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えった。

これは、私が小学校一年生の時のお話。

この、えった。の意味がわかる人は、
北海道の人だと思います。

さてこの、えった。なのだが、
知らない人の為に、説明させていただきます。

鬼ごっこ等で、鬼が誰かを捕まえた時に、

えったー!

と言うのである。
つまり、捕まえた!と言う意味なのだ。

これは、私が幼少期の頃、
北海道出身の、かあちゃんが家で、
私を捕まえる時に、よく言っていた言葉で、
これは、日本全国の共通の言葉だと思ってた。

私は小学校入るまで、
ボロアパートで、こもり、
ひたすら家事とドリルを、やっていた。

狭い世界で生きていた。

小学校入って、初めて友達が出来て、
初々しい雰囲気の中で、休み時間に、
鬼ごっこをやろうと、校庭に出たのだ。

じゃんけんで、負けて、鬼になった、私。

狭い世界で生きていた為、
本気で走る事が、全くなかったので、
ひたすら頑張って、友達を追いかけても、
なかなか、友達を捕まえられなかった。

それを、見かねたのか、友達は、
お前、おっせーよ!何してんだよ!
と近づいてきた時、私はチャンス!
と思い、その友達に大声で、

えったー!

と叫んだ。
一瞬はりつめた空気が流れた。

は?えった?なんだよ、変なの。
タッチだろ?どう間違えれば、えった!
になるんだよ!お前、変わってんな!

と、友達達に、バカにされた。

私は、状況が読めず、頭の中は、
えー?タッチ?えった!じゃないの?

ぐちゃぐちゃな思考の中、私は、

あれ?オイラそんな事言ってた?
タッチ!と言ったつもりだった…てへ!

と、その場は、
お前バカだなー!おもしれーヤツだな!
となんとか、流れた。

えった。って言わないのかな…あれー?
ちょっと、先生に聞いてみようかな…。

と、放課後に担任の先生に、
えった。って知ってますか?
と軽く聞いたのだが、それが間違いである。

担任は、すごく怒り、
それは、差別用語だぞ!
そんなの、使ってはいけない!
どこでそんなの覚えたんだ!

と、顔を赤らめ、怒られたのだ。

えった。は、かあちゃんが言ってた…。
今日、鬼ごっこの時に、オイラが鬼になって、
友達を捕まえた時に、えった。って言ったら、
みんな、知らないみたいで…。
オイラ…そんなつもりなんて…なかった。

それから、先生は、
いいかい、これからは、そんな言葉、
使っちゃいけないよ。
それは、人の事をバカにする言葉なんだ。

先生は、悲しいよ。

と、今度はとても落ち込んだ感じの先生。

私は、そんなつもりもなく、
なぜ、かあちゃんが差別用語を、
使っていたのかが、不思議でたまらなかった。

それから、私はえった。を封印した。

タッチ!と言い換えて、遊んでいた。
それから、特に気にせずに過ごしていた。

そして時は、だいぶ過ぎ…。
つい、昨日の事である。
病室に、私より少し年上の方が、
入院してきたのだ。

その人は、北海道出身だと言う。
高校まで北海道に住んでいたそうだ。

それで、
方言の話しになり、私も知らずに、
使っていた北海道弁もあった。

手袋をはく。
ゴミをなげる。
絆創膏は、サビオ。

他にも多数存在していた。

かあちゃんがよく言っていたが、
間違って覚えてるんだと思ってた。

でも…故郷の方言だったんだな…。

そして、その人が発せられたのが、
えった。である。

そう、えった。は、
北海道弁で、捕まえた。の意味。

その人いわく、
ロシア語から来てるらしい。
あの、私の不得意なお寿司のイクラも、
ロシア語から、来てると言うではないか!

私は、驚いてあの、
先程の小学校時代の、
思い出を、その人に伝えたのだ。

その人は、あーそれは、もしかして…。
穢多(エタ)と間違われたのではないですか?

と言われたのだ。
ん?エタ?なんですかそれ。
と聞き返すと、

いわゆる差別用語で、おおまかでしか、
しらないのですが、部落の人達の事を、
穢多と言われ、それをバカにして、
差別していた時代があったそうです。

なるほど…。
やっと、あの先生から叱られた意味を知る。

えった。
穢多(エタ)

つまり、幼い私は、友達の事を、
差別用語を使い、バカにしていたのだ。

あー。そりゃ、ダメだわ…。
やっちゃいけない事だった。

そりゃ、先生は怒るわな…。

私の知らなかった、北海道の話。

もっと、もっと知りたい。

あの人が同じ病室に来た事は、
もしかしたら、私のルーツを知る為に、
神様が与えてくれたのかもしれない。

かあちゃんは、
故郷の事はあまり、言わなかった。

かあちゃんの中で、決別として、
故郷の話は、言いたくなかったのか。

私もそれまで調べなかった。

だが、新しく、学べれる。
かあちゃんの故郷の北海道。

私は、その人に、
北海道の事をもっと教えて下さい。

私の宿命の様な気がするんです。

かあちゃんの故郷であり、
私の中に流れる血がそういってるんです。

その人は、快く、
いいですよ!私も、故郷の話を話せるのは、
とても嬉しいですし、興味を持ってくれる、
人がいるなんて、すごく喜ばしい事です!

と、快諾してくれた。

今からでも、遅くない。
だって、私が通ってた、夜間高校には、
もっと、年配の人が、学びに来ていたのだ。

私、北海道を語れる様になりたい。
私の原点であり、産まれた場所である。

今まで、知らなかったのが、恥ずかしい。

よし、頑張って、勉強しよう!
わー!すごく今充実していて、幸せだな。

新しい私は、次へのステップに進んだのだ。

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