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『創造的でなければ死んでるのと同じ』  夏野剛✖️松本徹三 対談連載 7.若者よ、会社や社会をハックせよ!

2021年10月26日(火)に開催された「Invent or Die - 未来の設計者たちへ:第11回 夏野剛 x 松本徹三」の書き起こしです。
通信業界の黎明期に、ソフトバンクとドコモで活躍。現在、日本の携帯電話の礎を作ったと言っても過言ではない二人。夏野剛松本徹三氏が日本の未来に関して議論します

7. 若者よ、会社や社会をハックせよ!

司会:私は多分若い方に入ると思うのですが。先ほど松本さんがこの本を読んで、これを通して視野を広げてもらうとか、何かと何かを繋げて新しいアイデアを生んでいただきたいとか、若者にそういうことを気付いてほしい、アイデアを出してほしいというお話もありました。私たち若者が、今後日本を変えていく、AIのこの時代により良い日本にしていくために、何かできることってありますか?

松本氏:もちろんあります。それどころか、若い人しかできないとも言えるでしょう。若い人は自信を持って上を突き上げてほしい。

司会:何か信念を持ってという感じですか?

学校や会社は利用するもの

夏野氏:僕は、会社とか、政府とか、学校とか、そういったものに頼らない、自分で切り開く。だって、会社なんか絶対あてにならないに決まってるじゃん。それなのに、結構みんな従順なんですよ。大学なんて、入学したらそれで別に終わりでいいじゃん。だって、みんなそういう学校なんだから。中途半端にみんな真面目だし。悪用って言ったら言い方悪いですけど、会社も学校も組織も、日本っていう政府もハックしてほしいんです。それを利用して俺は何をやる、私はこういうことを実現したいっていうのを利用してほしいんです。利用されるんじゃなくて。だって、利用すべきですよ。そんな一つの会社に一生勤めるなんて、ほとんどあり得ないですよ。自分のキャリア人生の方が、会社の寿命より長いんだから。だから、どうやったらこの会社を、俺は私は利用できるだろうって思ってほしいんです。それで何かやりたいことを。僕はSFが大好きだったんで、SFであるような世界を実現することに何か関わりたいってすごく思ってました。だから、電子マネーとか携帯電話でお金を支払うというのは、みんなSFの世界では通貨なんか使わないから。こういうiPhoneみたいなデバイスに全部機能が入ってて、ポイッて個人認証してお金払ってやるのを何とか実現したいと思って、ほんとにおサイフケータイで実現したもん。それは、たまたま入ったNTTドコモという会社を利用して、俺は何を実現できるかって考えたからです。だから、利用してくださいっていう話です。

司会:ありがとうございます。私がアドバイス頂いた形になりまして。SFとか松本さんのこの作品から、ここまで話が展開するとはちょっと思ってなかったので、すごい面白いお話を聞けました。。

夏野氏:組織って、部活とかも、部のために命を捧げろみたいなこと言ってるやついるけど、違うんです。自分の能力を高めるために、この部が役に立つか立たないかで判断すれば良くて、立たなきゃ辞めて、違う民間のクラブか何かに行ったっていいんだもん。

松本氏:ほんとに今の若い人は、可能性ありますから。使える道具もいっぱいあるし。僕らの若い頃と比べたら、ものすごく恵まれてます。

夏野氏:可能性がいっぱいあるから。

松本氏:ベンチャーにも金を出してくれる人が一応いるし。昔はそんなのあり得なかった。

夏野氏:あり得なかった。昔は銀行借り入れしかなかったんです。

アイデアを実現せよ!

松本氏:それから、あらゆるところに色々な技術があるじゃないですか。自分では何も技術的なインベントをしなくても、今ある技術の組み合わせをインベントするだけでも、仕事はできますよね。さっき私が作った変なものの話をしましたけど、当時はタッチパネルなんかなかったから、タッチパネルみたいなものがあったらなあと随分思いましたが、ないのだからどうしようもありませんでした。液晶やガラスから開発するわけにはいかないのですから。
中国のドローンが強いのは、深圳(しんせん)などに行ったらそれに関連する部品とかソフトとかの小間物屋がいっぱいあることです。日本だって、部品が強かったからトヨタとかが良くなった。今、ソフトもハードも部品がいっぱいあるんです。ということは、1人の人間のアイデアで、大きな潜在マーケットを狙えるチャンスがいっぱいあるということです。僕らのときは、部品がないから、良いアイデアはあっても良いものができないから、大体失敗したんです。今はアイデアがあったら成功確率は高いですよ。

司会:いろんな機会があるということですね。

松本氏:あります。消費者だって多様化してるし。

起業に男女、年齢は関係ない!

司会:今、コメントで40代ですがまだ若いですか? というコメントが来ております。いかがでしょうか?

松本氏:僕はこの人の倍生きているのですから、まだ随分若いですよ。今40代の方って、そのうち15歳ぐらいまでは子供だったじゃないですか。だから、仕事に類する様なことを考え始めてからはせいぜい25年なんですよね。今から私の歳になるまでにはあと40年あるんだから、これまでの1.5倍以上。まだ半分も来てないですよ。若い若い。滅茶苦茶若い。

夏野氏:これは経産省の統計か何か忘れちゃいましたけど、2019年、コロナ前なんですけど、起業する年代で実は一番60代が多かったです。法人代表者の登記する割合は、実は60代が一番多かった。これ、すごいいいことだと思って。できればもうちょっと、40、50で起業した方がいいと思うけど。

