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「新型コロナウイルス 深刻化する母子世帯の暮らし―1800人の実態調査・速報」を発表しました

 シングルマザー支援に取り組むしんぐるまざあず・ふぉーらむおよびジェンダー政策の専門家、研究者らによるシングルマザー調査プロジェクトチームは、新型コロナウイルスの影響によるシングルマザーの就労・生活調査を7月に実施し、その調査結果を速報レポート「新型コロナウイルス 深刻化する母子世帯の暮らし―1800人の実態調査・速報」として発表しました。この調査では、新型コロナウイルス感染症に関連して自身の雇用や収入に影響を受けたシングルマザーが7割超と非常に高いことに加え、自分が感染することで家族のケアができなくなる懸念から、仕事をしていた人の3割が「自発的」に仕事を休んだりやめたりすることを余儀なくされたなど、ひとり親としての不安や休校による子どもへの影響が非常に深刻であることが明らかになりました。

 シングルマザー調査プロジェクトのメンバーで、しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長の赤石千衣子は、今回の調査によって、新型コロナの影響で無収入や収入減になって生活が苦しくなっている実態が明らかになったとし、当団体に寄せられた相談の中には、「これまでも生活がギリギリだったために、あっという間に困窮し、2日に1食に親は食事を減らしたり、親子で雑炊。もう食べるものがない。」という声もあったことを明かしています。コロナ危機以前から、脆弱な状況にあるひとり親が、子どもを育てるのに十分な収入が得られ、教育へのアクセスを保障できるよう、以下のような緊急支援に加えた恒常的な支援の拡充および政策が求められています。

1. ひとり親世帯臨時特別給付金(基本給付と追加給付、8月から給付開始)を令和2年度内に再度給付すること。
2. 児童扶養手当の恒常的な拡充を行うとともに制度から漏れるひとり親がないようにすること
3. 緊急の手当付の就労支援策を講じること
4. 子どもの学びのための環境整備(パソコン、インターネット接続環境など)を行うこと
5. 生活保護制度の自動車保有の制限などをなくし活用しやすい制度とすること
6. そのほか必要な措置

【特定非営利活動法人Gender Action Platform 理事 / 関西学院大学客員教授 大崎 麻子のコメント】
 国連は、平常時の不平等がこのコロナ危機によって拡大されかねないと警告し、緊急対応策はもちろんのこと、中長期的な経済政策、社会政策、教育政策、保健政策等にジェンダー視点を主流化する(=男女への異なる影響を精査・反映させる)必要性を各国政府に対して提言しています。本調査は、雇用/生計手段、ケアワーク、デジタルアクセス等において普段から脆弱な状況にあり、孤立しがちな母子世帯に負の影響が集中する構図を可視化しました。この調査を活用し、「誰一人、取り残さない」政策策定が行われることを求めます。

【立教大学コミュニティ福祉学部教授 湯澤 直美のコメント】
 この調査は、新型コロナウイルス感染症による社会的影響をあぶりだすとともに、感染拡大前から構造的な困難状況に置かれていた母子世帯の実態をもあぶりだしています。そもそもの不安定な就労が雇用や収入の確保に直接的に打撃を与え、臨時一斉休校が家計や栄養摂取を脅かしました。万全な社会的支援が講じられなければ、シングルマザーの過労・心理的ストレス・将来不安が増大し続けるとともに、子どもたちの進学断念や学校中退などを加速させかねず、より一層格差が拡大・固定化しかねません。

シングルマザー調査プロジェクトについて
 シングルマザー調査プロジェクトは、コロナ禍によってひとり親世帯が困窮する現状に問題意識を持った、ひとり親支援団体、ジェンダー政策の専門家、研究者らによって発足しました。脆弱な状況にあるひとり親が、子どもを育てながら十分な給与を得られる安定した仕事に就き、子どもの学びや教育へのアクセスを保障できるよう、緊急支援に加えた恒常的な支援の拡充および政策を実現するために、コロナ危機がひとり親に及ぼす影響を示すデータ収集を目指します。

会見の様子2_20200828


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