「異人たちの館」 感想
こんばんは。墓です。今回も読書感想文を書きます。
前回の「その日、朱音は空を飛んだ」の読書感想記事と同じように、今回も書店先でなんとなく気になって手が伸びたものを一晩でが〜〜〜っと読んだ上での文章になります。
前回は読んですぐの時間に記事を書いたのですが、今回は読んでから一日置いて書いてます。
というのも、あまりこの作品から情熱を感じられなくて…多分、私には刺さらなかったんだな。というのが正直な感想です。けど、「どうして私には刺さらなかったんだろう」と疑問に思ったので、それも含めて振り返っていきたいなと思います。
まず、この小説を手に取った際の帯が「超発掘本!」とあり、書店の店員さんがこの本を読んで欲しくて書店員になった旨が書かれていました。おそらく書店の方々の熱い推薦で増刊が決まり、長年の時を経て現代に再販された作品なのだと理解しました。
あとがきを見たとき、作者自らの口で「叙述トリック」と書かれてました。叙述トリック…にしては初心者にも優しい内容だったなと思います。読者が推理しながら読めるタイプのミステリーだったけど、展開や真相を見てみるとどちらかというとサスペンスっぽいなという印象です。
途中までは確実にミステリーです。ただ、ラストはサスペンスだなあと思いました。多分一番の視点主である主人公ポジの島崎潤一郎が亡くなってから、彼の周りにいた人間による群像劇に見えたからだと思います。
主人公ポジの島崎潤一郎が死に、読者が謎を追う形からスポットが小松原淳に代わり、謎を知る形に変わっていくラスト。最後の最後で小松原が島崎のゴーストライターになる、という展開からまたどんでん返しで一番のゴーストライターは島崎の母親だった!という…胃もたれが起きるんじゃないか?????????レベルの急展開。
登場人物の少なさから「中年の女性」が二人しかいない。小松原の母親と島崎の母親だけ。だから読者の中にも尾崎愛が誰なのか気づいた人はいるんじゃないかな…私は気づかなかったです。
裏テーマに「母親の激重感情」でもあげてんのかってくらい母親に翻弄される作家の男たちと、ミステリーでは定番となりつつある男を翻弄する美人枠のユキ。
ユキの存在が、なんというか、曖昧だったな〜〜〜〜〜〜…
とびきり美人。童顔に対してプロポーションがいい。この辺でハーフを疑う人が出てきて、譲司=ジョージを疑う人がいればいいのかなという伏線レベルの役割しかなかったんじゃ…
途中、島崎潤一郎が「ユキも自分のことが好きなはず」と思ってるシーンを見て、(イヤイヤ騙されてるだけだって…!)と思い込んでた私、最後に婚姻届のシーンで(え!?!?!?!ユキ、ガチで潤一郎が好きなの!?!?!?!?)と目ん玉飛びそうになりました。ユキがガチで島崎潤一郎のことを好きだったとしても、島崎視点の解釈でしか物語中では描写されてないので、最後の最後に「まあ確かにそうゆう理由ならユキも潤一郎のことが好きかもしれないけど…」みたいに思わせる地の文はあったんですけど、それでもパンチが浅く、ユキの存在が基本的に小松原淳の人生で唯一介在してきた他者というレベルでしかなかったのが残念………。
ヒロインなのかもしれないけど、ヒロインというには弱くて、悪女というには島崎がそう捉えてなさすぎたというか…美人という設定がもったいなかったような……いや、わからん。ユキを見た人々が彼女に惚れてく設定は良かっただけに、小松原の人生を脅かしたのもわかる。
普段、ミステリー小説で美人を見ると「黒幕」を疑うレベルでそうゆうのばっかり読んできた反面、ユキがただのヒロインで終わった本作に疑問を抱いてしまってるのかな〜と思います。ユキ……ううん…。
ただ、面白いのは、島崎潤一郎の小説をいじった母親と、小松原淳の小説をいじったユキ、という二人が最後まで生き残っているという点ですかね。この辺りがサスペンスみあると思います。謎の解明よりも、謎が明らかになった後の登場人物の動向がフューチャーされてるのがサスペンスっぽいなあと。
他の方の感想はどうなんだろうと思い、読書感想サイトを見たとき、その中に「長編サスペンスミステリー」という単語があったんですね。これを見たときにハッとしました。
この小説が長編にしては浅いな…という読了感不足。長編をうたうには物足りないな…という不満足感。これらが私の感想として「うーん、異人たちの館は微妙だったな」と思わせるのかもしれません。
時系列を見れば、たくさんのことが起きてたんですけど、そのたくさんのことを俯瞰して見すぎた結果、あまり没入できなかった感はありました。
「この謎を追いたい!」と思わせるより「この真相が面白い!」という方が刺さった方はいるんじゃないかなあ。
私は何かと「この謎を追いたい!」で読み進めるタイプなので、途中で読むのをやめて私だけの謎にとどめておこうかなと躊躇したレベルで微妙でした。悲しいです…。
けど、この内容に対してタイトルが「異人たちの館」というのはすごく面白いです。タイトルが既に小松原家が異人の集まりである、とうたってるみたいで面白い。
結果的に、「とんでもない家族だな〜小松原家…」という話でした。少なくとも私はそんな感じで読み終えました。
英タイトルが「ghost writers」なので、ニコニコしちゃいましたね。作家志望の方ほどこの作品は刺さるんじゃないかな。主に負の感情の面で……。
おわり。