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県北戦士アガキタイオン私家版ダイジェスト

・阿賀北ノベルジャム という新潟県北地域を舞台にした小説作品コンテストに応募しました作品『県北戦士アガキタイオン』、おかげさまで電子書籍版も好調に読んでいただいておりますが、公式運営側からの「この作品はビジュアル重視で押した方がいいね」の言葉にメラメラと闘志を燃やしました僕は、
「おっし。それならいっちょイラストをバンバン付けてやる!しかもAI生成したヤツでなぁ!
と、謎の創作意欲(?)を滾らせて、今回の私家版ダイジェストを公開することと相成りました。
もちろんAI絵なので公式の販路に乗ることはありませんが、電子書籍版の本編と併せて読んでいただけることで楽しさが増してくれるといいなぁ、と不埒な期待も滲ませつつ、ポチポチ作ってみました。

・本編をお読みになった方は「このシーンはこのキャラだったのか」、まだお読みになっていない方は「ふええ……なんか楽しそう!」などなど感じていただければこれ幸いです。それではダイジェスト版、始まりです。
 なお、ダイジェストは中盤までのご紹介となりますので、物語のラストはみなさんの目でお確かめください(笑)

「県北戦士アガキタイオン」非公式ダイジェスト版

(主人公・コスプレイヤーの姫華マキナ登場シーン)

──スマホゲーム『ブリリアント☆ダンスマスターズ』に登場するアイドルユニットのコスプレ併せは無事に終わった。名残惜しそうにメンバーに話しかけようとしているカメラマン達と軽く挨拶を交わして、マキナ達は個別の自由行動時間に入った。 その途端、そわそわし出したマキナはあちこちをきょろきょろ見回し、何かを思い出してはデレデレとした顔で荷物をまとめ始めている。
「どしたんマキナ、めっちゃ嬉しそうじゃん。なんかお目当てのコスプレでも見かけた?」
 先輩メイドの沙耶が、ニヤけ顔のマキナに肩を組みながらそう囁く。
「え、沙耶さんわかります? そうなんですよ、子供の頃好きだった、アガキタイオンっていう特撮ヒーローのレイヤーさん見かけちゃって。ダッシュで追いついてきます!」
 マキナはコスプレしているキャラの性格宜しく、キラキラした目でそう答えると踵を返して走り出した。

主人公のひとり 姫華マキナ(関川真希)


A(アガキタイオンパート)

──何処か山深くの要塞、地下に降りるカメラ。おどろおどろしいBGMが鳴る中、祭壇がある薄暗い広間には松明が壁際に何本も燃え盛っており、その壁には無数の石棺が埋め込まれている。広間には黒づくめの戦闘員「ドロス」達が整然と立ち並び、祭壇の前にはでっぷりと太った軍服姿の司令官らしき人影が映る。
「よいか戦闘員諸君! 今やアガキタイオンは我々公然の敵となった! 二度も我らが『異喪魑廟(いもちびょう)』の崇高なる計画を邪魔した者には死あるのみだ! 三度目は無い! サンドイッチはうまい! 吾輩が好きなのはツナサンドだ! カラシ抜きで今すぐ持って……」
スパァン!
 目を血走らせながらサンドイッチへの愛について語る司令官の頭を、全身レザーの軍服で固めた仮面の美女がスリッパで叩く。
「まーた食べ物の話に変わっちゃってるわよメタボス司令。会話の単語に食べ物の名前が出てくるときのクセね。いいわ、ちょっと端っこでサンドイッチでも食べてなさい。いいこと、あなた達! 今度の作戦は米よ! 県北の食の全てを手中に収めて、県民、いや全国に高値で米を売り捌く『岩船米うめぇすけおらほで独り占め』作戦、発動よ!出てきなさい! 冷害怪人レイガイヤー!」

異喪魑廟司令官 メタボス
異喪魑廟幹部 ノミスギー

(マキナのバイト先メイドカフェに訪れたもう一人の主人公、ミッシーとの掛け合いシーン)

