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がんと就労に関する心の叫び

日本における現状

ある日突然「がん」と診断されたら、あなたならどうしますか?


平成16年度 厚生労働省研究班 がん患者の就労や就労支援に関する現状をまとめた報告書によると、日本において就労可能年齢(20-64歳)におけるがん罹患者数は22万人であり、がん患者全体の1/3にも及ぶと言う。


この内、がんに罹患した労働者の30%が依願退職、4%が解雇、自営業であれば13%は廃業に追い込まれている。これが僕たちの生活している日本社会の現状です。こんなに悲しい現実を知っていながら放置していて良いのでしょうか?


一方で、仕事を持ちながら頑張って治療の為に通院されている人は全国で32.5万人。(男性14.4万人、女性18.1万人)
意外にも女性の方が多いのです。この中には当然、小さなお子さんを抱えている患者さんも数多く含まれます。


問題点は何か

がんを含め思う病気に罹ってしまう事は誰のせいでもないし、仕方のないことです。ではどこに大きな問題があるのか、社会性と治療性の2つの視点で整理してみたいと思います。


社会性

がんと診断されて「依願退職」するケースや、最悪の場合「解雇」されるケースがある事は先にも述べました。では、「働ける」と「働けない」のボーダーラインは何でしょうか?ここがそもそも曖昧であり、誰もはっきりと教えてくれません。


治療の為、長期入院を余儀なくされ社会復帰出来たとしましょう。その場合、治療前のポジションに元通りに従事出来ますか? 勿論、復職できない場合もあります。当然生活の困窮があったり、治療してしまった事を後悔するケースもあります。


治療

がん治療にかかる費用は、個人で加入している民間保険だけでなく、国民皆保険、高額療養費制度、傷病補償など、確かに日本は諸外国に比べ恵まれている環境なのかも知れません。しかしながら本質的な問題は治療にかかる費用ではなく、配慮にあると考えています。


2020年10月に国立研究開発法人 国立がん研究エンター「患者体験調査」の報告によりますと、がん診断時に収入のある仕事に従事していた人に対して「治療前に就労継続について医療スタッフからの話があった」と回答した人は、僅かに39.5%のみであったと言う。つまり、医療従事者が積極的に就労支援に関与していないことが分かります。


別の調査では、医療従事者が就労支援に取り組むべき上で、支障となっていることを調査した報告では、「時間が不足している」「労働についての知識が不安」が最も多く、次いで「誰に繋ぐかわからない」「医療者のメリットがわからない」などの回答が寄せられている。


医療従事者の逼迫した勤務体系で、一人の患者さんに費やす時間が少なくなっている事は理解できます。しかしなら、労働についての知識が不十分であったり、そもそも誰に繋ぐかも分からない状況が平然と放置されている事実は、とても悲しい気持ちになります。ましてや医療者のメリットがないなど言語道断です。


間接的ではありますが、医療従事者の超絶激しい勤務体系も緩和するべきだと思います。これでは、患者さんの看護以前に、彼ら・彼女らが疲労困憊してしまいます。何とかならないのかなぁ。


働きながら治療をされている患者さんは、自身の治療の為に会社を休んで治療に専念している。つまり、有給休暇を取得して治療を継続しているのです。化学療法を受けた後は、その副作用による強い倦怠感や悪心嘔吐などで復職しにくい実態もあります。医療者は処置をして終了ですが、患者側はその後も副作用と戦いながら働かなくてはなりません。


問題点の整理
✅ 依願退職や解雇されるケースがある
✅ 復職時のポジションが保証されていない
✅ 医療従事者の就労支援の意識が希薄
✅ 医療従事者への教育カリキュラムがない
✅ 医療者と患者側では目線が違う


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解決の糸口

就労と治療の両立支援は、高度化した医療に対応した社会のあり方が極めて重要です。医療者と患者の双方がノイズを上げる必要があります。


医療従事者は患者さんの生活背景を知っておく必要があり、それに応じた配慮が肝心となります。患者さんのニーズが確認できましたら、相談支援センターやソーシャルワーカーさんなど、然るべき場所へ繋ぐことも重要です。また現在の化学療法は必ずしも入院や長時間の点滴が必要な治療ばかりではありません。内服により治療ができるがんもあります。


また、患者側もご自身の生活背景をじっくり相談しておく必要があり、遠慮してはだめです。がん診療拠点病院の中には「平日夜間」「土曜・休日における外来化学療法・放射線」を実施している施設もあります。


医療や治療の技術が進歩しても、肝心な患者さんの生活を支援する体制が不十分では悲しすぎます。製薬会社に勤務して、患者さんのニーズを「拾う」と「繋ぐ」の大切さを痛切に感じます。🌱


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最後まで読み進めて頂きありがとうございました。
たまには深刻な問題も記事にして参りたいと思います。🍀


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