珈琲人ダブルドラゴン〜おせっかい旅情編〜
「畜生。変わんねぇな」
どこまでも優しい珈琲だった。一口で虜にする強く華やかな一杯ではなく、路傍の名もない花めいて。
旅のドリップ屋(珈琲を淹れる者)をしながら訪れた海辺の町に喫茶テルミヌスはあった。
店主、夏日星ルリとは旧知の仲だが、俺のことを覚えていなかった。
「ルリは、ノラ猫のようにふらりとやってきたのさ。記憶を失ったままね」
バーで隣に座る女が言う。テルミヌスの管理人、マギーだ。
「原因は?」俺は地サイダーを片手に問う。
「断片的にわかるのは」マギーはスコッチを口