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ドラマ『体感予報』と初めてバーレスク東京に行った話。〜性の消費?多様性?〜

最近ニュースを見れば「ジャニーズ」の話題だ。
ジャニー氏の性加害問題について。

小学生の時、ジャニーズが大好きだった。
クラスの友達との共通話題のほとんどがジャニーズのグループで、とにかく新曲が出たら紙に書いて通学中に歌ながら覚えるくらい大好きだった。青春だった。

なので、今のニュースがとても苦しいし、今の事態をどう飲み込めばいいのか分からない。

それとまた同じような出来事。
わたしが大好きだった劇団の主宰がセクハラで訴えられた。
知らなかった。
わたしが観劇したことで、知らずの間にわたしも加害に加担していて、彼女を苦しめていたのではないか…
わたしの何かの行為が、知らぬ間に誰かに加害しているかもしれない…..

振り返れば、あの時聞いて元気づけられたジャニーズの曲たちも、誰かの被害の上で成り立っていた可能性があるかもしれない…..

考えだすと、怖くて眠れない。

映画「怪物」を見た。
映画「福田村事件」を見た。

日本社会、そして、自分のことが自分でどんどん怖くなる。

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「人」。それから「消費」について。

トイレットペーパーは消耗品だけど、人は消耗品ではない。
お米は消費するけど、人間を消費してはいけない。

でも気づけば、わたしは今、「樋口幸平」をめちゃくちゃ消費している。

以下、BLドラマ『体感予報』の話。

わたしはこのドラマを見て、イケメンをイケメンとして消費している。
彼がどういう生い立ちで役者を目指そうとしたのか?そもそも役者なのか?アーティストなのか?今何歳なのか?出身はどこなのか?何も興味がなかったのだ。ただ、ドラマ上でイケメンであることだけが必要で、わたしはそのイケメンな要素だけを求めて、消費している。

だから別に彼でなくても良かったのかもしれない。
偶然、わたしが「暇だな〜、ドラマ見ようかな〜」と思ったタイミングで、開いた配信サイトに表示されていて、偶然クリックして、そこに写っていただけなのであるから、運命も感じなければ必然でもない。
別に彼を知らなかった人生であっても、わたしは今の彼を知っている人生となんら変わりはない。

彼は自分がわたしに『消費』されていることをどう思うのだろうか?

BLドラマは今やイケメン俳優への登竜門だと言われているみたいだが、主演は誇らしいものなのだろうか?
「夢はBLドラマに出る俳優です!」などと言って、俳優を志す人なんていないと思うから、彼にとっては知名度と経験値を手に入れる通過点に過ぎないのであろう。だから、わたしに消費されているということに、酷く嫌悪感を抱いているであろう。
そして、そう思うと同時に、自分自身のことが大嫌いになる。

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先日、会社の女性の先輩に『バーレスク東京』に誘われた。
先輩はいつも、バーレスク東京の中にいる美女の一人を追いかけていて、彼女を『推し』だと語る。

そんな場所は、アングラで欲求不満な男性たちが女性を求めて集まる場だと思っていたけど、女の先輩が言うのだから大丈夫であろう…と軽い気持ちで足を踏み入れた。

が。

やはり、際どい衣装を身にまとい、それに釘ずけになる男性の視線とiPhoneのカメラ。
目の前の女性を見るよりも周りの男性客を見て、一気に気持ち悪くなってしまった。

“ 女性をこんな公の場で、性的に消費している….. ”

自分には耐えられない空間だと思った。

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しかし。
ショーの舞台はラストスパート、みんなが立ち上がって、声を出して手を挙げるよう促される。

この時、わたしの感情は想像もしていない方向へ動いた。

楽しかったのだ。

先輩とわたしたちと出演している女性たちで肩を組んで揺れた。

とても楽しかった。

綺麗で、美しい女性たちが目の前でハイタッチを求めている。



ああ…….。
全てわたしが間違えていたんだな。



彼女たちをどこかで「普通の昼職につけなくて、だからこのようなアングラな世界でしか働けなくて、男性に性的な視線を向けられることでしか自分の価値を見出せない、可哀想な人」だと無意識に軽蔑していのかもしれない。

全て間違えていた。

わたしにはあの笑顔はできないし、それは、どんなに着飾ったとしても、整形して完璧な美貌を手に入れようと、あのように立ち振る舞うことはできないであろう。

そして、それを魅力的で美しくて素敵で、
とてもかっこいいと思った。

わたしの考えが浅はかだった。
彼女らは、男性にどう消費されているかなんて、多分考えていないし、そもそも自分が消費されているなんて微塵も感じていない。むしろその逆だ。
野球が好きだから、野球選手になりたい。コーヒーが好きだから、喫茶店で働きたい。それと同じことで、ただ、自分で好きなこと・やりたいことを仕事にしているだけなんだな……


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気づけば、バーレスク東京での男性観客の視線は、わたしも家で、一人テレビの前でBLドラマを見ている視線と同じではないかと思った。

一人かある程度公の場であるかの違いなだけ。

男性は圧倒的にスーツ姿の観客が多い。
彼らも日々、真面目に働いて、時には自分が社会に消費されているのを感じて、それに救いや癒しを求めて集まってくるのだと思う。


わたしと同じだ。


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やはり、瀬ヶ崎瑞貴は樋口幸平でなくてはならなかったのかもしれない。

いや、『かもしれない』ではなく、そうでなきゃいけなかった。

この動画を見ながら、今ならそう思う。

原作者の手紙の文章を聞いて、目を潤ます彼の姿が眩しい。

本当に、樋口幸平さんに出会えてよかった。

今までの自分がとたんに恥ずかしく思える。


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「多様性」

世の中はこの言葉にやけにうるさい。
誰かが言う、その辺りの道端でよく聞こえてくるような表面的な”多様性”はわたしにBLドラマ「体感予報」をアングラ化したり、バーレスク東京から引き離すものだったんだな…
真の“多様性”は、体感予報やバーレスク東京を楽しんでいるわたしの心の中あるもので、瀬ヶ崎瑞貴、樋口幸平さん、演者の女性たち、観客の男性・女性たち、すべての人に対して、生きていることを賞賛するものであるのだと思った。

よし、明日も頑張って生きよう。

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