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鍼灸小説「道案内のシンシン」〜その27: ギックリ腰③

翌日、僕は再び高井さんの家に往診に向かった。

インターホンを押すと

小さな女の子が玄関を開けて出てきた。

「ママはね、イタイイタイでねんねしてるのぉ」

「そっか、ママの代わりに出てきてくれたんだ。お利口さんだね〜。お名前は何ていうの?」

「高井園子です!、3歳です!」

園子ちゃんはハキハキと答えた。

「先生すみませ〜ん。どうぞ入ってくださ〜い」

と奥から高井さんの声が聞こえた。

「お邪魔しまーす。腰の痛みどうですか?」

「まだ動くのは少し痛いけど、昨日より大分ましです。それに久しぶりに沢山寝れて頭がスッキリしています。」

「良かった。今日の治療でもう少し動けるようになりますからね!」

「お願いします」

僕は痛みの部位を確認した。昨日は腰全体がカチカチになって、どこを押しても痛がっていたが左側の筋肉は柔らかくなり、痛がるのは右側の腰骨付近のみとなっていた。

「ちゃんと言いつけを守って安静にしててくれたんですね」

「あ、わかります?ちゃんと守りましたよ!久々に布団でゴロゴロできて、はぁ〜幸せぇ〜なんて感じた1日でした。それに、いつもは全然寝なくてワガママばっかり言う園子が珍しく素直で・・・」

一方、園子ちゃんは不思議そうに鍼の道具を見ていた。

そしてゆっくりと道具箱に手を伸ばそうとしている。

「園子触っちゃダメよ!」

と高井さんの声で慌てて手を引っ込めた。

僕は道具箱から子供用の指さない鍼

『ローラー鍼』を取り出し園子ちゃんに手渡した。


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園子ちゃんはローラー鍼を受け取ると嬉しそうに顔をコロコロと刺激し始めた。

「あははは!園子それ、美顔ローラーじゃないよ!いててて、笑うと腰に響くぅ〜」と高井さんは笑いながら腰をさすった。

「三歳にして既に美への意識が高いんですね!将来有望だ!」

と僕は笑いながら鍼の準備をした。

前回同様に貧血の鍼と腰の緊張している筋肉に鍼とお灸をした。

座ってもらい動きを確認すると

「こっち(左)に体を倒すと、まだ腰が痛いです」と高井さん。

腰の動きを確認すると、左に倒そうとするとき右腰がギュっと緊張していた。

ぼくは左足の『交信』というツボに鍼を刺し、高井さんに再度左に倒す動きをしてもらった。

「あれ!痛くない!何これ不思議~、左足と右腰が繋がっているんですか?」

「この左足の『交信』っていうツボは脾臓に効くんです。脾臓は体の左側にあって、腫れてくると圧迫されるのを嫌がるんです。脾臓を圧迫させないために右腰が体を支えようとして緊張するから痛いんですよ」

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貧血の状態で無理に体を動かしていると脾臓は緊急用の血液を絞り出す。ご飯を食べてすぐに走ると左の脇腹が痛くなるのは脾臓が働いている証拠だ。

頻繁に脾臓が働くと、腫れてきてしまい体の動きを制限してしまうのだ。

「へぇ~何かよくわかんないけど、すごぉい、楽~」

高井さんは嬉しそうに身体を倒したり捻ったりした。

「これで今日一日ゆっくり過ごせば日常生活くらいなら大丈夫になると思います。ただし重い物持っとか、運動はNGですよ!」

「わっかりました!」

と高井さんは啓礼の仕草を見せた。

「園子ちゃんも、抱っこは我慢できるかな?」

「わっかりました!」

と園子ちゃんもお母さんのマネをして啓礼をした。

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つづく


シンシン 「サポートが加われば鬼に金棒 拙者に丸ごとバナナでござるよ!」 比呂  (そこは愛刀とうがらしじゃないんだ…)