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【エッセイ】野球が好きで良かった

 4月7日、今シーズン二度目の野球観戦に行ってきた。
 東北楽天ゴールデンイーグルス 対 福岡ソフトバンクホークスの三連戦最終日。
 イーグルスはここまで前カードから続けて三連敗中。対ホークス戦ではまだ勝ち星が無かった。
 宮城県で生まれ育ち、球団創設時からずっと東北楽天ゴールデンイーグルスを応援している我が夫。
 「オレが連敗を止める!」
 そう意気込む夫とともに、前の週に引き続き、夫婦で球場に足を運んだ。


 

2024.4.7 楽天モバイルパーク宮城

 今回は、内野席バックネット裏のちょっと贅沢なシートでの観戦だった。
 これまでは、私も夫も野球観戦の際は外野席もしくはポールぎりぎりの位置の内野席だったので、バックネット裏のあまりの近さに夫婦でビックリ。
 私達が球場に入った時は、ちょうどソフトバンクホークスの打撃練習中だった。
 一昨年まで北海道日本ハムファイターズにいた近藤健介選手が目の前に現れるとついつい心の中で頑張れと応援してしまう私は、北海道生まれ北海道育ちのファイターズファンである。いやでも今日はイーグルスの応援だ。首位のホークスにイーグルスが勝てばファイターズの順位も上がるんだし。

 この日の練習で印象的だったのは、ホークスの山川穂高選手。チームの打撃練習が終わった後も、ベンチ前で一人黙々と素振りをしていた。
 埼玉西武ライオンズの主力選手として活躍していた昨シーズン、山川選手は不祥事によって公式戦無期限出場停止処分が下されていた。昨年12月に福岡ソフトバンクホークスへの移籍が発表された際にも、様々な声があった。
 批判されることをしたのは事実なのだろうし、それをかばおうとは思わない。
 けれど、黙々と練習している山川選手を見ていると、こういう姿も伝わってほしい、という気持ちが自然とこみあげてきた。

 みんな、野球が好きで、頑張ってるんだ。


 試合は3回にソフトバンクに2点先制されるも、4回と6回にイーグルスが1点ずつ得点して同点に。
 2対2で迎えた7回表。
 「あれ見て!」
 球場内にソフトバンクホークスの応援歌が流れる中、夫がビジター側応援席を指さす。
 応援歌に合わせてホークスの応援旗がはためくソフトバンクホークスの応援席には、
 
 『応援してます!東日本』

と書かれた大きな横断幕が掲げられていた。

 
 「ありがたいね、本当に。」

 夫の言葉には、実感がこもっていた。
 宮城県石巻市で生まれ育った夫は、13年前のあの日の津波で実家を失っている。

 「良かったね。嬉しいね」

 あの日をこの地で体験していない私もまた、心からそう思った。
 こういう時、野球が好きで良かったと、あらためて思う。

 応援するチームは違えど、みんな、野球ファン。
 東日本大震災も、コロナ禍も、一緒に乗り越えてきた。


 両チームとも中継ぎが好投し追加点の無いまま同点で迎えた9回。イーグルスは今シーズンから抑えに転向した則本昂大投手を同点の場面で投入。ランナーを出すもしっかりゼロに抑えたその裏、ここまでノーヒットだった鈴木大地選手のタイムリーで東北楽天ゴールデンイーグルスがサヨナラ勝ちを収めた。
 ヒーローインタビューはもちろん、鈴木大地選手。
 その言葉の一つ一つから、ほっとした思いと、嬉しさと、そしてチームの仲間への感謝の気持ちが伝わってきた。
 今シーズンのチームの雰囲気の良さが、伝わってきた。


 同じ日、我が北海道日本ハムファイターズは残念ながら埼玉西武ライオンズに11-1の大敗。二日前にはいよいよ単独首位かと思われたものの、気付けば貯金ゼロ。
 でも、すっかりベテランになった中島卓也選手が代打出場で今季初打席初安打を放つなど、嬉しいこともあった。
 順位を気にするのはまだ早い。まだシーズンは始まったばかり。


 何より、全力で頑張っているのは、どのチームも同じ。

 さぁ今週も頑張ろう。しっかりと自分の仕事をしながら、好きなことを全力で楽しんでいこう。


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