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電車と息子と僕のコラボは3回だからこそ。

回数が少ないからこそ連想ゲームは鮮明に起こる。数が多くなればなるほど記憶は曖昧になる。そんな話をしようと思う。


僕ら家族は4人家族+柴犬。僕・奥さん・息子(小6)・娘(小3)の構成だ。4人+1匹は仲良しだから行動を共にすることが多い。特に家族4人は土日の休みを含め一緒に行動することが多い。

僕と息子、僕と娘っていう組み合わせは意外と少ないんだよね。僕と息子・娘のほうがあるくらいで、2人だけって組み合わせはすごく少ない。

 

それに加えて家族での移動はほとんど車だ。子供の荷物が多いのは家族持ちの人には分かるよね。奥さんは少し心配症・・いや、先見性があるので準備には念を入れる。

もしかしたら雨が降るかもしれないし、雪が降るかもしれない。汗をかくかもしれないし、水びだしになるかもしれない。そんなわけないだろ!と思うかもしれないが、育児において絶対はない。実際に海で水浸しになって「ほらね」といわれたことがある。

この心配性・・いや、先見性は僕が楽観的過ぎるせいもあるかもしれない。フジロックに手ぶらで電車でいったら、大雨が降って酷い目に合った。あれだけは一生責められても仕方ない。ずぶ濡れで着替えがなくて寒い思いは二度としたくないから、着替えは何着あっても足りなくない。

 

話を戻すと、とにかく僕たち家族が出かけるときには4人が多いし、車移動が多いということだ。みんな一緒に行動していることが多い。だからこそ、僕と息子、僕と娘という組み合わせ。そして車移動ではないシチュエーションというのは非常に少ないわけだ。


今から2年前、奥さんの弟(僕にとっての義弟)が結婚した。僕が言うのもなんだけど、とてもいいやつで子どもたちにもやさしい男だ。自分の結婚式だというのに結婚式のあとシティホテルへの宿泊を招待してくれた。僕ら家族4人と義母・義父を。移動は当然車だよ。4人分の着替えは正装も含めたら半端ない。

横浜駅近くのシティホテル。僕なんかは田舎好きだから、シティホテルみたいなホテルは泊まろうなんて選択肢もないからとても新鮮だった。雨が降っていたし、結婚式でみんな疲れていたので夜景をあまり見ることができなかったけど、僕だけは浮足立っていた。

天気予報をみると翌朝は天気がいいことが分かった。せっかく横浜駅のシティホテルにいるのにただ寝て起きて出ていくのってもったいない。「早朝に起きて散歩をしよう」と提案した。だけど、こんなときに賛成するのは息子くらいだ。奥さんも娘も疲れていたしね。

 

早朝5時半。目覚ましの音が鳴る。僕はみんなを起こさないように起きだして息子を起こす。意外と寝起きが強いのですんなり起きた。いつも通り寝ぐせが最高だ。

「静かな横浜を歩ける機会なんてこんな時くらいだろうに、みんな寝てるのはもったいないよな」

「そうだよね」

なんて言いながら歩きだす。

どうしても歩いて海まで行きたかった。地図で調べると臨港パークまで2~3キロというところで歩けなくもない。当時小4の息子の足でもちょうどよい距離だろう。

途中のコンビニでおにぎりとオレンジジュースを買って、食べながら海を目指す。途中の道のりは思っていたより横浜感がなくて殺風景だったけど、息子と2人で歩く横浜は新鮮だった。

臨港パークに着くとさすがに横浜感が漂う。しっかりと晴れていて犬の散歩をする人やジョギングする人の姿も増えてきた。三日月みたいな形をしたビルをバックに写真を何枚も撮る。これが横浜だよって顔して立っているビルだ。(ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルっていうんだって)


そんなこんなで1時間半くらい散歩しただろうか。さすがに同じ道を帰るのは結構しんどい。というより同じ道を通るのが嫌いでなぜか遠回りしてでも違う道を通りたいというめんどくさい性格を僕はしている。

