The WAVE(2015)/誰か息子をタコ殴りにしてくれ

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ノルウェー発のディザスター・ムービー。

あらすじ:舞台はノルウェーのフィヨルド最深部小さな町、ガイランゲル。地質学者のクリスチャンは長年ガイランゲルの地質観測所で働いていたが、石油会社への転職が決まり、住み慣れたこの地から家族で町に引っ越すことになった。引っ越し当日、大規模な崩落の前兆と思われるデータに気づいたクリスチャンは、緊急避難警報の発令を主張するが、オオカミ少年になることを恐れた同僚たちに反対され、警報は発令されなかった。出発を次の日に延ばしたクリスチャン家族だが、その夜、岩壁が急速に収縮し崩壊する。住民たちは、津波が町に到達するまでの10分間で標高80m地点より上に避難しなければならないが・・・

ガイランゲルは架空の町ではなく実在する。

空撮を多用した実際の北欧のフィヨルドの絶景は一見の価値あり。前半は主人公クリスチャンの家族や同僚などの日常風景をゆっくりしたペースで描いていくが、頻繁に差し込まれる北欧の景色がどれも美しく、あまり物語が頭に入らなくても、目が楽しいのでモーマンタイな気分になる。昔だったらヘリコプターからの空撮だろうが、2015年の作品なのでドローンを使ったのかだろうか。絶壁のすれすれを掠めるように飛行するカメラワークは迫力満点だ。

ただしこの映画をコース料理に例えると、メインディッシュは山体崩壊が起こる寸前であり、津波が起こった以降の時間は長い長いおやつタイムである。

正直メインディッシュの山体崩壊の瞬間までは凡百のホラー映画よりもドキドキするので、いっそ津波のシーンをラスト付近に持ってくることはできなかったのだろうかと思うが、それでは父親が家族全員を助けるのは尺的に不可能だし感動的なハッピーエンドにもし辛く、ムズカシイところではある。娯楽映画によくある爆発に次ぐ爆発、トラブルに次ぐトラブル、みたいな飽きさせない展開の脚本は、地味によく練られているなと思った。

さて、津波が発生したときクリスチャンの家族はバラバラで、娘とクリスチャンは昔の家に、妻と息子は妻の務めているホテルに泊まっていた。クリスチャンは娘を連れて車で高台を目指す。一方で妻はホテルの客をバスで避難させるが、客の中にいるはずの息子のソンドレが見当たらないので一人ホテルに戻る。そのとき、気のいい客夫婦(マリアとフィリップ)が、一緒にソンドレを探そうとホテルに戻ってくれるが、結果的にフィリップは妻に殺される。なんでや。

この辺からツッコミが止まらなくなってくる。マリアは、ホテルのロビーで津波に見惚れていた数秒が命取りとなり、流れ込んできた波に押し流されてしまう。これはまぁ本人が見惚れていたのが悪いので仕方ないかもしれないが、真に気の毒なのは夫フィリップである。フィリップは、嫁マリアを失ったあげく、迫りくる水にパニックになってソンドレを沈めようとしたために、主人公の妻によって頭を両脚で固められ溺死させられる。あんまりじゃなかろうか。ソンドレの立場からすると、トラウマものだと思うのだが・・・せめてフィリップは死ぬ前にソンドレをタコ殴りにしても許されたと思う。こいつはホテルの地下でヘッドホンつけてスケボーやってたから警報に気づかなかっただけなのだ。というか、この地下室、何のためにつくったシェルターだったのだろうか。まさか津波用じゃあるまいし・・・え、津波用なの? そのわりには耐久性も遮蔽性もなく扉はすぐに壊れる。あと、家族の中で一番肉体的に強靭なのは嫁だということも証明されるが、特に伏線はない。

前半あれだけ存在感を発揮したのに、緊急避難警報を出したあとはずっとしかめっ面でモニターを見つめているだけのでくのぼうになってしまう地質観測所の面々に対しては、Yahoo!映画レビューや映画.comのコメントが辛辣である。関係機関とはよ連携しろや、10分で80mまで津波が到達する予測があるのにまともな避難場所つくっとらんのかい、そもそも日頃から避難訓練しとけ、等々。東日本大震災の記憶が新しい日本人ならではの厳しいツッコミではあるだろうが、実際、ガイランゲルの人々的に、この映画はどういう受け止められ方をしているのだろうかと気になった。ノルウェー旅行を予約した直後に運悪くこの映画を観てしまったら、怖くなってキャンセルする人も出そうなのだが。風評被害を懸念する人はいなかったのだろうか。

・・・などと、何やかんやツッコミが多い映画だが、みんな結構ツッコミを入れながら楽しんで観ているっぽいので、金曜日の深夜とか土曜日の昼下がりとかの、脳みそをゆっくり休めたいときに見るのをおすすめします。

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