タマガワに言えない一生の隠し事

「タマガワどうしてるかなぁ?」ふとこんなことを思ったのは、最近始めたFacebookのせいだろう。知り合いかも?と表示されるメンバーの中にタマガワがいた。もうかれこれ4年は更新されていない。


タマガワには言いたいけど言えない隠し事がある。それはいつかは言ったほうがいいと思うし、もう言わないほうがいいとも思う。そんな隠し事を一人で抱えているのも苦しいので、このnoteに記しておこうと思う。(これを読んだらもうみんなも共犯者だよ)



タマガワとは妙な腐れ縁がある。地元が一緒で小学校3年生と4年生のときに同じクラスになった。その頃はときどき遊ぶくらいの関係だったかな。特別仲がよいわけでもなく悪いわけでもない。


覚えている印象はとにかく平泳ぎがうまいということだった。息継ぎで顔を出した後に顔を水に入れるスピードが早くて、あんなに勢いをつけて息継ぎをしてる奴は後にも先にもタマガワ以外見たことがない。


地元が一緒だから当然中学校も同じだろうと思っていたのだが、タマガワはいなかった。気づいたのも入学してから大分経った頃だ。私立の附属中学に入学していたのだ。まぁ、その程度の関係だったんだよね。


そして、僕も高校生になる。そこでまた出会うのがタマガワだ。僕の中学校からは僕を含めて3人がとある付属高校に入学したんだけど、その高校にいたのがお察しの通りタマガワだ。そして、1-Dで同じクラスになる。


お互い気づいていたんだけど、タマガワは附属中学校というアドバンテージを使ってやんちゃ系な友達グループの中にいた。顔もニキビだらけで背も高い。どうやらバスケ部に入っているらしい。


僕はというとちょっと緊張して、違う真面目そうなグループにいた。同じクラスで同じ地元に帰るのにあまり話さない関係だった。きっとどこかで「小学校同じタマガワだよね?」って話はしたんだろうけど、今となっては思い出せない。



同じ小学校、同じ高校なのに話すようになったのは不思議なことに大学生になってからだ。共通の友達がいて一緒に遊ぶようになる。大学なんか全然違うとこ行ってるのにね。


よくよく話してみるとビックリした。全然面白いこと言わないんだよ。いや普通に明るく会話はするし、リアクションは大きいんだけど内容が全然面白くない。相手を笑わせようって気がないんだろうな。ウィット感は全く感じない。


高校生の当時はやんちゃ系なグループにいたから大人っぽく見えていたけど、実際は全然そんなことなかった。真面目にしっとり過ごしていた僕の高校時代の感情を返してほしいくらいだ。


共通してよく遊んだのはドライブと麻雀。お互い免許を取ったばかりの頃はとにかくドライブがしたかったんだね。地元が近いからどっちかの自家用車で共通の友達の家までドライブしたりした。


麻雀は4人集まれば楽しいから、お互いの知人でやるときにメンツが足りないと呼んだり呼ばれたり。深夜は暇だから麻雀もよくやったな。麻雀は自信あるけどタマガワも結構強かった。相変わらず打ちながら全然面白いことは言わないんだけど。



そんなこんなしていたころ、共通の友達と流行っていたのが心霊スポット巡りだった。廃墟や廃病院に行くという企画ね。そして、心霊スポット巡りをしてたらあるドッキリ企画が思いついたんだ。リアクションの大きいタマガワをはめる企画だ。


タマガワを連れて心霊スポットに行く。そこで同じ時間に一斉に電話が鳴るという古典的なドッキリを仕掛けようと。タマガワを入れて男4人、タマガワ以外の3人が仕掛け人だ。


仕掛けは簡単で携帯の時計を0時に変えて非通知で電話をかける。すると0時の非通知着信ができあがる。そして、みんな0時に着信音と同じ音のアラームをかけておく。一人は0時にタマガワに非通知で電話をポケットの中からかける。これで全員同じ時間に非通知着信があった状態を作れるのだ。


