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野球応援で縁起を担いだら晩酌のつまみが増えていた

 私は、北海道日本ハムファイターズのファンだ。

 しかし、宮城移住後はなかなか球場に足を運ぶことが出来ずにいる。
 その代わり、結婚後はテレビのある暮らしになったこともあり(独身時代はラジオが日常だった)、最近はテレビ観戦でファイターズを応援する日々を送っている。


 昨日(6/4)は、テレビ中継がある事に夫が気付いて試合の途中からテレビをつけてくれた。
 試合は、2回表のファイターズの攻撃中だった。1-0でファイターズがリードされている展開の中、2アウト1,2塁というチャンスの場面。
 おおっ!これは同点のチャンス!
 と思ったが、打順はピッチャーの北山。

 え?なんで?北山って二刀流だっけ?

 交流戦のビジターゲームだと理解するまでに数秒。そして、北山には申し訳ないのだが、この場面は、打てなくてもしゃぁないよなぁ、と思いながらちょっと台所に向かった。
 テレビをつけたのがちょうどお弁当用の作り置きにきんぴらごぼうを作り始めた時で、台所に食材や包丁が出しっぱなしになっていたのだ。

 その瞬間

 「打ったー!!!!!」

 テレビから声がした、と同時にテレビを見ていた夫も声を上げた。

 ビックリして振り向くと、北山投手のめちゃくちゃ誇らしげな顔が映っていた。なんと、プロ初ヒットがタイムリー安打となり1-1の同点。

 実は今シーズン、私がテレビ観戦してファイターズを応援している時には、こういうことが何度もあった。

 私がちょっとテレビから目を離したタイミングで、ファイターズにタイムリーが出たり、私がちょっとトイレに行ったタイミングで、ファイターズの選手にホームランが出て逆転したり。

 偶然である。
 たまたまである。
 プロの選手が戦ってる試合の結果が、たかだか一人のファンの不運ごときに左右される筈がない。
 私ごときの運の悪さがプロ野球チームの勝敗に何か関係あるかもなどと考えること自体、プロに対して失礼極まりない。

 日頃の私なら、そう思う。

 でも、
 ファイターズに関しては、
 妄想だろうがこじつけだろうが、勝ちに繋がるんなら試してみたい。

 私はテレビの音を聞きながら、台所に立ってきんぴらごぼうを作り始めた。勝て、打て、守れと念じながらゴボウを刻んで水にさらしたところで細川のタイムリーツーベース。1-2勝ち越し。

 2回裏、相手チームの攻撃中にゴボウと人参を炒め始めた。フライパンの音がやかましいとテレビの音が聞こえないので、いつもより弱火でじっくり炒めている間に3回表の攻撃へ。
 また2アウト1,2塁のチャンスの場面。今度は打席に野村。
 相手ピッチャーは同期の選手、というアナウンサーの声。
 テレビ見たい。
 でもガマン。
 頑張れと心の中で祈りながら完成したきんぴらごぼうを保存容器に入れようとしたら、野村選手、レフトスタンドへの3ランホームラン。


 「今日は大丈夫だよ。ファイターズ勝つよ。」

 そう夫が言ってくれた。
 自分でも、もう今日は祝杯モードに切り替えて大丈夫かなぁとテレビの前に座った。

 直後、ジャイアンツの坂本にタイムリー。
 2-5。


 「まだだ、まだ終わらんよ」

 追いかける側のようなセリフを呟きつつ、私はふたたび台所へ向かった。
 何か手を動かさねばと、明日のおかず用に冷蔵庫で出汁を取っていた干し椎茸を取り出す。
 外は晴天。煮物よりひんやりおかずが欲しくなる天気だったが、私はにんじんの残りと半端に残って冷凍してあった豚こま肉、買い置きしてあった高野豆腐をことことと煮始めた。
 ラジオのようにテレビの音を聞きながら、煮物がいい感じになった6回表。
 怒涛の猛攻。
 北山また打った。
 細川スクイズ。
 逆輸入の加藤くん今日も打った。
 マルティネス押し出し。

 気が付けば、2-9。

 こうなると、縁起を担ぐのが楽しくなってきた。攻撃の勢いに乗って、冷蔵庫に半端な数だけ残っていたジャガイモがあったのを思い出し、フライドポテト用に下茹で開始。油を使うんなら一緒に揚げちゃえと、先週末に冷凍して2枚だけ残っていたダルマガレイも解凍して天ぷらの準備。
 フライドポテトと天ぷらを揚げている最中の8回表、万波のタイムリーツーベース。
 ついに、二けた得点3-10。



 試合がファイターズの勝利で終わる頃、我が家のテーブルの上には、誰か親戚でも来る日のような品数のおかずが並んでいた。

中央上から時計回りで
豚こまと高野豆腐の煮物、フライドポテト、ナメタガレイの煮付、
ダルマガレイの天ぷら、にらのお浸し、きんぴらごぼう


塩釜仲卸市場でまとめ買いして冷凍しておいたナメタガレイ。美味しかった!


 試合終了後、前夜から煮付にしておいたナメタガレイを電子レンジで温めて晩酌開始。
 ちなみにナメタガレイは、宮城ではお正月の御馳走にもなっている、縁起の良い魚である。


 縁起を担ぐなら、こんなにあれこれたくさん作らずとも、ナメタガレイだけで良かったのではないだろうか。


 とりあえず、イーグルス惜敗で寂しそうだった夫が、にぎやかな食卓を見て喜んでくれたので良しとした。
 冷蔵庫・冷凍庫に残っていた食材で作ったおかずばかりだったが、どれもビールと日本酒に良く合う味付けになっていたのはさすがだと自画自賛。
 夫もご満悦。夫婦円満サイコー。


 でも、食費がかさむようになっては大変なので、縁起をかつぐのはほどほどにしようと思う。


 買っても負けても、美味しく食べて明るく暮らすのが一番だ。


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