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人生で後悔しないために

人生ってやりたいことをどれだけ実現させていくかゲームなんだと思う。

いっこ”やりたいこと”に挑戦すると、それで終わりではなくて、また新たな”やりたいこと”が湧き出てくる。そう、胸の奥の奥にしまっておいた、大切にしていて開けたくない箱の存在に気づいてしまうのだ。

思えば私の人生はやりたいことちゃんとやれてきたと思っていた。勉強は好きだったし、行きたい学校にも進学できて、希望していた学科でその時その時の興味の赴くままに動いて、卒業後には希望の職について、経歴だけなぞれば順風満帆な人生だったと思う。ところが、気持ちがいつまでも満たされない。好きだと思っていた仕事も思うようにはうまくいかなくて、行き詰まっていた時、妊娠・出産して、お母さんとしての第二の人生が始まった。

子育ては楽しかった。なんでも夢中になる私は子育ても例外ではなく子供のことにのめり込んだ。子どもの成長は嬉しく子どもとの生活は楽しかった。だけどまだ何か満たされない思いが残る。なんだろう?自分探しの迷路に迷い込んだみたいだった。

人は生まれる前に「これだけはこの人生でやっておこう!」ということを決めてくるらしい。私はそれを探していた。最初は仕事。次は子育て。それなりに”やりたいこと”を実現してきたのに、”これ!”というものに出会えていない感じ・・・まだ見つからない。と思っていた。

そうは言っても、本当の本当にやりたいことは、人生の最初にもう分かっていたみたい。でも封印してしまっていた”それ”。結局、向き合うことになるのだ。でもそれがとても怖い。なんでだろう。とても怖い。

小さなときから歌ばかり歌っていた。歌っていられたら幸せだった。

人生でやりたいこと。それを考えるときいつもふっと浮かんでくるのが”歌うこと”だった。歌うだけならひとりカラオケや、趣味の合唱なんかでやってられたらそれで満足だったはずなのに。カラオケしたり歌を習いに行ったり、それなりに歌を楽しんでいると思っていたのに。ある日、ふと、思ってしまった。

「歌手になりたい」と。

打ち消しても、打ち消しても、湧き上がってくる想い。私はお金がもらえるほど歌が上手いわけじゃない。それに人前に出るのはすっごく苦手。ひとりでスポットライトを浴びる歌手になれるとは到底思えない。

そうだ、昔やっていた合唱の経験を生かして、結婚式なんかで賛美歌を歌えるバイトでもないかな、と気軽にスマホで検索した。「歌」「仕事」

そしたら、検索結果の広告欄に出てきたこんな文言が目に飛び込んでしまったのだ。

新人ボーカルオーディション。経験不問。年齢49歳まで。参加無料!

何度も何度もそのページを読んだ。隅から隅まで。胸が高鳴った。同時に「怖い」「自分なんかが」「バカみたい」「いい年して」と、否定的な声が頭の中をめぐる。何度も何度も応募ページを開いては閉じたりを繰り返した。応募はとても簡単で、応募フォームに簡単な個人情報を入力してクリックするだけで済んでしまう。これをクリックしたら・・・本当に簡単なことなのに、クリックすることができない。結局、応募するまでに2週間かかってしまった。

でも、応募したからといって合格するわけじゃなく、人生経験一つとして応募するだけしてみてもいいじゃないか!と勢いでクリックしてしまった。あぁ~、何やってるんだろう。でも歌手になりたいという気持ちは否定したってしょうがないんだから、せめて可能性のひとつでも叶えさせてあげてもいいじゃないかと自分を許すことにした。このオーディションの年齢制限は49歳。40歳を超えた今、もう躊躇したってしょうがない。

応募先からオーディションの日程の連絡がきた。もう、逃げたって仕方ないし、ただの体験!と思って、日時を調整して、長野県の自宅から高速バスに乗って、東京渋谷へと一人向かっていきました。わくわくといっぱいの不安を乗せて。





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