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風景の視程と大気汚染

今回のお話は、風景写真家にとって極めて重要な「視程(してい)」のお話です。
視程とは、どのくらい遠くのものが見えるか、その限界距離のことです。
決まった定義はありませんが、視程に影響を与える要素は、天気や湿度、高度、時刻などさまざまです。
ただこの視程の話は非常にセンシティブな問題で、この話をするとき必ず出てくる重大な要素が「大気汚染」です。

大気汚染の話は、日本においては半ばタブー視されています。特にスポンサー企業を必要とするプロの写真家からは、まず出てこないお話だと思います。

私は30年ほど前から、日本の大気汚染の状況に徹底して注目してきました。
風景写真家として美しい風景を撮るためには、日々細かく変動する大気汚染の量を確実に把握する必要があるからです。
本気で日本の風景と日本の旅を愛している風景写真家にとっては、大気汚染の問題を無視することはできないのです。

現在の日本の大気汚染の大半は、中国と韓国から流れてきたものです。
その量は凄まじく、近年は北九州から熊本・阿蘇、そして瀬戸内海沿岸および大阪辺りまで、ほぼ一年中、本来の青い空が見えないほどのレベルです。
北海道ですら、かなりの大気汚染に覆われるようになってきました。

一部の専門家からも指摘されているように、花粉症は花粉によるものではなく、花粉に付着した大気汚染物質が原因であるとも言われています。
なぜなら花粉症の人の多くが、花粉の量の増減よりも、むしろ大気汚染物質であるpm2.5の増減に依存している可能性があると考えられているからです。例えば新型コロナウイルスによって中国や韓国の経済活動が激減した今年の1月から4月にかけて、花粉症や喘息、アトピーなどの患者の症状は、日本において非常に軽微であったと言われています。
真偽のほどは、科学的な検証結果を待つしかないのですが、結果が出たとしても国民に広く知らされることはないでしょう。
ちなみに現在の日本人は、平均して1日当たり200個のマイクロプラスチックを吸い込んでいるそうです。

このように大気汚染は日本に悪い影響を与え続けていますが、先ほど述べたように、日本の美しい風景にも悪い影響を強く与えています。

逆に言うと、大気汚染の影響の少ない風景は、とてつもなく美しいものです。

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これは富山県の立山から富士山を捉えた時のものです。
標高が上がれば大気汚染の影響は少なくなります。
視程は約165km。

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こちらは標高500m程度で、鹿児島県の霧島から桜島の左奥に開聞岳を捉えたものです。
視程約83km。

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こちらは岡山県の牛窓から、瀬戸内海越しに香川県の屋島を捉えたものです。中央の真っ平らな山が屋島で、源平の合戦の舞台となった有名な場所です。
視程約30km。

こうして見ると、面白いことに気が付くはずです。
3枚とも距離が全然異なるのに、見え方にあまり差が感じられないということです。
視程の差は、距離感に影響を及ぼすのです。

かつて大気汚染が少なかったときは、四国の石鎚山(いしづちさん)から鳥取県の大山(だいせん)が、日常的に見えたと言います。
視程185kmといったところでしょうか。

大気汚染は厄介なものです。
大気汚染の無い曇りの風景と、大気汚染のある晴れの風景。
良い風景写真が撮れるのは文句なしに、大気汚染の無い曇りの風景です。
この差は、撮影対象まで僅か10mほどの写真でも、はっきりと現れます。
撮影しても、どうも良い写真が撮れない、写真の抜けが妙に悪いと感じた場合は、一度大気汚染を疑ってみてください。
現代の日本において大気汚染の少ない日を探すのは大変ですが、知っておいて損はないでしょう。

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