──日曜午後のメイドカフェ『スライムC』は盛況だ。新潟市・万代のはずれにあるこのコンカフェでバイトを始めて丸一年になるマキナは、その明るさと元気を売りにした接客態度で、カフェ内のトップ3に入る人気を得ていた。男女問わず快活にお給仕するその姿には、根強い固定ファンも多い。
「マキナちゃん、この前のトピコスの画像、ツイッターにあげるけど許可大丈夫かな?」
「あ、斉藤さん!当日はありがとうございました!」
「マキナっちー!今度イベントで出るのいつー?」
「わ、パグ吉さんお久しぶりですー!決まったらまたブログで告知しますねー!」
「あの、こっちのオムライスに闘魂注入してもらっていいですか?」
「闘魂の方ですね!わかりましたお嬢様!いきますよ~、セイっ!セイっ!闘!魂!注入!押忍!」
「ふーん、忙しそうじゃん、マキナ。
「はいお嬢様ー!いまそちらに伺いま……ってミッシー!?」
 カフェ内の端にある一人用テーブルに、手をゲントウ組み(注:新紀元エヴアンジェリカに登場する司令官の決まりポーズ)しながら座っているのは、ここ最近連絡の無かった三島恵梨……ミッシーだった。

主人公のひとり、ミッシー(三島恵梨)

(アガキタイオンステージショーの練習光景)

── マキナの周りを取り囲む五人の男女がじりじりと間合いを詰めていく。中央のマキナはどの方向からの動きにも対応できるように素早く目線を動かしながら、小刻みに揺れる構えで待ち構えていた。 不意に、その五人のうちひとりが気合いを発してマキナに襲い掛かった。正拳二段付きからの上段回し蹴り。その鋭さはかなりのもので、離れた位置にいるミッシーにも空を切り裂く音が聞こえてくるようだった……が、その拳も蹴りも寸前のところで、後屈立ちに構えたマキナの受けに捌かれていく。一人目を捌いたマキナは、次に襲い掛かる二人目に対しては技の出鼻をくじくように踏み込んで、目にも止まらぬ中段突きを叩き込んだ。
「え、あれ当たってませんか?」
 ミッシーが心配そうに声を漏らす。月岡はふふん、と鼻を鳴らしながら、
「大丈夫。ぜんぶ寸止めの約束組手だから、当たってるようで当たってないんだなぁ。ほら、次は掴まれてからの逆転だぞ。」
 背後から素早く羽交締めで掴みかかった三人目だったが、マキナが後ろに放った股間蹴りで悶絶したように見せかけて倒れ、次いで四人目は鼻先に繰り出されたマキナの右足二段蹴りに膝を付いた。 残る五人目とマキナが相対する。間合いを取って立つ五人目が気合いの咆哮を上げると、マキナは即座に駆け出し飛び上がった。それに呼応するかのように五人目も駆け出し飛び上がる。二人の飛び蹴りが交差するその瞬間、
「アガキック!」
 マキナが叫んだ。そして互いに着地。膝を突き、次いで前に倒れ込む五人目。残心の構えを取りつつ口上を叫ぶマキナ。「足掻きまくるぜ!アガキタイオン!」


 ミッシーは思わず立ち上がって拳を握りしめた。すごい、ここまで身体が動くんだ。これでアガキタイオンのスーツを着たらどんなステージになるんだろう。ミッシーは自分の胸が熱くなり、鼓動が早まるのを感じるのだった。

(コスプレイベントでのショー開始、そして挫折)

── マキナの突きも蹴りも、汗で張り付くコスチュームの安全を心配して、よりコンパクトに、よりスローになっていた。その姿は、比較的に装飾も少なく、既製服を改造しただけの戦闘員と比べても一目瞭然だった。
「アガキタイオン、がんばえー!」
 小さな女の子の声援が響く。しかしマキナには最早それを耳に入れる余裕は無くなっていた。
(息が……苦しい……動きが、キツい……。でもここで目一杯動いたら、ミッシーが一生懸命作ってくれた衣装を壊しちゃう……なんとか耐えなきゃ……)
 アガキタイオンの小さく振った右フックが穂根川戦闘員のこめかみ寸前で止まり、彼は吹っ飛んだフリをしながら、月岡とミッシーのいる側のステージ袖へ消えていく。
「おい穂根川、アイツ、どうしちまったんだ?台本と動きが違うし、全然動けてないじゃないか……」
 月岡が駆け寄ってくる。息を荒げて床にへたれ込む穂根川は、マスクを脱ぐと汗だくの顔も拭かずに答えた。
「通気性のある既製服の僕たちでさえコレですよ。アガキタイオンの中は暑さでヤバいっす!熱中症気味になってるんじゃないっスか?」
 それを聞いたミッシーの顔色がサーッと青くなった。
「あ……あたし……あたしのせいだ……。あたしが再現性にこだわったばっかりに、マキナに……マキナに辛い思いを……」


