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私はこれからも田中将大投手を応援します

 2024年12月16日、スポーツ報知は、東北楽天ゴールデンイーグルスを自由契約となった田中将大投手を読売ジャイアンツが獲得すると報じた。


 嬉しかった。
 今は東北・宮城在住とはいえ生まれも育ちも北海道の私は、北海道日本ハムファイターズのファンであると同時に、駒大苫小牧時代から田中将大投手を応援している。
 2013年の東北楽天ゴールデンイーグルス日本一の瞬間は、テレビの前で号泣した。
 2023年、ファイターズの新球場・エスコンフィールドの開幕戦。対戦相手はイーグルス。先発は、田中将大投手。結果はイーグルスの勝利。
 ファイターズが初戦を飾れず悔しかったものの、新球場での初勝利投手が田中投手になったことで「マーくんなら、北海道だし、まぁいっか」とあの時につい思ってしまったのは、私だけではないと思う。



 今シーズン、田中投手の登板は、1度だけだった。
 昨シーズン終了後の手術の影響。チーム事情。様々な事情があったのだろう。
 「プロ」である以上、擁護するのはむしろ失礼かもしれず、批評や批判の声は仕方ないかもしれない。

 とはいえ、「批評」や「批判」と「誹謗中傷」は、違う。
 全く違う。

 スポーツ選手であれその他のジャンルの著名人であれ、仕事におけるプロである前に、一人の人間である。どんな理由も、他人に誹謗中傷・罵詈雑言を浴びせて良いという理由にはならないのだ。
 けれど、シーズン前もシーズン終了後も、田中投手への罵詈雑言は酷かった。ファンから見ても腹が立つような酷い記事やコメントを、いくつも目にした。
 その末の、自由契約のニュースだった。


 2021年、田中投手の日本復帰とほぼ時を同じくして宮城に移住した私は、対ファイターズ戦以外では、田中投手だけでなくイーグルスというチーム全体を応援するようになった。
 球場にも、度々足を運んだ。特に今シーズンは、安楽投手のパワハラ騒動からのごたごたで大変な状況の中、それでも監督に就任した今江新監督を応援したい気持ちもあって、夫婦で何度も観戦に出かけた。
 けれど、2年契約だった筈の今江監督がシーズン終了後に突然解任されたことや、安楽投手のパワハラ騒動に一切コメントしないまま退任したくせに今江監督解任後につらっとフロント復帰した石井GMへの不快感もあって、シーズン終了直後は正直、イーグルスを応援する気持ちが少し薄れかけた。
 それでも、その後開催されたサンドウィッチマンさん率いるサンド軍と楽天イーグルスOBチームのスペシャルマッチでの「よくこれを球団が許可したな」とビックリするようなOB登場やタブーな発言連発などもあり、やっぱりイーグルスも好きだ、来シーズンも応援しよう、との気持ちが戻りつつあった。


 田中投手の自由契約が報じられたのは、その後のことだった。


 悔しかった。
 けれど、田中投手が現役でいる限り、どこに行っても絶対に応援しようと心に決めた。




 メジャーリーグから日本球界に復帰後、田中投手にはかつての力は無くなった、という声がネット上にはある。
 年俸に見合った成績ではない、と。
 でも、本当にそうだろうか?

 「田中ん時、もっと打ってやればいいのに」
 「んだんだんだんだ!」
 「可哀想になぁ。せっかく戻って来たのに。」
 「んだがらぁ〜!」

 あれは、2021年の梅雨時だったろうか。所用で珍しく路線バスに乗った私の後ろで、ご婦人三人組が野球トークで盛り上がっていた。盛り上がるとはいえ時はまだコロナ禍。バス内での会話はご遠慮くださいとアナウンスされていたこともあり、マスク着用のひそひそ話。けれど、あの「んだんだんだがら」連呼は、はっきり聞こえた。
 そしてその声に、私も思わず大きく頷いていた。

 
 勝ち数だけを見れば、田中投手の復帰初年度の2021年シーズンは4勝9敗。
 2022年シーズンは9勝12敗、2023年は7勝11敗と、いずれも勝利数は一桁。メジャー帰りでチームの大黒柱としての活躍を期待されたピッチャーとしては、残念ながら物足りないと言わざるを得ないかもしれない。

 しかし、2021年の復帰以降の試合を実際に見ていたファンとしては、少なくとも復帰後2年間の印象は「物足りない」と感じるようなものではなかった。
 それは、あの時の推定年齢三人合わせて二百歳超えのご婦人達の言葉にも現れていた。このことは、はっきりと書いておきたい。

