兼夫のカネカネ童話①「賢いキツネのお話part2」


今日は、カネカネ童話「賢いキツネのお話しpart2」を記事にします。


キツネのポコがネズミの家に忍び込むのを見計らっているあいだウサギのコチオは自分の隠れ家で考えを練っていました。

「やっぱり自分を賢いと思っている動物をだますのは簡単だな。すこーしチヤホヤしてやって、お前のことが良く分かると理解を示し、そしてプライドをくすぐれば一丁上がりだ。しかもそれが世のため人のためだといえば、そうは疑うまい。さぁーむしり取れるだけむしり取るぞー!」

そのころポコはネズミの家に忍び込んでいました。
「大事な教えを授かるためだ!ネズミなんかがこんなにたくさんライ麦を持っている必要はないんだ!そうだ!コチオさんは『悪いことでは無いんだから堂々とやりなさい』って言っていたな。ぜーんぶライ麦をくすねて帰るぞ!!」

そんなポコの様子を見て、通りがかりのタヌキのカリンが声を掛けました。
「おや。ポコさん。ネズミさんの家で何をしているんです?ライ麦をそんなに散らかして。ネズミさんの大事なものをいたずらしては駄目でしょう!」

ポコは怒って答えました。
「タヌキのカリンさん!!何を言っているんですか!これはネズミのため、みんなのためにやっているんですよ!いわば人助けです!!そちらこそ言いがかりをつけて失礼だ!!」

そんなポコの剣幕に驚いて、タヌキのカリンは足早に立ち去りました。

「やっぱりコチオさんの言うとおりだ!『正しい行いなんだから正々堂々とやりなさい!文句を言うやつがおかしい。』ってのは本当だな!ほれ見たことか!タヌキのカリンは尻尾をまいて逃げていったじゃないか!本当にコチオさんは素晴らしいな!」

ポコはネズミの家のライ麦を全部麻袋に詰めて、コチオのところへ向かいました。

「コチオさん!コチオさん!コチオさんの言う通りライ麦を持ってきました!どうか私に素晴らしい教えを授けてください!」

コチオはもっともらしく答えました。
「ポコさん。さすがですね!あなたなら出来ると思っていました。私の目に狂いはなかった!でも・・途中で大変なこともあったでしょう。文句を言うやつもいたでしょう。でも、それは全てあなたのため、あなたに正しい行いが出来るかを試されているのですよ!どうですか!あなたはやり遂げたでしょう!」

ポコは驚きました。コチオが何もかも見抜いているかのように感じました。
「コチオさん、そうですね!自分にこんな力があるとは思わなかった。コチオさんのおかげです!さぁ!コチオさん教えを授けてくれませんか?」

コチオは腕組みをして少し考えながら言いました。
「ふーむ。ポコさんは素晴らしい・・。教えを受け取るだけの器があるとお見受けしました・・。でも・・。この教えは世のため人のため、多くの動物たちに広めてこそ力を発揮する教えなのです。私はこの教えを1000匹の動物たちに広めてきました。素晴らしいものはみんなで分け合う必要があるのです!そうでしょう?ところであなたはこの教えをどうやって広めるつもりですか?そうだ!私にあなたの仲間を紹介してください!あなたの本気度を見たいのです!あなたならそれくらいたやすいでしょう?」

ポコはコチオが教えを授けてくれないことに少し苛立ちながらも、確かにコチオの言うことも一理あると思いました。
「コチオさん!その通り、良いものは広く広めてこそ価値があります!私もそのお手伝いをしたいのですが・・。でも・・。まずは私にその教えを授けてくれませんか?あとは私がみんなに広めますから・・。」

コチオはものすごい剣幕で怒鳴りました。
「ポコさんっ!!あなたを見損ないましたっ!!私がこの教えを授かったのは、ある立派なウサギの先輩からなのです。こうやってあなたが私から教えを受け取れるのは先輩ウサギのおかげなのです!この有難さが分からないなんて・・。あなたはその先輩ウサギのようになれる素晴らしい機会なのに・・。もういいです。あなたは一人で生きておいきなさい!」

ポコは慌てふためき言いました。
「コチオさん!今のは独り言です!忘れてください!!コチオさんの言うことはごもっともです!私は教えをみんなに広めたくて仕方がありません!!明日、必ず仲間を連れてきます!」

コチオは微笑みながら言いました。
「やっぱりポコさんは賢い方だ!私の言うことが理解できるのだから!では明日、10匹の仲間を連れて来てください!」
ポコは驚いて答えます。
「10匹ですか?いやぁあのぅ、明日はみんな用事があるとかで・・10匹はちょっと・・」
コチオは畳みかけます。
「そうですか。では何匹連れてこられますか?無理しなくていいのですよ。ポコさんが決めてください」
ポコはおずおずと答えました。
「うーん。そうですねー。うーん。2匹なら・・」
コチオは首をひねって言いました。
「たった2匹?隣村のスカンクのユリコさんは3匹、連れてきましたよ・・」
ポコは負けたくない一心で言いました。
「うーん。4匹!4匹仲間を連れてきましょう!お安い御用です!」
コチオはうなづきながら言いました。
「ポコさん。4匹ですね!私はあなたを信じていますよ!!あなたが出来ないはずがない!では明日楽しみにしています!」

コチオが去っていく後姿を見ながら、ポコは大きなため息をつきました。
「はぁ~あ。明日までに4匹の仲間か・・。ただでさえ仲間と離れて居場所が無いのに。誰を誘えばいいんだろう・・。」

続く。


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かしこ。


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