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古代浦島太郎伝説

浦島太郎の昔話は、太郎が子どもたちにいじめられている亀を助けて海に返すところから始まり、海で釣りをしていたら、大亀が現れて、竜宮城に連れられて行く。そこで、乙姫のもてなしを受けて、3年の歳月が立ち、郷愁の念忘れがたく、ふるさとに帰るが、知人は誰もいない。ふともらった玉手箱を開けると煙が立ち上り、太郎は白髪の老人になってしまうという話。古くは、日本書紀、丹後国風土記、万葉集にも収められている古い物語であるが、昔話と若干の違いがあり面白い。

昔話

(香川県仲多度郡:関敬吾編) 
浦島は、いかだに乗り、釣りに出るが、大亀が何度も釣れて、その都度海に返す。すると渡海舟が現れて、浦島を竜宮城に案内してくれる。やがて、乙姫の歓迎を受けて、3年間が立ち、帰郷の念にかられる。帰るときに、困ったときに開けるようにと玉手箱をもらう。ふるさとに帰ると家はなく、途方に暮れた浦島太郎は、三重の玉手箱を開けてしまう。一番上の箱には鶴の羽、二番目の箱を開けると煙が立ち、三番目の箱には鏡が入っていた。浦島に羽が付いて、鶴となり飛んでいった。乙姫は亀になり空を舞う浦島太郎を見に来た。鶴と亀の舞の起源である。

①日本書紀

時は雄略天皇の22年秋7月、丹波国与社郡管川(つつかわ)の水江浦島子が釣りをしていると、釣った大亀が乙女と成る。浦島子は乙女に感じ入り、妻とする。そして共に海に入り、蓬莱山(とこよのくに)に至り、そこで仙衆(ひじり)に会う。結末は書かれていない。

②丹後国風土記

時は雄略天皇の治世、丹後国与謝郡筒川村の水江の浦島子は、三日三夜海にいるも、魚は釣れず、やがて五色の亀を釣るが、亀は天上の仙の家の人、神女であった。共に海中の蓬山(とこよのくに)である大きな島にたどり着き、浦島子は亀姫の夫となり、3年間を過ごすが、ふるさとへの望郷の念が起こり、亀姫から、開けなければまた帰ってこれるという玉匣(玉手箱)をもらい筒川の郷に帰るが、現世では300年が経っていて、知る人もいない。玉手箱を開けると白雲が立ち上り、「芳しきすがたは、風雲に従いて天に飛かけりき」浦島子の若い姿は老人となり、天に消えてしまう。亀姫と浦島子のやり取りの歌が添付されている。

③万葉集

時は不明、住吉の水江浦島児は、釣りに出てから7日、神女と出会い、常世のわだつみの神の宮にいく。浦島児は、神の女(おとめ)と夫婦になり、3年を過ごすが、望郷の念に囚われて、家に帰るが、また会いたいならば決して開けるなという玉匣をもらう。ふるさとに帰るが、家はなく、玉匣を開くと白髪となり、命絶えてしまう(「命死にける」)。

昔話との相違点

古代の浦島子の話と今の浦島太郎と異なる点。
①亀は神女の化身だった。浦島子と神女は夫婦になる。上記の昔話では、浦島太郎が釣った亀を幾度も海に返す話だが、もともとは亀を助けての恩返しの話でない。
②『丹後国風土記』では、海中の蓬莱山は、海の彼方にある常世の国であり、海上にあるか、海底にあるか曖昧な大きな島である。竜宮城のような鯛や平目がいる海中のイメージがない。
③『万葉集』では、浦島子は、白髪の老人となり、死んでしまう。『丹後国風土記』では、「芳しきすがたは、天に飛かけりき」で「岩波古典文学体系版」では、神仙としての若い姿が消え失せたとあるが、それは、すなわち死を意味してるように思える。

古代の浦島子の物語は、こんな感じか?

浦島子は、海で釣りをしていると、大亀を釣るが、それは神女の化身であり、やがて真の姿を現した神女と浦島子は夫婦となり、海の彼方にある蓬莱山(とこよのくに)に行き、3年を過ごす。(昔話は、亀を助けて恩返しされる話で、浦島太郎と乙姫は夫婦ではない)

ふるさとに帰るときに、神女から玉手箱をもらうが、決して開けないという契りをする。閉じた玉手箱が神仙の力を維持する役割を果たしている。玉手箱を開けると神仙の力が消えてしまう。開けない限り、浦島子は神仙の力に守られて、再び蓬莱山に帰ることができたはずなのだ。

ふるさとに帰ると、わが家もなく、知る人もいない。浦島子は思わず玉手箱を開けてしまう。すると白い煙が立ち上り、神仙の力で守られていた浦島子は白髪の老人になり、死んでしまう。(昔話では、白髪老人になり終わる)

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