 実際、2021年の成績を細かく見ていけば、登板数は23試合。そして、シーズン終了時点の防御率は3.01である。この年は、シーズン後半で失点が増えたためにこの防御率となったが、中盤までの防御率は堂々の2点台だった。
 まして、勝敗が付いたのはたった13試合である。
 23試合も登板した上に、1試合当たりの失点数が1~3点のQuality Startの基準を満たしているのに4勝しか勝ち星を得られず、勝敗すらつかなかった試合が10試合もあったということだ。
 酷い。
 「2011年の勝さんかよ!」と思ってしまうハムファンである。

(注:2011年シーズン初旬、当時の日本ハムファイターズの武田勝投手は、毎試合1~2失点に抑える力投を見せるものの味方打線の援護が全くなく0点に抑えられて負け投手になるという試合が続き、防御率1点台なのに5連敗を味わった。あれは今思い出しても胃が痛くなるしそれ以上に胸が痛む。あれで心が折れなかった勝さんは凄いと思う。引退後の今も大好きだ。)

 さらに見ると、2022年シーズンも24試合に登板しての、防御率3.31である。
 「野手、打ってあげてよ!」と言いたくもなる。

 けれど、田中投手が野手を責めることは無かった。
 それは、田中投手の公式YouTubeチャンネルをずっと見て来たファンなら知っている筈である。


 もちろん、野球とは、投手が1点も失わなければ引き分けはあっても負けることの無いスポーツではある。まして、チームのエースとなれば、3連戦の中で勝ち星を計算できるピッチャーとしての役割が求められるのが常だろう。そこで勝ち星が付かなければ、チームは負け越しまっしぐらともなりかねない。エースとは「勝って当たり前」が求められる過酷な立場なのだと思う。
 とはいえ、この成績で「終わった」だのなんだのと口汚く責められるのは、あまりに酷ではないか。
 私はむしろ、抑えても抑えても打線の援護に恵まれず勝ち星が付かなかった2021年や2022年シーズンも、自身の公式YouTubeチャンネル等で決して野手陣や勝ち星を消してしまった中継ぎ以降のピッチャー陣を責めようとはしなかった田中投手を、人格者と思わずにはいられない。



 いろいろ思うところはあるけれど、田中投手がいなくなっても、私は(ファイターズの次に)地元の球団・イーグルスのことも応援するだろう。
 それに、田中投手が読売ジャイアンツに行っても、田中投手と東北との縁が切れるわけでもない。
 これまでに積み重ねてきた日々が無くなるわけもないし、まして、あの日本一の記憶が薄れることなど決して無い。

 それに、読売ジャイアンツは、2011年の東日本大震災以降、日本野球機構(NPB)としての支援活動だけでなく、読売新聞グループとしての東北への復興支援活動もずっと継続しているチームである。


 ジャイアンツには、東北に縁のある選手やコーチもいる。
 かつてジャイアンツで捕手として活躍し、2023年から母校である東北学院大学硬式野球部の監督を務めている星孝典さんが宮城県の名取市出身であることは地元の方々にはよく知られているだろうが、今シーズン、ジャイアンツの二軍外野守備 兼 走塁コーチを務めた鈴木尚広コーチは、福島県相馬市の出身である。
 ご実家の焼き肉店には、今もジャイアンツファンが多数訪れているという。

 OBだけではない。
 2017年ドラフトで阪神に入団し、2023年の現役ドラフトで読売ジャイアンツに移籍した馬場皐輔投手は、宮城県塩竈市の出身である。
 そして馬場投手は、目標とする投手に田中将大投手を挙げている。
 もしかしたら、今回の移籍を誰よりも喜んでいるのは馬場投手かもしれない。
 馬場投手と田中投手、二人の活躍が今から楽しみだ。



 これから契約の詳細等が報じられれば、また口さがない者たちが騒ぐだろう。この投稿にも、罵詈雑言が寄せられるのかもしれない。中傷だけが目的のアカウントたちにとっては、ファンの声など格好の獲物でしかないのだから。

 けれど、誰が何を言おうと、私は田中投手に応援の声を発し続けようと思う。
 山ほどの罵詈雑言に埋もれようとも、心からのエールを送り続けたい。
 それが、ほんのわずかでも、復活への力になることを信じて。

 私はこれからも、田中将大投手を応援する。



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