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collaに聞かれた「新人だった頃にやらかした失敗談を教えて」という問いへの回答

Q.(colla)新人の頃にやらかしたおもしろ失敗談を教えてください

A.(ボク)
確か私が年の頃27歳くらいだったでしょうか。郵便小包の配達から、Web制作会社に転職をして1年くらい経ったある日のこと。

ボス「このシステム、納品してきて」
ボク「納品ですか?」
ボス「C/Sシステムだから先方にServerを確認して、Visual Studio使ってこのCD-Rに入っているソースコードをdirectory構造参照してやって」
ボク「何言ってるか、わからないんですが。クラサバ?ビジュアル?ディレクトリー?」
ボス「四国ね。広島からフェリー乗って。俺忙しくていけないから」
ボク「しま??」

当時私はスキルシートを集めて、提案できそうな現場にエンジニアを提案する「いわゆるSES営業」をやり始めたばかりでした。もちろん、プログラムを書いたこともなく、制作したシステムをテストしたこともなく、ましてや納品どころかVisual Studioなんて初めて聞いたよって状態だったのです。

とは言え。行けと言われたら行くしかありません。よくわからないままCD-Rと、インストール手順書をカバンに入れて向かったのでした。朝早くに新幹線に乗り、昼過ぎには広島県三原の駅に。そこからフェリーを2つ乗り継いで、とある島にたどりつきました。
簡単にシステムを説明すると、Client/Server型で、当時は珍しくガラケーのアプリを連動したものでした。

現地に到着した私は、現場の担当者に「このPCがサーバーになるものです」と説明を受けました。
スタートです。ハジメテのオツカイが始まりました。

Visual Studioなるものを入れて、Wordの手順書と交互ににらめっこしながらCD-Rにあるナニカをインストールをしていきます。12〜13にわたる手順をひとつひとつ乗り越えて、よくわからないコマンドを入力し、うまく入ってるかどうかもわからないまま、最後手に取ったガラケーのアプリを起動します。

「まったくうごかん」

ボクの背後にはお客さんとなる課長さんやら部長さんに加えて、実際の発注元(元請け)の社長さんと部長さんが勢揃い。初日は12〜13の手順を何度も繰り返してやっては「まったくうごかん」というルーティーンを10回はやりました。

3〜4回のところで「動かないの?」「大丈夫?」「どうしたの?」と口々に声をかけてくれていたおじさま達が、ひとり、またひとりと消えていきます。とうとう、「そろそろ事務所を閉める時間だよ」という声をかけられました。その主任というおじさんは、ボクのうしろに4時間は寄り添ってくれていたと思います。

正直マジ焦る。焦りまくりです。焦る通り越してもはや無。無の境地。最後のほうはゾーンに入ってたかもしれません。主任のおじさんは優しくボクに「明日は大丈夫ですかね?」と聞きました。ボクは「はい」と答えました。

現場近くの宿泊所に着いたところで、せきを切ったようにボクは電話をかけました。前段のルーティーン中も何度かかけたのですが「今忙しいから無理」と言うボスに対して。

ボク「なんすかこれ!できるわけないじゃないですか!ぜんぜん動かないっすよ!まったく!手順通りに入れてるつもりでも、どこまでうまく言ってて何がうまくいってないのかもわからんすよ!」
ボス「はははははwマジかwでも大丈夫、俺の作ったシステムは完璧だから、動かないのはお前のせいw」
ボク「なるほどですね」

特に根本的な解決がなされないまま、納品レビューとなる当日の朝が来ました。朝9時に昨日半日は鎮座していた事務所に行き、昨日とおなじ椅子、おなじマシンに向き合います。

昨日とおなじようにVisualStudioを起動して、昨日とおなじようにインストールを試みます。

「うごかん。まったくうごかん」そうです、うごかないのもおなじ。

元請けの社長さんに別室で詰められ、エンドの部長さんにも「状況教えて」と代わる代わる声をかけられます。まわりにいたおじさま(課長さん、主任さん)はざわざわし始めました。実際、納品レビューとしては大失敗・・・これはもうお手上げだと。しっぽ丸めて帰ろうかなと、それしかないよなと思ったころ。

PHS『ピロロロロロ・・・』

ボス「ちょっとしんや、そのサーバー、本当にサーバーですか?って聞け」ボク「サーバー?パソコンのことですか?パソコンはパソコンですか?って聞くんですか?」
ボス「いいから一字一句間違えずにそのまま聞け」

ボク「◯◯さん(主任)、そのサーバー、本当にサーバーですか?」
主任「そうだと思いますが、、、念の為確認しますね」

10分ほど経った頃、知らない顔のおじさんがもうひとり増えたところで

「すみません、そのPCはサーバーではありません。こちらのPCに引っ越ししたのです」という発言が。
ボクが昨日今日と20回は繰り返しインストールの素振りをしていたPCは、ただのPCでサーバーではなかったのです。

まじびっくり。何がびっくりか。サーバーの意味もわからんボクが納品作業にひとりで来ていることと、そのボクが「ここはびっくりしておいたほうがいいんだろうな」という勘がぴったり当たっていたこともあわせて。

おなじようなビジュアルでおなじような色のPCを指差して「これがサーバーです」とおっしゃいます。

「なるほどですね。」

私はシームレスに脊髄反射で答えます。当時のボクはとりあえず「なるほどですね」ということを身につけていました。当時のボクにとって「サーバーだろうがマイケルだろうが、とりあえずこのPCにもう一回素振りしたらいいんだよね」と気づくのには数秒かかりませんでした。

20回ほどの素振りを繰り返したボクは、かつてのSES営業ではありませんでした。スキルシートを右から左に受け流す技とおなじように、立板に水が流れるようにVisualStudioを入れて、ディレクトリ構造に沿ってソースファイルを入れていき、スムーズにクライアントPCでの動作を確認した後、手に持ったモバイル端末でダミーの写真を数枚撮影し、その撮った写真がエクセルファイルに描画されることを確認したのでした。

ボク「できました。ご確認ください」
みなさま「ありがとうございました」
ボク「こちらこそありがとうございました」

昨日今日と6時間くらい素振りをしていた甲斐あって、サーバーとなるPCへのインストール作業はスムーズに実施され、レビューも完璧でした。先方のみなさまからも、その数時間のボクの作業(本当はやみくもな素振り)を見ていたのもあって「大変失礼いたしました・・・」と言葉に後ろめたさを滲ませながら仰っていただきました。

この時新人であるボクは「いえいえ!全然、、こちらこそ早い段階でご確認ができず申し訳ありませんでした」と、かなり本音でごめんなさいと思っていたのですが意外にも謙虚に伝わり、好感度を高めたのでした。

陸から離れていくフェリーに乗った頃、ボクは「サーバーって元って意味なのかな?」…と、そもそもの意味についておぼろげに理解するのでした。

今となってはいい思い出です。

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