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良い写真の撮り方

さっそくですが「良い写真」の定義は、「自分自身が気に入った写真」という意味です。世間一般で言うところの「良い」とは、ちょっと違うかも知れません。

以前にも述べたように私は商業写真家ではないので、鑑賞者の高評価の最大公約数を目指して撮影することはありません。
写真を単なる芸術として考えているので、良い写真とはすなわち自分自身が気に入った写真ということになります。
ここで紹介する以下の記事も、常に「私の場合は」という接頭語が付いているものとして読んでください。決して写真界のセオリーを述べているわけではなく、私の場合の良い写真の撮り方を述べているまでです。
もちろん決して他の人の手法を否定するつもりもありません。

さて本題に入りましょう。

この写真は和歌山県の紀三井寺での写真です。
ピラミッド型の三角の構図を意識して撮影しました。

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「なるほど、写真ってやっぱり三分割とか集中線とか構図が大切だよね。撮影前にじっくり構図を練って良く考えて撮影する必要があるよね。」
と思われたそこのアナタ。
ごめんなさい、構図を意識したというのは真っ赤な嘘です。
この写真は構図なんて1ミリたりとも意識せず、見上げたら朱の色が美しかったので撮影しました。トータルの撮影時間は5秒くらいです。

次の写真も同じく紀三井寺での撮影です。

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よく見ると背景の壁に横線と縦線の構図が見えますよね。そして像そのものの縦の線という構図です。
さらに次の写真です。

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太陽の光が円のようになっていて、先ほどの構図に円の構図が追加されました。
しかし、ここでも「なるほど」と思わないでください。

1枚目の写真で何を考えていたかというと、像の真正面から像の目を意識して、その気配を伝えたいと思ってシャッターを切りました。
優れた像は真正面から撮影することをためらわせる程、強力な眼力と気配を持っています。自分の心を見透かされているような強烈なパワーがあるのです。それゆえに仏像などは正面からの撮影には勇気がいります。
像の気配を伝えようと思って撮影したまでです。
頭頂部にあるシダ系の植物がまるで後光のように見えます。これも構図なのですが、撮影時には全く意識していません。

2枚目は、1枚目の直後に一瞬だけ雲間から太陽の直射があり、その光のピークだけを意識して撮影したものです。
2枚とも構図に関しては全く何も考えていません。
感動した瞬間に、カメラを感動した方向へ向けてシャッターを切っただけです。特に1枚目の写真に私の感動が多く含まれています。
2枚の撮影所要時間は合わせておおよそ20秒程度、その後はすぐに次の撮影対象を探して移動しています。

以上のことから何となく理解できると思うのですが、縦線、横線、分割線、斜め線、集中線などの写真界隈でよく聞かれる構図は、撮影した後の「後付け」の説明に過ぎないのです。
どんな写真であれ、後付けによる構図の屁理屈を付けることができます。
でもそれは結果であって、写真を撮影するときの心得とは何ら関係がありません。

1枚目から2枚目の光の移り変わりは5秒くらいで、しかも光のピークは1秒以下、そんな状況で構図なんで考えている暇などありません。
このことは「感動した瞬間」の光を捉えることが、いかに大切かということをあらわしています。
構図を練って撮影する暇があるなら、今まさに感動しているその瞬間を直ちに撮影しましょう、ということなのです。
構図より何より、自分自身の感動に敏感になるべきです。
自分の感動を正確に捉えること、自分の心を知ることが大切なのです。

ついつい感動するような風景を見つけると、こうしようかな?ああしようかな?といろいろなことを考えたり、ズームレンズのリングをぐりぐり回してみたり、ベストな1枚を撮ろうとグダグダやってしまいがちです。
しかし感動というのはその瞬間に起きることなのです。
もしも10秒後に撮影したら、その写真は感動から10秒だけ遅れていることになります。
もしも感動してから数歩移動して撮影したならば、出来上がった写真が確かに素晴らしいものであっても、あなたのその瞬間の感動からは数歩だけ離れていることになります。
まずシャッターを切ることです。

一番重要なのは「おおっ!」と思った瞬間に、カメラを対象に向けて「可能な限りブレを減らして丁寧に素早くシャッターを切る」ことです。
さもなくば、移りゆく風景を捉えきることなどできません。
そして同じ風景は2度とやってきません。
もしどうしてもアレコレやってみたいなら、その後にしましょう。
ただ、自分自身の感動を正しく理解しているならば、その後たとえ数十枚、数百枚の撮影を試みたとしても、恐らく最初の3枚あたりまでがベストな写真になるはずです。
どうも思った写真が撮れていないなぁと悩んでいたら、ぜひやってみてください。
注意しないといけないのは、いくら急いでいてもちゃんと撮影できていないとだめです。そのためにはカメラを使いこなすことが大切。
可能な限りブレを減らして丁寧に素早くシャッターを切ることは、とても大切なことです。

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