おふくろの味はハンバーグと答えられない理由
おふくろの味は何?って聞かれたらみんなはなんて答える?9割の人は「ハンバーグ」って答えるよね。ハンバーグなんてどう作ったって絶対美味しいし、お母さんと一緒に作れば思い出までできる。
カレーもそうかもしれないけど、カレーは大人になったときに3日に1回は食べるから、ときどき食べるハンバーグがおふくろの味になるのは必然だよね。
僕の子供たちにおふくろの味は何かと聞いたら、たぶん「おふくろの味って何?」と聞くであろう。リアルなうに子どもに聞いてみた。
思った通り「おふくろの味って?」と疑問に疑問で返してきた。社会人であれば「疑問に疑問で返すなよ」って言われるかもしれないが、さすが僕の子どもだ。僕も予想的中させた。是非みんなには褒めていただきたい。
言葉を言い換えて聞いてみる「お母さんが作る料理で何が好き?」
これならわかるだろう。
案の定2/2の確率で答えは「ハンバーグ」である。特別奥さんのハンバーグがおいしいわけではない。いや、おいしいのは間違いないけど、いや、おいしいのは間違いない。
ただ、肉汁があふれ出るとか黒毛和牛100%とかそんな類のハンバーグではない。空気を抜くために耳の横でパンパンパンパンとリズミカルに卑猥な音を立てながら、こねるわけでもない。
いうなれば普通のハンバーグである。
だからこそ、これで立証された。
おふくろの味は何か聞かれた場合、まず間違いなく人は「ハンバーグ」と答えるのだ。
少し僕の話をしよう。
僕の母親が作るハンバーグもおいしい。僕はハンバーグが大好きだ。ハンバーグがまずいわけがないし、母親のハンバーグも誰が食べてもおいしいというであろう。ナツメグを入れたほうがおいしいとか、そんな通なハンバーグではなく普通のハンバーグだ。
だけど、僕にはハンバーグがおふくろの味といえない事情がある。これは結構、僕のせいではなく僕の母親のせいかもしれない。
僕は子供の頃、野菜という野菜が嫌いな子供だった。小さな野菜までよけて食べるし、とにかく野菜が見えただけで食べないという荒業を使うのだ。母親もきっと苦労しただろう。
食べていた野菜といえば、ハンバーグの玉ねぎとみそ汁に入っている大根とほうれん草の胡麻和えくらいなもので、あ、カレーのジャガイモは食べていたな。あ、ハヤシライスの玉ねぎも食べていたな。あ、、、
まぁ、とにかく野菜はとにかく苦手だった。親としてはそんな子どもにもどうにかして野菜を食べさせようとするわけで、そこで使ったのが「ハンバーグ作戦」だったんじゃないかと今は思っている。
「ハンバーグ作戦」なんて親が考えてやっていたとは思えないけど、なかなか効果的な作戦である。是非、野菜嫌いな子どもには「ハンバーグ作戦」を試してみていただきたい。
ハンバーグ作戦とは、「ハンバーグだよ」と子どもに説明して食べさせる作戦だ。ミートローフにはコーンやニンジンやグリンピースが入っていたが、「ハンバーグだよ」といって食べさせていた。
ロールキャベツについてもキャベツの中は「ハンバーグだよ」といって食べさせていた。餃子だって「ハンバーグを餃子の皮で包んだだけだよ」と言って食べさせていた。
しまいには麻婆豆腐のひき肉だってハンバーグだし、ピーマンとひき肉の炒め物だってハンバーグだった。
「ハンバーグの肉だよ」って言われれば信じて食べるから、ハンバーグってのは魔法の言葉なんだよね。
だから、僕にとってはミートローフ=ロールキャベツ=餃子=ピーマンの肉詰め=ハンバーグである。
ハンバーグはおいしいものだけど、特別なものではなくなっていったのであろう。
もう1つ、ハンバーグのおいしさには面倒くささも入っている。自分で作ってみると分かるが、なかなかハンバーグを作ることは面倒くさい。どんなに簡単に作ろうとしても工程はいくつかに分かれる。