場所は地元の古井戸がある森の中。近くには廃病院があって、みんなあそこには行っちゃいけないと曰くのある場所だ。そこにタマガワも連れて古井戸の付近に行ってみる。


携帯の明かりを頼りに森の中を歩く。深夜で森の中で古井戸なんて怖い要素しかないはずなのに、僕らはワクワクしていた。結構面白いドッキリが思いついたつもりだったから。生ぬるい風も吹く。絶好の心霊日和の夜だ。


古井戸の付近についた。ちょうど映画「リング」も流行っていたころだろう。井戸なんて怖いものの代名詞だ。みんなで恐る恐る古井戸に近づく。0時の音が近づく。タマガワの心拍数も上がっていく。



「プルルルルルルー」

「リリリリリリリー」

「トゥルルルルー」


何一つ音のないはずの森の中で電子音が一斉に鳴る。

「わぁあああああああーーっ!!」

みんなで大きな声を上げて走り出す。


みんなが見ているのはタマガワだ。

タマガワはホントにびっくりした顔で走っている。

バスケ部だから足も速い。

 

ふと、走りながら白い塊を口から吐き捨てた。

タマガワのゲ〇らしい。

人が極まるとそんな身体的作用があるとは思わなかった。

 

一番先を駆けていくタマガワの後ろで心の中では大笑いしながら、いや、僕ら三人は実際に大笑いしながら追いかけた。大成功だ。その後みんなで非通知の着信画面を見せ合う。証拠の照らし合わせだ。


もちろんみんな0時に非通知着信がある。心霊現象を信じていない人も信じてしまうかもしれない。実際に自分の身に起こったことだから。タマガワもその1人になる。僕らもその場で種明かしはしなかったから。もうちょっと楽しみたかったから。

 


タマガワにはもう一つくだらない小さいドッキリをした。これはもう完全なその場の思い付きだ。同じメンバーで深夜の公園でくっちゃべってたときのこと。遠くでトランペットを練習している人がいた。


「誰かトランペット練習してるね」タマガワが言った。誰だったかな?僕かもしれないけど「そんな人いないよ」と言い出した。勘のいいみんなは察するかな。明らかにトランペットの音はしているのに、そんな人はいないとみんなで言い出した。


「嘘だよ。めっちゃ音聞こえるじゃん。あそこにトランペット吹いている人いるし」タマガワが必死で言うのを、みんながキョトンする。「お前マジで大丈夫か?」って。そんな無茶ありえないんだよ。普通にトランペット吹いてるんだから。


でも、古井戸の件があってからタマガワは「俺にしか見えないのかもしれない」という考えにたどり着く。トランペッターを僕らは素通りした。タマガワももうトランペッターのほうは見ないようにしていた。



その後もちょくちょくタマガワとは遊んでいた。合コンで同じ女の子を狙って、タマガワにうまくやられたこともあったし、今の僕の奥さんもタマガワが開いた飲み会がきっかけで出会うことになる。こんなとこに腐れ縁があったりする。タマガワが働いていたバイト先の仲間の仲間が今の僕の奥さんだ。


ただ、社会人になって一気に疎遠になる。お互い仕事が忙しくなるし、僕は奥さんと結婚し家庭もできた。タマガワはTV業界で働きだして朝も夜もないような生活を送っていたらしい。風の噂でその仕事も辞めたということを聞いた。それ以降の彼のことはよく知らない。


話はいよいよクライマックスだ。数年前、奥さんがタマガワの共通の友達と遊ぶ機会があった。そういえばタマガワ繋がりで奥さんとは会っているから、共通の友達もいるよね。そこでタマガワの話題になったらしい。



共通の友達によると、タマガワは「自分には霊能力がある」と周りに吹聴しているとのことだ。


タマガワごめん。

それはきっと違う。


タマガワがこのnoteを見ないことを願う。

そして、誰か「自分には霊能力がある」というタマガワをみかけても、そっとしておいてほしい。

心からの願いです。

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