 ミッシーは震える声でそう言うと、手を前で組み合わせて祈るような格好でステージを凝視し始めた。
「馬鹿野郎、そんなことは関係ない。俺だ。俺の責任だ。指導者として、こういう事態になることは想像できてた筈なんだ……。」
 月岡はミッシーを叱咤激励しながらも、己の責任を痛感していた。そして観客から見えるギリギリの所までステージに近づき、両手を口に添えて声援を送る。
「頑張れ!アガキタイオン!耐えろ!関川!」



(アガキタイオンパート。異喪魑廟四天王との対決)

── 「シュラシュラシュラ!元幹部二人がブザマな格好だな!さあ、そろそろトドメを刺してやろう!メタボス!ノミスギー!」
 アシュラキラーはその四本の腕それぞれに持った刀を、道路に転がる二人の元幹部めがけて振りかぶった。
「ここまでだなぁノミスギー……」
「メタボス司令……ツッコミ役、結構楽しかったわ……」
 血だらけのモンスターとなった二人は、軽く笑みを漏らしながら互いに手を伸ばし、そうしてそっと握り合うと目を瞑って……

「そこまでだ!アシュラキラー!」

 ラーメン屋の二階の窓が開き、ひとりの男が屋根に降り立つ。交差させた腕から光が輝き、男の全身を覆っていく!光が収まると、そこには怒りの戦士が聳え立っていた!
「県北!」 戦士が拳を突き上げる!
「戦士!」 突き上げた拳、流れるような構えが決まる!「アガキタイオン!」 閃光と共に空気が震えた!

アガキタイオン/五頭大



(喧嘩したマキナとミッシーが花火大会で出会う)

──尺玉、連発、スターマイン。花火のプログラムは順次進んでいく。二人は互いにベンチの端と端に座って、言葉を交わすことも無く遠くの大輪を眺めていた。しばらくして、真希が手に持っていた紙袋をガサガサと開け、ぽっぽ焼きを一本手に取って言う。
「食べる?」
 恵梨はそれを一瞥すると、無言で手を伸ばして受け取り、口に運ぶとモシャモシャと食べ始めた。それを見て真希も袋の中から冷めたぽっぽ焼きを一本取り出し齧り付く。
 暗い公園が一瞬ずつ光の花に照らされる。交互に遅れてやってくる音と大気の振動。たまに湧き上がる離れた場所からの家族連れの歓声。飲み干した缶ビールを握りつぶしたおじいちゃんは、もう家に帰ってしまった。
「あのさ、」、ぽっぽ焼きを食べた真希が口を開く。
「まずい。もう一本頂戴」、それを遮るように恵梨が花火の方を向いたまま手を伸ばす。
(まずいのに食べるんだ……?)
と、真希は不思議がりながら、もう一本のぽっぽ焼きを手渡す。恵梨はそれをふた口で食べてしまうと、間髪入れずにまた真希の方に手を伸ばした。仕方なくもう一本を取り出し手渡すと、今度の恵梨は噛み締めるようにその一本を食べていく。
「やっぱりまずい。冷めたぽっぽ焼きは美味しくない」
 真希も、齧りかけのぽっぽ焼きを口に入れ飲み込むと、うつむきかけながら言う。
「うん。美味しくないね。ケンカして食べるぽっぽ焼きはちっとも美味しくないや。」
 しばらくの無言。花火が上がっていく。
 音。
 静寂。
「あのさ」「ねえ」
 ほぼ同時に声が上がる。
「ごめんね。ミッシーなんて大っ嫌いって言っちゃって。」「ごめん。マキナの気持ちも考えないで酷いこと言っちゃって。」
 二人は互いに見つめ合う。少しの間をおいて、二人は同時に吹き出して笑った。


