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塩釜の「元祖・おとうふかまぼこ」を工場隣接の直売店でいただく

 先週の土曜日。
 天気はあいにくの雨模様だったが、「この天気ならむしろ観光地は空いていて買い物しやすいのではないか」と考えて、夫婦で二週間ぶりの買い出しドライブに行ってきた。
 まずは、日本酒を買いに松島まで。雨模様、しかも午前中の早い時間とあってか、いつもなら観光客で賑わっている通りもさほど混雑はしていなかった。
 お目当てのお店でゆっくりと買い物を楽しんだ後、つまみも何か少し買い足そうと以前から気になっていた塩釜の蒲鉾店に寄ることにした。
 松島方面から国道45号線を仙台方面に車を走らせ、JR仙石線の高架沿いに海側の道に入ってすぐ左折したところにあるのが、おとうふかまぼこの元祖・直江商店さん。


 通常の蒲鉾は魚のすり身で作られているが、そこに大豆を加えて独特の甘さと柔らかな食感を出しているのが「おとうふかまぼこ」。
 大豆(豆腐)を加えたふわふわ食感のかまぼこは、宮城県内をはじめ東北各地で様々な商品が販売されているが、「おとうふかまぼこ」の元祖はこちらの直江商店さんだという。
 工場隣接の直売店があるのは知っていたが、入るのは初めて。
 雨天、しかも午前中だったせいか、塩釜も観光客らしき人の姿はまばら。こちらの直売店も駐車場は空いていて、ちょっとドキドキしながら店内に入る。すると、若い女性の店員さんが「いらっしゃいませ!」と明るく迎えてくれた。
 曇り空でも自然の日差しが柔らかく差し込む、明るい店内。入って正面のショーケースには様々な種類のおとうふかまぼこが並べられ、その向かい側の棚にはおでん缶などの地元・塩釜の物産品も並んでいた。
 あれこれ目移りしてしまいどれにしようか迷っていると、先ほどの店員さんがご試食どうぞと二種類のおとうふかまぼこを出してくれた。プレーンタイプと、「おとうふかまぼこ お好み焼き」という商品だという。
 早速いただく。

 超美味っ!

 口に含めばふわふわひんやり、そしてしっとりじゅわっと優しい甘さ。噛めば魚の旨味と野菜の甘みとが口の中に広がる。夫婦で顔を見合わせるも、互いに「美味っ!美味っ!!」しか言葉が出てこない。語彙力を無くした夫婦に小さな紙コップで冷たいほうじ茶まで出してくれる店員さん。接客タイミングも神である。
 試食した品はもちろん買うとして、他も気になる。全種類買いたいが、なんせ夫婦二人きりの生活。蒲鉾は日持ちが心配でもある。
「これ、何日くらい日持ちしますか?」
 恐る恐るたずねると、
「冷蔵庫で10日以上お日持ちしますよ」
 にっこり笑顔でそう言われ、ひと安心。

 結果、当初の「つまみも何か少し買い足そう」のレベルではないまとめ買いとなった。

包装紙も可愛い
夫婦二人には明らかに買い過ぎだが後悔は無い。
というかこの美味さなら10日も経たず完食確定である。


 上から時計回りに、焼いた状態で販売されている「おとうふかまぼこ」、生姜入りの「おとうふかまぼこ 小丸生姜」、試食で大感激した「おとうふかまぼこ お好み焼き」、季節限定の「おとうふかまぼこ たけのこ入り ふくふく」。
 これらを全部2個ずつ購入し、この日は帰宅した。


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 その夜の晩酌。
 まずは、焼いた状態で販売されていたものをグリルで軽く炙ったのと、小丸生姜をいただく。

 どちらも美味しい!
 左側、炙ったほうのおとうふかまぼこは、口に含むとふわふわ食感と香ばしさのコントラストがたまらない。噛めばシャキシャキのタマネギの甘みがお魚のすり身の美味しさとともに口の中に広がる。ふわふわとシャキシャキ、美味しさの波状攻撃にノックアウトされてしまう。
 そして、右側の白いのが小丸生姜。一袋に3個入りなのも嬉しい。こちらは冷やしていただいたのだが、口に含むと生姜の香りがふんわりと広がった。しゃきしゃきタマネギの美味しさに生姜の爽やかな香味がプラスされ、お魚とタマネギと生姜の幸せなコラボについ笑顔になってしまうような嬉しい美味しさ。口の中が幸せで楽しい。

 さらに、翌日。
 今度はたけのこ入りのをいただいたのだが、これがまたビックリするくらい美味しかった!

