「身から出た錆」を実感した新婚当時の落とし穴
その日も帰宅は午前３時くらいでした。
今から約20年くらい前のことである。製薬会社で営業（MR）をしていた当時は羽振りが良く、使え切れないほどの予算を与えられ、全て使い切ることが美徳とされていた時代でもあった。従って、接待と言う名目で週に3〜４回の頻度で夜の繁華街で遊んでいた。
当時から仲良くしていた同年の他社営業（MR）と連んで、医療従事者との懇話会を高級な寿司屋や鉄板焼き屋でしばしば開催していた。ここまでは良い。
1次会でお開きになるケースは殆どなく、その後は決まって高級クラブかラウンジに立ち寄る。煌びやかなお姉さま達がいる場所です。はじめはあまり気がすすみませんでしたが、医療従事者や友人MRがどっぷりハマっている様子を見ているうちに、自然と自分も馴染んで行った。
3次会ともなると、さすがに我々MRだけになる。締めのラーメンで終われば良いのですが、そうは行かない。反省会と称して再び寿司屋に行ったり、スナックに行ってカラオケを熱唱、全て出し切っていた。それでも何故かキャバクラだけは手を出さなかった。
妻は東京都大田区出身である。大田区と言っても高級住宅地ではなく、蒲田と言うちょっぴり下町。お世辞にもガラが良いとは言い難い。彼女が通った中学校の近くは風俗店が軒を連ねていたようで、比較的免疫があるはずだった。その彼女が何故か「キャバクラだけはダメ」と普段から警鐘を慣らしていた。理由はよくわかりませんが、風俗店の一種だと誤った認識をしていたのだと思います。
キャバクラは疲れる。そんな漠然としたイメージを持っていましたが、ある日、いつも連んでいる悪友のMRが「４次会はキャバクラ行こう！」と言い出した。スナックでアドレナリン全開だった我々は、後先考えずに吸い込まれるように初めてのキャバクラに入店してしまった。
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値段交渉は悪友に任せていたが、入店時は1時間￥5,000の説明だった気がする。酔っていたので定かではありませんが、4名で¥20,000くらいのはずだとざっくり計算していた。その後は誰と何を話したのかはまるっきる覚えておらず、ただはっきり記憶にあるのは、テーブルの上には誰が頼んだのか分からない「たこ焼き」と「フルーツの盛り合わせ」が並んでいた。
1時間半くらい居たのだろうか、お会計の時間が来た。出された金額を見て全員唖然とした。「18万...」全員の財布中の現金を集めても14万しかなく、会社のクレジットカードも使えない。どうするんだ...
話し合いの末、何故か私が個人カードで一旦清算することになった。
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接待で高級クラブやラウンジに行く時はとても楽なのです。煌びやかなお姉さまが顧客の相手をしてくれるからです。また、女性から名刺を頂くことがあっても、入店した同僚や悪友らと相互確認を徹底し、複数のリスクを回避していた。つまり、保管する場所を皆で決めていたのである。
初キャバクラの夜、自分のクレジットカードの請求時期が気になってはいたが、極度の疲労と達成感とで自宅に到着するまでの間、タクシーの中で眠ってしまったようでした。運転手に起こされ、帰宅したのは午前3時過ぎだろう。倒れ込むようにベッドに入り、そのまま深い眠りについた。
3時間の睡眠後、酷い頭痛と吐き気を催しながらリビングに向かうと何やら妻の様子がおかしい。「おはよう」と挨拶をしても返事すらない。テーブルに座ったまま茶をすすっている。この光景を上手く描写できませんが、なんとか感じ取って欲しい。冷たい汗が僕の背中を滝のように流れたのをはっきりと覚えている。
ふと壁に目をやると頭が真っ白になった。
キャバクラで貰った5人分の名刺がピンで貼り付けてある。しかもご丁寧に電話番号まで書いてあるではないか。いつもであればタクシーを降りて自宅の門の前でポケットの中身を確認するのですが、昨夜はクレジットカードのことやら初めてのキャバクラのことで頭がいっぱい。そもそも居眠りをしていたではないか。思い出そうとすればするほど膝が笑った。
何をどのように説明したのか全く記憶がない。1ヶ月後にクレジットカードの請求書が届き、不覚にも妻が先に見てしまった。明細には文字にできないような店名が記載してある。まるで風俗店のような屋号。妻のそもそもの誤解は更にコンクリートで塗り固められた状態になってしまった。
あれから20年...想像にお任せしますが現在に至っています。
なんとか生きてはいます。
最後まで読み進めて頂きありがとうございました。
しょーもない話ですが、記事にすることで少し気が晴れたような気がします。長い長い20年の針のむしろ生活です。
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