(最後のステージショー直前)

── アガキタイオンのスーツは? 持った。メイクは? 今日はしなくて大丈夫。パーツ取れたときの応急処置キットは? 接着剤、両面テープ、安全ピン、ばっちし。
 捻挫した右足の痛みは?
 大丈夫。みんなに見えないように上手く隠して、ガチガチにテーピングして普通に歩けてる。
 よし、行くぞぉ。少女は両手で顔をパンパン、と二回叩いてから、アガキタイオンの衣装その他の詰まったキャリーバッグの取手をぐいと掴む。
 姫華マキナはそうやって自分に気合いを入れると、仏壇のある部屋に向かい、
「じゃあ、お父さん、行ってくるね」
 と、遺影に向かって手を合わせた後、元気よく玄関を出た。それに追い縋るようにパタパタと音を立てるスリッパの音。
「真希!あんた、関係者用の入場許可証机の上に置いたまんまだよ!」
 マキナは真っ赤な顔で照れながら、母から入場許可証を受け取った。
「後で必ず観に行くからね。張り切ってリハーサル済ませておきなさいよ?」
「あはは……やっぱり恥ずかしいなぁ……。」
 と、見送る母に手を振り、マキナは送迎待ち合わせ場所の少し離れたショッピングセンターへと向かった。

 十一月の晴れた早朝。まだ薄暗いショッピングセンターの広い駐車場を寒風が吹き抜けた。マキナは自分の足を確かめるようにキャリーバッグを引き駐車場を歩いていく。(うん、これなら大丈夫。痛み止めも飲んだし、今日はなんとかなりそう)
 そう心の中で自分に言い聞かせながら、ショッピングセンターの入り口に着いたマキナは、先に待っている人影を見つけた。ミッシーだ。
「おはよ!ミッシー!随分早かったんだねぇ。」
 手を振り近づいてくるマキナに視線を向け、ミッシーはメガネをクイっとずり上げる。
「うん。マキナが遅刻したら呼びに行こうと思って。」
「えへへ……見透かされてるなぁ……。」 マキナは苦笑してミッシーの隣に立つと、広々とした駐車場を見つめて言った。
「懐かしいなぁ。ここ、お父さんに連れられて始めてアガキタイオンのヒーローショーを観に来た場所なんだよね。ここで観たっきり、親の仕事の都合で他のショーは観れなかったんだけど、ここでのショーはずっと覚えてる。そこからかな。私がアガキタイオンを大好きになったのって。」
 ミッシーは驚いたような顔でマキナの方を向いた。
「そのショー、いじめられた怪人を助けて、悪い怪人をやっつけちゃう話じゃなかった?」
「そーそー!あれは熱いショーだったよねー!……って、え?ミッシーもあのとき一緒のショーを観てたの?」
 ミッシーはふふん、と笑みを浮かべて駐車場に目を向けた。
「あたしもそこからかな。アガキタイオンの事を好きになったのは。」
 マキナはハッと気づいたような顔をすると、隣に立つミッシーに寄り添い、そっと手を繋いだ。そっか、あのとき、アガキタイオンに頭を撫でられて泣いていた女の子、ミッシーだったんだ。
「今日はよろしくね、相棒」
「こちらこそよろしくね、アガキタイオン」
二人はどちらからともなく繋いだ手をキュッと握る。道路を曲がって、まだライトを灯したままのマイクロバスが、駐車場を横切ってゆっくりと向かってきた。


──ダイジェストはここまでになります。とはいえ、気になる方に終盤のシーンをちょっとだけご紹介!
↓↓↓↓↓

大ピンチじゃねぇか!!!

というわけで、怒涛のラストまで追いたい方は、今すぐAmazonで「県北戦士アガキタイオン」をゲットだ!!

なお本編イラストは、公式デザイナーの犬藤さんの素敵なイラスト付きでお楽しみ頂けます😉

本編を最後まで読んで、みんなも足掻こうぜ!
県北!戦士!アガキタイオン!!

(おわり)

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