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石葉(神奈川・湯河原温泉)宿泊記*2016年9月

季節の美食と上質な温泉で日頃の疲れをリセットできる宿


「石葉」は、JR湯河原駅から山の方へ車で10分ほど行った山の中腹にあります。温泉街のメインストリートの国道から狭い道に入り、坂をどんどん上っていきますが、ギリギリ車一台分の道幅しかなく、対向車が来ない事をひたすら祈りながら車を進めました。宿に到着すると、すぐにスタッフの方が出てきて車を誘導してくださり、荷物を預かってくれます。のれんをくぐると仲居さんが三つ指をついて丁寧に出迎えてくれました。

[客室]シンプル&ソリッドな心地の良い空間

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宿に入るとすぐに客室へ案内され、お部屋でゆったりとチェックインします。今回泊まったのは「連山」という和室10畳に広縁がついたお部屋で、源泉掛け流しの内風呂がついています。部屋は無駄な装飾を排除したソリッドな空間で、純和風ながらも洗練された雰囲気です。チェックインの際に「灰皿を使うかどうか」の確認があったので、おそらく喫煙も可能なのかと思いますが、消臭がしっかりされており、お香も焚かれていたのでタバコの匂いはまったく気になりませんでした。

客室は全9室あり、客室付き温泉の無いリーズナブルなお部屋から、4名まで泊まれる離れまで、人数や好み、眺望に合わせて選べます。

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「連山」は大浴場へ行く階段のすぐそばにあり便利な一方で、防音対策はされていないため、夜中に大浴場へ行く人の足音や戸を開け閉めする音が部屋まで聞こえて、時折目が覚めてしまいました。

浴衣は1人2枚ずつ、帯は平帯と兵児帯の2種類がそれぞれ用意されていました。浴衣とは別にナイトウェアも用意されていたので、寝ている間に浴衣がはだけるのが気になる方も安心です。女性用は丈の長いスリーパー、男性用はツーピースパジャマでした。

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シャンプーと基礎化粧品は、客室付き温泉、大浴場ともにすべて「MARKS & WEB」のものでした。客室のお風呂に備えられていたシャンプー、コンディショナー、ボディソープはミニボトルです。客室には基礎化粧品の用意はありませんが、フロントに連絡すればフルボトルのセット(クレンジング・化粧水・保湿液)をすぐに持ってきてもらえます。

[温泉]名湯・湯河原の源泉掛け流しを思う存分堪能

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源泉掛け流しの客室風呂は、1人で入るのにちょうどいい大きさです。お湯は無色無臭で60度の源泉が蛇口から常に少しずつ出ていて、いつでも適温で入れて快適そのものでした。檜の湯船はどこにも黒ずみなどなく、手入れが行き届いているのが一目でわかります。

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大浴場は客室が並ぶ棟からさらに山肌を上がった、敷地内で一番高い場所にあります。石の階段を十数段、下駄を履いての上り下りになるので、足が弱い方や高齢者は若干大変かもしれません。階段に自信のない方は、客室にお風呂のあるお部屋を選ばれると良いでしょう。

大浴場は午前0時に男女の浴室が入れ替わり、翌朝の10時半まで夜間も入る事ができます。こちらももちろん源泉掛け流しです。

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脱衣所へ上がる三和土に打ち水がしてあったのが印象的でした。大きな2面の窓がある明るい脱衣所には、おしゃれなベンチやソファが置かれていて、ここに座って湯上がりに冷えた明日葉茶を飲みながらひと休みできます。

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内風呂は大きな窓のそばにあり常に開け放してあるので、大変解放的で気持ちよく、庭の緑を眺めながらゆったりとお湯に浸かる事ができます。また、露天風呂も木々に囲まれた心地よい空間ですが、季節柄、蚊がたくさん飛んでいました。蚊取り線香が何か所も焚かれており、一応の対策はされていましたが、こればかりは自然のことなので仕方ないですね。内風呂、露天風呂ともに、3〜4人入れば窮屈に感じるくらいのサイズですが、よほどの混雑時でなければストレス無く入浴を楽しめるかと思います。私が宿泊した日は満室だったこともあり、いつ行っても誰かしら入浴中で、貸切状態というタイミングはほとんどありませんでした。

[食事]ミシュラン獲得の味わいをゆっくりお部屋で

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食事は、夕食・朝食ともお部屋でいただきます。こちらの宿はミシュラン2つ星を2度獲得しているとのことで、とても楽しみにしていました。

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正統的な懐石料理で、濡れ箸が供され、椀ものの蓋にはきちんと霧が吹かれていました。料理が出されるタイミングは、先付から八寸がやや早く焦ってしまいましたが、この時点で食事のスピードを読んで調整したようで、その後はベストなタイミングで提供されました。

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料理は、名残り鱧と松茸が入った御椀や、メイチダイと秋鯖のお造りなど、夏から秋への季節の移ろいが見事に食材で表現されていました。ただ惜しむらくは、全体的に高レベルではあるものの、強烈な印象に残るような料理が無かったことです。こちらの期待が大きすぎたのかもしれません。。。

夕食時、この宿を一代で築き上げたという女将さんが、部屋に挨拶にお見えになりました。泊まる旅館によっては、チェックアウトして宿を後にする際に初めて女将らしき方の姿を見かけるという事もしばしばあるので、私たちのような一見客の部屋にも女将さんが直々においでになったのはとてもうれしかったです。後日、丁寧な直筆のお礼状が送られてきたり、お話をしてみても穏やかで品のある女性で、女将さんの人柄を慕って訪れる常連客が多いというのも頷けます。

チェックアウトも部屋で済ませ、車の用意が出来次第、声をかけていただきます。大浴場以外で他の宿泊客と出会う事もなく、見送りも他の方と重ならないよう最後まで配慮されているように感じました。

華やかな演出や、過剰なサービスとは無縁で、どちらかといえば質素な佇まいの宿ですが、女将さんや仲居さんの笑顔とおもてなしで、温かい気持ちになれる素敵な場所です。温泉にゆったりと浸かり、季節を感じるおいしい料理に舌鼓を打ち、日頃の疲れを静かに癒したい。そんな気分にぴったりの旅館でした。

※写真と内容は2016年当時の情報です。ご了承ください。


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