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【不定期雑記】東京について

「東京のどこが好きなの」って訊かれると、ムムムと唸ってしまう。

東京が好きだ。

これはずっと前、それこそ5年も10年も前から言ってきたことで、今も好きだ。

なんというか、こうたまらなく好きなのに、「具体的にどこ」と訊かれると、どこから話したものか、困る。

外見的な話をすると、とにかく見てくれがいい。

住宅街がバーッと並んでいるのは美しいし、東側のスラリと細長い摩天楼たちもセクシーで素敵だ。(何を隠そう、僕のPNの『三楼丸』の楼は、摩天楼の楼だ)

それに東京を語る上で欠かすことができないのは、路線と高速道路だ。東京の東側の路線や高速道路で特にユニークなところは、思いっきり街の中にあるところだと思ってる。こういった交通機関を使ってると街並みを普段とは違った角度から見ることができて、とても幸せな気分になる。セクシーな肢体を視姦するのに似ている。

そう、東東京は、圧倒的にセクシーなのだ。見事な曲線を描く高速道路も、前述した摩天楼も、立ち並ぶビルも、街並みも、海も。ところどころメチャメチャなところも素敵だ。完璧なひとは取っつきにくい。

そしてその中にも人の暮らしが息づいているところがあったりして、思いを掻き立てられる。ここにも人が住んでいる。生活がある。人の生活は、どれも美しい。

それに対して西東京は、言うならば素直で、いい子だ。

中央線に乗って新宿から立川に行ったことがある人はわかると思うんだけど、新宿より西は圧倒的に住宅街が目立つ。新宿以前にも住宅街自体は存在しているけど、マンションに見せかけたビジネス専用のビルが多くて、騙し騙しに見せているという感覚が大きい。どこからが生活で、どこからがビジネスなのか、わからない。

西東京は隠さない。ありのままの住宅街を僕らに見せてくれる。地平線の向こうまで広がっているんじゃないかと思える住宅街を。新宿〜中野間、阿佐ヶ谷〜荻窪間、西荻窪〜吉祥寺間、武蔵境〜武蔵小金井間なんて特に良くて、特に東側から武蔵小金井駅に差し掛かる前の城塞のような巨大マンションなんてたまらない。母性だ。バブみ100%で勝負をしてくる。林檎を使った料理勝負で、東東京がオシャレにもアップルパイを焼き上げて「ちょっと作りすぎちゃったかも」なんて言うとしたら、西東京は林檎そのままをひとつ出してくる。「君の分しかできなかったよ」と言われ、表面に齧り付くと、ありえないほど甘い。溢れんばかりの蜜がダラダラと口の中に流れ込んできて、この林檎ひとつ、その裏に秘められた彼女の苦労に思いを馳せて、つい泣いてしまう。そんな差がある。林檎を料理しなかったから勝負は東東京の勝ちだし、それに関しては味も外見も十分に納得しているけど、僕は心のどこかで西東京のことを考えてしまう。彼女の在り方を、美しいと思ってしまう。そんな彼女に惹かれて彼女のアパートまで赴くと、立川や国分寺の姿を見ることになる。東東京ほど似合ってはいないかもしれない。けれどそれは確かにセクシーだし、なんだか愛おしい。短い髪を揺らし、そっと座っている彼女の肌は、白い蛍光灯の明かりを受けて輝いてるみたいだ。目を合わせれば、まだどこか幼い顔つきの、綺麗な瞳の奥に、不釣り合いなほどの熱があるのを感じ取れる。「エアコン、つけたら暑いかな」と彼女は少し微笑んで言う。そっと指を伸ばして、柔らかい二の腕を触ると、暖かいと言うには、熱すぎるくらいだ。メロウな空気が部屋に満ち、身体を侵していく。この手でその澱みの全てを暴いてしまいたいと思う。南国の果実。それを思わせる、メロウ・イエローの澱み。

Mellow yellowは2010年に解散した。

何の話をしているんだっけ。

とにかく、東京を東京としてひとつにまとめちゃうのはよくないという話だ。

眠くなってきたし、喋りすぎもよくないので、今日はここまで。

(三楼丸)

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