たけのこ入りのおとうふかまぼこ
「ふくふく」の文字も可愛い
たけのこだけじゃなく三つ葉も入ってる!!!


 
 たけのこのシャキシャキは期待通りというか予想していたのだが、まさかの三つ葉入り。これがまた、たけのこと相性抜群の美味しさ!
 三つ葉の風味とたけのこの甘みに、口の中が天国。
 味といい食感といい、「私的・おとうふかまぼこ選手権」があったら推しまくる一品である。
 あまりの美味しさに箸が止まらず、危うく夫の分まで食べそうになってしまった。

 そして、もう一品。
 直売店でも試食させていただき大感激した「おとうふかまぼこ お好み焼き」を。

 
 こちらはもう、なんというか、パーフェクトな一品。美味しさと食感の楽しさ、プラス、お野菜たっぷりのバランスの良さ。この一品で魚と大豆と野菜を一度にいただけるのが凄い。これだけで立派なおかずにもなるし、日本酒のアテにもビールのツマミにも最高の美味しさである。
 直江商店さんのホームページを拝見すると、おとうふかまぼこの主原料のスケソウダラは、捕れたての魚を鮮度が落ちないうちに船上ですり身にして新鮮な原料を使用しているという。また、かまぼこに入っているタマネギは100%国産で、食感と風味を活かすため毎日製造分だけをカットしているとのこと。だからこんなにシャキシャキしていて美味しいのかと納得。
 これは我が家の定番に加えたい。良い品と出会えて良かった。

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 今回買い物をしてきた直江商店さんの直売店には、入口横に小さなテーブルと椅子が置かれた休憩スペースがあった。
 その休憩スペースに置かれていた小さなコルクボードには、何枚かの写真が、説明文とともに展示されていた。
 瓦礫に埋め尽くされたその写真はすべて、2011年3月11日の東日本大震災当時のこのお店の様子だった。
 こちらのお店では、先代の社長さんが大きな地震の際は津波が来るので避難するよう徹底していたおかげで人的被害は無かったとのこと。けれど、店舗も工場もすべて津波で流されてしまったことが記されていた。

 帰宅して直江商店のホームページを拝見したところ、震災から半年後、2011年9月のブログが今も残っていた


 私は、宮城県内の企業やお店を紹介する際には、その商品そのものの良さを伝えたいと思っている。
 いや、宮城県内だけでない。
 東北各地のお店や商品について文章で紹介する際には、そう心掛けている。
 震災から復興したから凄い、のではない。
 被災地であろうと無かろうと関係ない。どこにも誰にも引けを取らない美味しさや素晴らしいものだから、知って欲しい。紹介したい。
 品質の良さや美味しさで勝負している方々に対して「食べて応援」という言葉は、失礼にもなりかねない。
 いつも、そう思っている。そう思うことが、生産者の方々への礼儀だと思う。

 けれど、

 そう思い、出来るだけ震災のことには触れずにいようと心掛けてはいるけれど、それでもやはり、あの時の困難を乗り越えての今なんですよ、ということも、知って欲しいと思ってしまう自分もいる。

 全てを流され、ゼロからではなくむしろマイナスからの再出発を余儀なくされたお店が、今、こうしてビックリするほど美味しい商品を日々作り続けてくださっている。
 あの震災から復興した会社なのですよと、声高に叫ぶことも無く。
 先述のコルクボードの展示も、休憩スペースの窓際にさりげなく置かれているだけだった。
 明るい店内の中心にあるのは、今の美味しい商品の数々、今の塩釜の品々だった。


 そんなお店だからこそ、
 あの日のことと、
 今、
 その両方を、たくさんの人に知って欲しい。

 関係者でもなんでもないのだけれど、県内の、特に海側の地域で美味しいものと出会うたびにそう思ってしまうのも、正直なところである。

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 そんなことは抜きにしても


 宮城に来てからこれまでの間、様々なメーカーの美味しい笹かまぼこをたくさんいただいてきたが、今回、直江商店さんで「おとうふかまぼこ」という美味しい一品を知って、さらに食べる楽しみが広がった。
 この美味しさ、全国の方々にも是非体験していただきたい。
 おススメです。

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