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『創造的でなければ死んでるのと同じ』  夏野剛✖️松本徹三 対談連載 5.知識の幅を広げよう

2021年10月26日(火)に開催された「Invent or Die - 未来の設計者たちへ:第11回 夏野剛 x 松本徹三」の書き起こしです。
通信業界の黎明期に、ソフトバンクとドコモで活躍。現在、日本の携帯電話の礎を作ったと言っても過言ではない二人。夏野剛松本徹三氏が日本の未来に関して議論します。

5.知識の幅を広げよう

司会:私も今回、この本を読ませていただきました。松本さんは、この本を通していろいろと読んでる方には考えてほしいことがあると、あとがきで書かれていたと思います。小説としても面白いですし、いろいろ学ぶこともありますが、これを通して今の科学技術、縁、出会い、それから夏野さんがおっしゃった人間についても考えていただきたいというお話でした。この本の中での隠されたテーマ、考えてほしいことについて、お話ししてほしいです。

松本氏:ありがとうございます。隠されたテーマというか、僕はこれをきっかけに、もしこういうことができたらうれしいと思うことが一つあるんです。それは若い人達との交流です。若い人達の活躍の場って、今、色々なところに広がってるじゃないですか。元々、何か新しいものを生み出そうとすれば、どこかで尖っていないといけないのですが、その点では、日本の若い人達は割といいんじゃあないですか? オタクという言葉がありますけど、日本の若い人達は何かにこだわりだすと、ものすごく細かいとこまで入っていきますよ。これ、素晴らしいんだけど、そこで孤立しちゃうと世の中全体と繋がらないじゃないですか。何でもいいけど、好きなことをガーッとやってる人が、その一方でできるだけ幅広く、世の中の政治、経済、社会的なことから、哲学とか心理とかそういうことにも興味を持って、一応のことが分かってると、とてもいいと思います

アイデアの出る瞬間

物事のアイデアっていうのは、全然関係のないような二つのことが、ボーッとしてる間にパッと結び付くことで生まれるんだと思いますよ。我々が毎日何か思いつくのも、アインシュタインが相対性原理を思いついたのも一緒だと思うんです。頭の中には色々な問題意識がある一方で、幅広く雑多なメモリーがある。思いもよらない二つのものが、きちんとしたロジックでバチッと結び付くと、こうやったらこうなるんじゃないかというアイデアが生まれます。日本の若い技術屋さんも、技術屋さんでない人も、どんどんアイデアマンになってほしい。そのためには、人間の頭の中にある知識の幅が広ければ広いほどいいんです。自分の専門外で、とんでもないことも知ってると、言い換えると、より幅広く全体像が分かってると、そこから出てくる発想は、本当に社会を良くしたり、世界を良くしたりすることに繋がるんじゃないでしょうか。

理系とか文系とか関係ない

それなのに、日本では、すぐ理系とか文系とか分けるじゃないですか。アメリカなんか、社長はPhDが多いです。そんな人は、ちょっとビジネスが好きだと、ビジネススクールに行って、MBAか何かも取っちゃうんです。日本では、あいつは技術屋だからとか、私は文系だから分かりませんとか、初めからギブアップしてるでしょ。

具体的には、僕は今すぐやりたいことが一つあります。この本はあらゆる科学技術から哲学、心理、政治経済、ほぼ全部を網羅してるはずなので、それをベースに若い人達と議論することです。僕はあんまり取り柄がありませんけど、一つだけ取り柄があるのは歳を取ってることです。歳を取ってると、知識と経験の幅が当然広くなります。今、何か仕事をやらしたら、僕は若い人たちに全部負けますよ。もうまともに体が動かないから、何をやっても全部負けると思うけれども、一つだけ勝つのは圧倒的に長く生きていることです。僕は好奇心がとりわけ強くて、いつも色々なことを考えてきていますから、様々な分野にそれなりの知見があるんです。これを、僕は若い人にトランスファーしたいわけ。

夢は、誰かがアレンジしてくれたら、僕は何でも喜んでやりますよ。この本に書かれている事なら、何でも質問に答えます。どんな人でも、この本に書かれていることですぐにはよく分からないことが、結構あると思いますよ。その人の得意分野に入ると、「おお、こいつも分かっとるじゃないか」と、余裕を持って読み取ってもらえるでしょうが、すぐにはその文章に含まれている深い意味が分からないところも多いと思います。だけど、僕の頭の中では、それは実は全部繋がっているのです。「これ、どういう意味」って聞かれたら、僕は全ての質問に丁寧に答えます。「世の中こう見えてますけど、実はその裏ではこんな力学が働いてんです」とか。そうすると、そんなこと全然関係ない世界だと思っていた技術屋さんでも「なるほど、そうか」となる。そうなったら、その人の幅がザッと広がるじゃないですか。Zoomとかでやれるのなら、喜んで全て無償でやりますよ。

夏野さん、僕はもうお金は要らないんです。おいしいものを食べ過ぎれば糖尿になるし、白い髭も生えてきて仙人みたいなものですから。そうなると、やっぱり世の中の為になりたい。しかし、世の中の為になることは、もうほとんど自分ではできないから、若い人達に何か自分の持っているものをトランスファーして、若い人達にやって貰いたいのです。これが今の私の最大の夢です。

6. 日本の市場と会社の限界
に続く。

『創造的でなければ死んでるのと同じ』  夏野剛✖️松本徹三 対談連載1〜7

1. 地獄を知っている二人!?
2. 迷った時は遠を見ろ
3. 海外から見た日本
4. AIの未来、人類を救うのは!?
5. 知識の幅を広げよう
6. 日本の市場と会社の限界
7. 若者よ、会社や社会をハックせよ!


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