「みなとみらい駅」が近いことは地図で調べたらすぐに分かった。電車で横浜駅に帰ろうと息子と2人で駅に向かう。みなとみらい駅は地下鉄の駅。


ここでふと思う。


電車と息子と僕って取り合わせは異常に少ないなと。


シチュエーションで思い出すことってあるよね。この電車と息子と僕のシチュエーションってどんなことあったっけ?って考えたんだ。


一番最初に思い出したのは当時から4年くらいさかのぼる。息子もまだ小1くらいだろうか。中古車を買って引き取りに行く時だ。中古車販売で働いていた僕の弟のいる春日部まで東京から電車で向かった。電車で一人で行くのも寂しかったから息子を道ずれにしたんだった。

奥さんと娘はお留守番。電車で行くのは大変だもんね。男2人だったら荷物も少なくて済む。暑い日だったから、「帽子をかぶれ」っていわれたけど、すぐに帽子を脱いでたな。まぁ、汗かくくらいが、日焼けするくらいが子どもはちょうどいいんだよ。

歩いて駅まで行って電車に乗り込む。息子と電車のホームに来たのは初めてだな。乗り込むときの段差が危ないから手をつないで乗り込む。

1時間半の電車移動は2人にとって新鮮でちょっとした冒険だった。息子もそれまでちゃんと電車に乗ったこともなかっただろう。車窓から外を眺める息子を僕が眺めていたことを覚えている。

あんまりよくないかもしれないけど、靴を脱いで後ろ向いてさ。

息子にとってもお父さんと2人で電車に乗ることは新鮮だったようで、今でもしっかり覚えているようだ。


そして、もう1つ電車と息子と僕のシチュエーションがある。これは息子は覚えていないことだろう。まだ2歳とか3歳くらいだったかな。言葉が出てくるのが比較的遅い息子で、ちゃんとした単語がなかなか出てこなかった。

それでもプラレールや電車の絵本が好きで、「ガンカンッ」と電車のことを呼ぶのだ。なんで「ガンカンッ」なのかな。踏切の音だろうか。ルーツが思い出せないのは残念だけど、【電車=ガンカンッ】は唯一言える固有名詞の1つだった。

電車が好きということは分かっていたから、僕と息子の2人で近所の踏切まで行って電車を眺めたことがあった。娘が小さかったからだろう。奥さんはお留守番だ。

一緒に歩いたときに手をつないだ感触を思い出す。小さな手で僕の人差し指をしっかり握っている。

電車が通過するたびに指を指す。

「ガンカンッ」

僕の人差し指はもう片方の手で握られたままだ。何台も通過する電車を飽きもせず眺めていたんだよ。

 


そんな2つの思い出を思い出しながら、みなとみらい駅に電車が入ってくる。電車の乗客はほとんどいない。電車に乗り込むときに息子が自然と手をつないできた。

小4の手はもちろん大きい。人差し指に残る小さな感覚を思い出しながら、大きくなってきた手を握り返す。

車窓からは殺風景な灰色の壁しか見えない。だけど、僕が見ていたのは息子の顔だった。

「どうしたの?」って顔してたけど、「何でもないよ」って顔で返してやった。


ホテルに戻ると奥さんと娘も起きていた。「ほんとに散歩行ったの?」なんて言われながら。

「電車に乗って帰ってきたんだよ!」息子が嬉しそうにみんなに説明した。

子どもにとってのレア体験は横浜を歩いたことよりも電車に乗ったことかもしれない。


ビックリするぐらい子どもとの思い出は薄れていく。でも、電車と息子と僕のコラボが起こったときにはきっと思い出す。

でも、これ以上同じコラボが増えると薄れるかもしれないなとセーブしたい自分もいる。

あの時の人差し指の感覚を僕は忘れたくないのだ。

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