詩『病院の桜』

題名
『病院の桜』
(隠しテーマ・春爛漫)


あなたがいない初めての春です
去年は病院の駐車場で桜を見ました
押す車椅子さえ
長く座れなくなっていたけれど
私がどうしても見せたくて
連れて行った

あなたはにっこりと笑って
「きれーねぇ!」って言うと
疲れたように目をつむって眠った
私は残された時間に焦っていて
あの頃はいろいろ無理をさせていた
奇跡が続いて
死なないんじゃないかって
本気で考えてた

スマホに
その時の写真があります
頭をななめ前に傾け
眠そうな目をしています
後ろには桜が写っています

あなたはピンク色の服が好きでした
他の写真もみんなピンクばかりです
実は、亡くなって
写真を見ることができませんでした
やっと見ました
どの写真も笑顔とビンク色です
まるで「春爛漫」です

今年は私の検査で病院に来ました
駐車場の桜は満開でした
なんとなく選んだ今日の服装は
ピンク色のトレーナーです
私はもう少し長く生きたいのです
服を握りしめ
桜に願掛けをしていました
ごめん…と呟きながら



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