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無意識にがまんさせていた歌への気持ち

「歌手になる」とここでは宣言しているものの、ちっとも前に進まなくて、オレオレ詐欺みたいになってるなぁと、noteの更新もままならずになっていました。6月末にレコーディングを終えて、さぁ歌を歌っていくぞ!と意気込んでいた7月。今までやってきた仕事の分野で、立て続けにオファーがあり、歌どころではなくなるほど多忙になってしまい、息切れを起こしながらなんとか走ってきました。歌がやりたい!という気持ちがあるものの、歌に関わる時間をなかなかとることが出来ないジレンマ。そんな中でも、歌が作りたい!と飛び込んだ歌作りのオンライン講座で、歌を一曲創り出すことが出来ました。歌を仕事にしたい。だけれども今の私に求められることは違う。目の前に与えられた仕事をこなすことで、日々の時間が過ぎて行く。いつかのために作った歌は、それから3か月間眠り続け、仕上がることなくお蔵入り。「歌手になりたい」その夢はまだまだ遠く、はりきって始めようとしていたインスタ配信もなかなか思うように進まず、音楽との距離がどんどん広がってしまっていました。

目の前の仕事はずっとずっとやりたかったこと。私が働けばみんなが喜んでくれる。感謝もされる。ずっとなりたかった「みんなの役に立つ自分」になっているのに、なんでこんなに心はすり減っていくのだろう。「歌いたい」でもそれは別に求められてもいないし人前に出せるほどのレベルでもない。だからどうしても後回しになる。お金にもならない。だけど歌の時間がないだけで、私が私でなくなっていくことを感じていた。

そんな生活が3か月過ぎた頃、限界がきた。あらゆることがパンクして、いっぱいいいっぱいになって3日間寝込んでしまった。もう決めよう。もう辞めよう。もうこれ以上ひとのために時間を使いたくない。自分のためだけに時間を使いたい。自分のために生きたい。人のために生きること、それが善きことだと思っていたけど、どうやら私には無理だ。人から期待されていること、私が得意な仕事、いったん手放そう。そう思ったら心がほっとゆるんだ。でもそれを人に言うのはとっても怖かった。だけど言うしかない。私は仕事を辞めると、ドキドキしながら伝えた。がっかりはされたけど、私の想いは比較的すんなりと受け入れてもらえた。私は仕事を大幅に減らすことになった。

実際問題として、収入はなくなるし、これからどうなるか分からない。だけども心は反対に安堵していた。自分のために時間を使うこと。歌や音楽に触れさせてあげること。ついつい自分に我慢させていたことをやっと終えられる。それだけで、お金のことなんかふっとんで、ただただほっとしたんだ。

3つ掛け持ちしているうちの一つの仕事をまずは今月半分に減らしたおかげで、滞っていた”歌作り”の時間をようやくとることができた。自分でメロディと歌詞をつくったけど、そのままになっていた曲を仕上げるべく、知り合いのシンガーソングライターさんにアレンジを依頼しに行ったのだ。その方はもう10年歌手活動をしている大先輩。曲のアレンジはメニューには出していないけれども相談したら受けてくれくれたのだ。楽譜もないまま、ピアノの前でメロディを口ずさみ、それを楽譜に起こしてくれる作業をした。私の紡いだメロディにピアノのコードが重なって、それはそれは美しい調べとなって私を包んだ。堰を切ったように胸から何かが溢れだした。気づいたら涙がこぼれていた。

「ああ、私、こうやって音楽にただただ浸っていたかったんだ」無意識に制限していた自分に気づき、その制限が随分と自分を窮屈にさせていたことに驚く。目の前に現れるメロディと和音の響きは、私が作った曲なのに、生き生きと息を得たように勝手に育っていく。感動で涙がぽろぽろとこぼれた。もう何もいらないと思った。歌手になることもどうでもいいとさえ思った。私はただただ音楽に飲まれていたい。身を委ねてメロディの海に溺れていたい。びっくりするほど、私は音楽を欲していたのだ。そしてそれを制限していたんだ。どんなにか自分を痛めつけていたのだろう。こんなにもこんなにも魂は渇望していたのに。どうしてやらせてあげなかったのか。切なくて切なくて。でもこの思いに気づくことができた喜びで、涙が止まらなかった。

「歌手になること」それは今でも夢だけど、でもそれを仕事にしなくてもいいとさえ思えた。息をするように、音楽を生み、音楽を歌い、音楽とともに生きていきたい。音楽が第一にあって、それを支えるために仕事をするならいくらだって頑張れそうな気がする。自分で歌を産んで、それにシンガーソングライターさんの力で命を吹き込まれた現実を目の当たりにしたとき、歌手になるという夢は「歌いながら生きる」ことだったと気づいた。有名になりたいのでもなく、自分の歌を称賛してもらいたいのでもなく、ただただ自分の細胞が喜ぶメロディとハーモニーに心を震わせていきたいのだ。早く歌をリリースしてデビューしたい、しなきゃと思っていた気持ちはどこかに消えてしまって、ただただ音楽に浸る喜びに触れた瞬間に、私はどうしようもない満足感と幸福感で満たされたのだ。

私が作った曲は「満月」という曲だった。満ちた月のように、すべては完璧に美しく、幸福感でいっぱいで、自分自身の輝きで美しく存在する。自分の在りたい姿を歌にしていた。自分が作った歌で、迷いしぼんでいた自分自身が救われた。もう誰のためでもない。自分のために歌を作ろう。歌を歌おう。ずいぶんと我慢させてきちゃったね。もう許そう。歌うことを。音楽に生きることを。たとえそれが一文にもならなくても。私はきっと満足だ。

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