドバイスしていました。
「撮影の時期は冬だったのでとにかく寒かったです」と苦労話も披露。「ビルの屋上シーンは風が強く雪も降っていました。気温は0度ぐらいだったのでは」とのこと。フィルムには映らない苦労もあるようです。
【80歳でツィッター開設!】
北山和夫を演じた中尾新吾さんは佐賀県在住。同郷にはお笑い芸人で映画『翔んで埼玉』のテーマ曲「埼玉県のうた」を歌うはなわさんもいます。そんな縁が今回埼玉県吉川市での上映につながったのかもしれません。
中尾さんは「同じ年の孫がいるので私生活とオーバーラップするのを感じながら演じました。できあがった作品を観ていると泣きそうになります」とコメント。
映画の中では中尾さんが走る姿をえんえんと撮り続ける長回しのシーンもあり、参加者からはとても年齢を感じさせないという驚きの声も。10年ほど前までソフトボールをしていたので体を動かすのは苦にならなかったそうです。
さらに映画出演をきっかけに80歳でツィッターも開設(アカウント名は映画の役名そのままの北山和夫)。「私の年代で新しいことに手を出すのは恥ずかしさがあるが、若い人の気持ちがわかり勉強になりました」と話す中尾さん。そのチャレンジ精神に脱帽!です。
【クラウドファンディングで映画づくり】
小田監督は大学4年のとき、大道芸をテーマにした映画を卒業制作したことがきっかけで映画の魅力にとりつかれた。「大道芸の魅力を多くの人に知ってもらいたくて作品をつくりましたが、いろんな出会いがあって、やりがいを感じました」
今回の『翔べない』はインターネット上のクラウドファンディングで300万近い製作資金が集まったそうです。ネットは批判されがちですがこんな利点もあるのです。
【まとめ】
「観客のみなさんと交流したい」という監督からの申し出で、今回実現した作品上映後の交流会。小田監督や出演者の温かさにふれたひとときでした。
地域発の映画というと、地元の素晴らしいところのPRで終わってしまう作品も多いのですが、『翔べない鳥も空を見る。』は地元福岡のカラーをそれほど出さず、全国どこでも通用する普遍的な題材を取り上げ、誰が観ても自分の問題として考えさせられる作品になっています。
商業作品とちがってこれら地域発の映画はなかなか目にする機会がなく、かえって貴重といえるかもしれません。一見地味でも優れた内容の作品が多いので、地元の公民館などで開かれる上映会をこまめにチェックしてみてはいかがでしょうか。
(2019/09/08)
written by 塩こーじ
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