コジロ・ザ・ガンマン vs 殺人エンターテインメント
「バカな」
それがビリヤードマーダーの最期の言葉だった。ボールとキューを叩っ斬られ、脳天に銃弾を撃ち込まれし殺人技巧追求者はその場に倒れ、動かぬ屍体となる。
男は銃刀をホルスターに戻し、着物の襟を正すと、涙を流す少女の肩に触れた。
「要らぬ世話だったか」
少女は静かに、一往復だけ首を横に振る。
「おい、まずいぜ」
決闘を見ていたカウボーイのひとりが男に声をかけた。
「死んだこいつ、あの殺人エンターテイナーの一人だぞ」
恐ろしき組織の名を耳にした群衆が少しざわめく。だが男は表情ひとつ変えず返事した。
「承知の上」
「なら、何故。お前、奴らに追われるぞ」
「其れがおなごを泣かせる訳にはなるまい」
男はカウボーイに向かい直すと、刀にふたたび手をかける。
「お主も抜け。演技で殺気は隠せんぞ」
「……お見通しか」
カウボーイの口が大きく開くと、中から燕尾服の男がぬるりと飛び出した。
「俺はマジシャンマーダー。同胞の仇、覚悟しろ」
【続く】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?