Paradise City

 俺は今日もクソみたいな気分でキーボードを叩き始めている。
 どうやら俺は気分がいい時と最高に気分が悪い時に何かを書きたくなるようだ。

 「気分が悪い時」、これも色んな気分の悪さがある。昨日は晩飯を食べすぎて気分が悪かったが、そんな時に何かを書きたくはならないし、博打に負けて財布の中身が軽くなった時も別段そんな気分にはならない。

 何かを書きたくなる気分の悪さは「怒り」で気分が悪い時だ。
 たちが悪いのはその「怒り」の矛先がわからず、何か漠然と怒りが込み上げているってこと。

 今日の昼過ぎにトンチンカンな電話をかけて来た仕事相手に怒っているわけでもなければ、昨日腹がいっぱいだと言っているのにカレーライスを出してきた馴染みの飯屋の店主に怒っているわけでもない。

 自分自身に怒っているのかと思慮してみるも、俺はそんなに立派な人間ではない。
 人にも甘いが、自分にはその3倍は甘い。
 
 では一体何に怒っているのかと考えてみても、タバコの煙のように何らかの輪郭を形造りそうになっては消え、見えそうになっては消えを繰り返している。
 
 こんな夜は早々に寝てしまうのがいいのだろうが、あいにく今朝の寝坊のせいでまだ睡魔が襲ってくる気配もない。

 思考の整理をしてみよう、こういうわけのからない時こそクールである必要がる。
 冷静さを欠いては戦争には勝てない。孫氏もチンギス・ハンもナポレオンもそう言ってるんだから間違いない。

 現在の自分が怒りを覚えそうな可能性があることを列挙してみよう

1、今週末までに仕上げねばならない仕事が溜まっている
2、最近できた恋人との体の相性がすこぶる悪い
3、一昨日きたクレジットカードの請求がなかなかタフな金額だった
4、今日、1日中 Guns And Roses を聴いていた
5、酒を4日程飲んでいない
6、最近のアダルトビデオの女優が可愛すぎる
7、男も女もオーバーサイズのファッションばかり
8、ここしばらく別段楽しいことがない

 ちょっと待て、これはまずい、この調子でいくと少なくとも50項目はこの調子で列挙できる。  
 こんなにも俺は怒りの要素を抱えているのか。
 書いていると余計に腹がたってきた。

 何が Paradise  City  だ馬鹿野郎。
 
 もうやめよう、怒りは何も産まない、いやロックンロールくらいは産むのかもしれないが、残念ながら俺はロックスターではない。しがないアパレルのデザイナーだ。
 最高のロックソングを書いたところで、そんなことよりも企画書を早く とせっつかれるだけだ。
 
 誰か俺をどこか知らない Paradise City へ連れて行って下さい。可愛い女の子は別にいいから、怒りの項目が半分くらいですむような街へ。

 いや、ものを書くにあたって偽りは良くない。
 やっぱり可愛い女の子もいて欲しいです。  
 

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