まずは玉ねぎのみじん切りだ。玉ねぎは繊維を潰すことで目に染みる物質が出てくる。繊維を潰さずに切ることで防ぐこともできるが、おすすめはサランラップを顔に巻いて切ることだ。嘘だと思って試してほしい。家族の笑顔も獲得できる。
次に玉ねぎをあめ色まで炒める、これはレンジで省くこともできるし食感があっても大丈夫ならば生でもいい。子どもが食べるのであれば炒めるかレンジで柔らかくしておく方が無難だよね。
3工程目、ひき肉と玉ねぎを混ぜ合わせてこねる。子どもと一緒にこねてもいいよね。子どもと一緒に作ることが楽しいというのは子どもの気持ちであって、親側からすると一人でやった方が早いという気持ちといつも天秤にかけて判断している。
4工程目、成型する。丸い形や四角い形。ハート形のハンバーグは娘が作ったのかな?と形を作ることも楽しいのがハンバーグだ。
5工程目、焼く。家族4人であれば2回に分けなきゃいけないかもしれない。中が生焼けだと食べれないから、少し蒸したりするんだよ。それを2回もやるんだよ。
6工程目、肉汁にケチャップとソースでハンバーグソースを作る。ざっと考えても6工程だ。6工程って料理でいったらかなり面倒くさい。手はべちょべちょだし、フライパンを洗うのも面倒だ。
そこまでして作るハンバーグだからこそうまい。大変だから。そこには母の愛がつまっているから。子どもが喜ぶ顔を見たいという母親の愛なんだよ。ハンバーグってやつは。
大変そうに作る母親の姿が隠し味になっているってことだよ。気づかなかったろ?簡単に作っていないからおいしいんだよ。
全く同じものを手も汚さず、3分クッキングで作ってみ?ちょっと有難みがかけるから。
母親の愛情こそがおふくろの味なんだ。
現に僕は料理が結構得意なんだけど、お父さんの味は何か?って聞いたら子供たちは「ビーフシチュー」と答える。もちろん僕のビーフシチューがおいしいのは当然だけど、その作る工程や大変さもスパイスになっているんだ。
僕の母親は忙しければ忙しいほど元気になる不思議な人だ。自営業だから仕事をしながら、家事をしながら、育児をしながらでも楽しんでいる人だった。(過去形にしたけどまだ健在)
ハンバーグもまた忙しいはずなのにケロっと作ってしまう。祖父や祖母とも同居していたから当時6人分の料理を不満も言わずに作っていた。ハンバーグだって平日の夜に普通に出ていたし、作る大変さを微塵も感じさせなかったんだ。
だからこそ、僕にとってのハンバーグはおふくろの味ではない。
不思議な話だよね。
じゃあ、ぼくにとってのおふくろの味とは何か?
それは【生姜焼きみたいなプレート】だ。
今では僕も簡単に作れるから作り方を教えよう。
まず、ビニール袋に豚のこま切れ肉を500gくらい入れる。そこに醤油2:酒1:みりん1を入れて、しょうがスライスを入れてもみこむ。
少し揉みこんだらそのままフライパンで焼く。次にご飯をよそって、ご飯の上にしらすと海苔を散らす。あとは焼いた肉を乗せて完成だ。
びっくりするくらい簡単だけど、これが僕のおふくろの味なんだ。
この料理は大勢の人がいるときや、日曜日の夜、母親が疲れているときに作られる料理だ。
この料理には母親が一生懸命頑張ったスパイスが入っている。子供ながらに見ていたんだね。おいしいわけだよ。
余裕で作ったハンバーグよりも、疲れているときに無理してでも作ってくれた料理に感動していたんだ。
多分僕と同じ料理をおふくろの味に挙げる人はいないだろう。
ん?でも、弟はどうなんだ?
ハンバーグって答えたらちょっと笑うわ。
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