松本氏:有利ですからね。

夏野氏:有利だから。

松本氏:それと、女性はいいですよ。僕見てると、女性がやる起業って割と成功率高いと思います。統計は知らないけど。なぜかと言うと、生活の実感からニーズを見ていることが多いからです。クロネコヤマトがいい例じゃないですか。クロネコヤマトは奥さんの方が最初のアイデアを出したんですよね。男はどちらかと言うと、観念的に行くんです。これからの世の中はこうなるとか、ああなるとか。それも必要なんだけど、実際のニーズに結び付いてる方が成功確率は高いですよね。そんなふうに思いません? 女性のやってる仕事って、割と小さい仕事でも成功してるケースが多い。

司会:夏野さん、いかがでしょう。

夏野氏:現実的な落としどころを見つけるっていうことをちゃんとやるから。ただ、人にはよるけどね。人にはよるけど、全体的に言うと、僕は女性の方がビジネスに向いてるって思う機会は、結構あります。社会性っていう意味では、女性の方が絶対社会性が高いので。男性女性っていう分け方はもはや意味ないとはいえ、女性の方が現実的なので。社交性も高いから、起業には向いてると思います。

松本氏:男性的な特質は夢を追うことですね。それは重要なんだけど、落とし穴にはまりやすい。私なんか、落とし穴にはまりまくってきましたよ。

司会:それは深掘りしても大丈夫なんでしょうか?

 松本氏:失敗もしてるし、人にもだまされてます。これだけ失敗して、まだよく生き残ってるなあと思っています。今頃橋の下にいてもおかしくないんだけど。

司会:起業は、お二方がおっしゃったみたいに機会もツールもたくさんあって。今、夏野さんがおっしゃいましたけど、年齢とか、女性男性とか関係なくみんながやろうと思えば、できるような時代ということですよね。

夏野氏:まさに。

目の前の事を120%でやれば道は開ける

松本氏:時代は良くなってますよ。時代にぶつぶつ文句を言うのは、僕、あまり気に入らないんです。国がやってくれないとか、すぐ人のせいにして。

夏野氏:僕結構過去の発言が批判を浴びて大炎上したんですけど。20代とか10代の人たちが日本は格差社会だから格差はなくさないと、みたいなことを言ってる10年前のツイートが取り上げられたんですけど。それぐらいの年齢だったら、むしろ目先のことにものすごい一生懸命取り組んで、何か成果を残してやろうとか、何か頑張る時期なんです。それを社会のせいにして、何もしなかったら何も起こんないっていう意味で、若者なのに格差のせいにしてって。だって、実際同じ20代だったら日本ってほとんど格差ないんですよ。なのに、格差がとか何とか言ってるのを。もうちょっと上になったら、結果的に俺は格差が克服できなかったとか言うのはいいんだけど、若いときっていくらでも、何でもできるし。むしろ、目の前のことを120%やれば道は開けていくんです。置かれた環境がどうだなんて、そんなこと言ってる場合じゃないんです。っていうことを言いたかったんだけど、大炎上して。全然別に差別してるわけじゃなくて、頑張る時期には頑張れよって言ってるだけなんですけど。ほんと、もったいない感じがする。

松本氏:人のせいにするっていうのは一番無意味です。最も非生産的です。人のせいにしたら何か良くなるかっていったら、何も良くならないから。ぶつぶつ言ってるだけ損です。

夏野氏:ならないんです。目の前のことで120%やってれば、5年たった後にこんな違うんです。そこを80%でやってるやつと120%でやってるやつは、全然違うんです。

松本氏:そんな例はいっぱいあるじゃないですか。苦労してる人の方がそれだけ鍛えられるから強くなるのは当然です。いざというときの勝負所で強いから、最後はたくさん苦労をした人の方が勝つわけです。あまりに恵まれた環境にいた人は、最終的にはあんまり成功してないでしょ。当然そういう理屈になるんだから。だから、人のせいにするのだけはやめた方がいい。

夏野氏:言い訳になっちゃうからね。

松本氏:言い訳して得なこと何もないんです。

夏野氏:何も状況変わんないんだもん。

松本氏:言い訳と人の悪口。人の悪口好きな人多いね。Twitterなんか見てたらよくわかりますよ。人の悪口を言っても、そのとき仲間内で盛り上がってうれしいだけで、何の役にも立たないです。

司会:視聴者からいただいたコメントです。有名な方は良いところばかり目が行きますが、失敗したとき、上手くいかないときの生き方、考え方に違いがあるように感じました。あと、1日1日を大事にするという、ポジティブな意見もありました。

松本氏:うれしいですね。失敗しても生きていられるのなら、失敗はすればするほどいいです。失敗したら、やっぱり悔しいから、本当にひどい目に遭いますから、鍛えられますよ。僕は1回も失敗してない人と一緒に難しい仕事なんかする気はしないな。ひ弱いはずです。何かあるとポキッと折れますよ。

司会:ありがとうございます。お二方、今日はSFのお話から、お二人のこれからの生き方に関するお考えだったりとか、日本についてもいろんなお話いただきまして、非常に話が尽きないですけれども、そろそろお時間がやってきましたので。またお二人のお話ぜひ聞きたいですというコメントも来ておりました。今日はすごく充実した対談になったのではないかと思います。夏野さん、松本さん、本日は貴重なお話を、ありがとうございました。


『創造的でなければ死んでるのと同じ』  夏野剛✖️松本徹三 対談連載1〜7

1. 地獄を知っている二人!?
2. 迷った時は遠を見ろ
3. 海外から見た日本
4. AIの未来、人類を救うのは!?
5. 知識の幅を広げよう
6. 日本の市場と会社の限界
7. 若者よ、会社や社会をハックせよ!



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