見出し画像

文明を知らない子どもたち

バオバブの並木道にバスが止まったら、マダガスカルの子どもたちがいつの間にか集まっていた。テレビはない。昭和30年代初めもこんなだったかなと懐かしさがこみあげてくる。川で洗濯する光景が見られる、そんな村だった。時折やってくる観光バスが平坦な日常に刺激を与えてくれる。

向こうから牛が引いた荷車がやってきたら、旅行者たちが写真をとるために集まって道をふさいでしまった。荷車はだまって写真を撮られるままじっとしている。写真も撮り終えた旅行者たちは、礼も言わずに去っていく。牛車の主は静かに去っていった。何か嫌なものを見た感じがした。

教科書を大事そうに持っている子は、学校に行っているのだろうか。元気な子供たちが笑いながらついてくる。
枝に巻き付いているカメレオンを差し出して、写真撮影の代金として一ドルのチップを稼いでいる子がいた。これは確かに商品と対価という経済として成り立っている。

裂けたシャツを着て屈託のない笑顔を返してくれる子は、目が生き生きと輝いていた。この子たちと一緒に写真を撮った。すると2時間ほど後に私たちを乗せて走るバスを追いかけて、水の入ったペットボトルを水筒替わりに持って走っている子がいた。その姿を写真を撮ったが、後でよく見たら、一緒に写真を撮った子のひとりだった。

文明とは山のようなものだ。山があれば登りたくなる。文明も知れば欲しくなる。山があるから登る人と山を知らない人とでは、どちらが幸せなのだろう。文明に浸かっていない子どもたちの屈託のない笑顔が忘れられない。

バスを追いかけてきた子


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?