さようならドンドコ島
島での最終日、起きてみれば昨晩からの大荒れの天気は全く変わらず。
海上の風速は11m/sで、昨晩は15m/s、台風並みの悪天候となり、前日はやって来るはずのフェリーが欠航してしまいました。
今日も欠航したらいつ島を離れることができるのだろうか、不安を抱えながら、相変わらずの暴風で荒れる外に出てみます。
強風でへし折れた宿泊施設の頑丈そうなポールが、まず最初に目に入って来ました。やばいなぁ。
昨日は旅で中日となり、ドンドコ島(薩摩硫黄島)で撮影を行っていたのですが、昼から天候が悪化してこの日のフェリーが欠航してしまったのです。
今日は一応鹿児島を出港するものの、昨日の欠航によってフェリールートが変更されてしまい、予定通りなら本日中に宮崎へ帰るはずでしたが、夜に鹿児島へ入港するため急遽予定を変更して鹿児島でもう1泊することになりました。
とは言え、落ち込んでいる場合ではありません。
考えようによっては、むしろ大荒れの天候の中で撮影できるわけで、そんなチャンスは滅多にないはずです。この島の別の表情を写しこむことができるかもしれません。
とりあえず土砂降りと暴風の中、レインウェアを着込んで撮影に出ました。
島の小さな集落のすぐ西に、垂直にそそり立つ岩壁があります。
高さ約100m。
これが鬼界カルデラの淵、すなわち外輪山です。
前回も紹介したように、集落はこの鬼界カルデラの中に存在するのです。
このカルデラ壁によって東西に吹く風はかなり弱められるのですが、逆に南北に吹く場合は風が集約されて、猛烈な突風になっていました。
それにしても破局噴火を起こしたカルデラ内のこんな風景は、全世界を見てもここしかないでしょう。
島内にはツバキが植えられて椿油を生産しています。また全域に竹が生えているため、タケノコの生産もあるようです。
それ以外は小規模な牧畜と漁業です。
一般的な農地が無く、ほとんど全ての物資は島外から購入しているようです。農地が無い原因のひとつが、上の写真にあるクジャク。
え!?
そうクジャクです。
クジャクの食害によって農地を造るのが難しいようです。
主に島の西部を我が物顔で闊歩しています。
写真はオスで、メスはもっと地味な色で尾が短く、遠くから見るとキジのように見えます。
なぜクジャクがいるのか。
かつて半世紀ほど前、今の日本と同じように離島ブームが起きていました。
そしてこの島もリゾート会社に狙われて鳴り物入りでリゾート施設が作られたわけですが、ブームの終焉と共に破綻。
その時客寄せ用に飼っていたクジャクが、放置や脱走によって野生化したのです。
前回、現在の離島ブームによって、沖縄のリゾート開発が引き起こす環境破壊が、最も心配なことであると述べましたが、半世紀経ってもこの島は元に戻らず、住民たちはすでに野生化したクジャクとの共存を考えているようです。
自然を支配しようとする欧米とは異なり、日本は自然を神とし、自然と共に生きることを望む世界唯一の発達した文明社会です。
日本が世界で最も古い国家で、そして安定した社会であり続ける本当の理由が、この縄文時代より引き継いだ大切な価値観なのです。
そのことを忘れるべきではないと思います。
そして日本が世界に対して影響を及ぼせる役割とは何か、それをみんなで考えていく必要があるでしょう。
カメラを制止させることが難しいほどの暴風雨で、それでも頑張って撮影していると、一瞬雲間から空が見え、写真に納めることができました。
横殴りの雨と、高い湿度によって全身びしょ濡れ。
フェリーは一応やってくるハズですが、欠航する基準が風速12m/sで、現在は11m/s、相当怪しいです。
こりゃ今日も帰れないかも知れないなぁ。。
神様に好かれて返してもらえないのかなぁ、などと図々しい妄想をしながら、昼過ぎのフェリーの時刻までまだ時間があったので、ひとまず地域の神社に3日間お世話になったことへのお礼参りに行きました。
果たしてフェリーはやってきました。
そしてこの時、この旅最大の不思議な奇跡が起きたのです。
フェリーが入港する10分前まで、まだ風が吹き、弱まっていたものの雨が降っていたのですが、それが突如、完全にピタリと止んでしまったのです。完全に消失したのです。
つい30分ほど前に外輪山の上から撮影した時には、まだ海は激しいうねりと白波が立っていたはずなのですが、それが完全に消えてしまいました。
おおーー!!
そんなことってあるぅ!?
フェリー旅に慣れた人なら知っていると思いますが、その場の風が止んでもその後数日は波が高く、荒れるのが普通です。
ところがいざフェリーに乗ってみると完全に「凪」の状態で、片足で立てるほど波が無いのです。
さらに日差しまでが少し差してきました。
現時点での天気予報を見ても荒れているのですが、完全に天気予報無視で、この島周辺のエリアは驚くほど落ち着いてしまっています。
島にお別れをしながら、これはさすがに神社の方へ向いて、改めて手を合わせました。
自然の神様本当にありがとうございました。感謝です。
さようなら、神秘の島、ドンドコ島。
またいつかチャンスが会ったら、お会いしましょう。
かくして鹿児島までの海旅は、その後も全く荒れることがなく、無事に帰ってくることができました。
とてつもなく素晴らしい体験ができたと思います。
これだから旅はやめられない。
やっぱり旅っていいですね。
「おわり」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?