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電磁気学① 電磁気学とは何か


電磁気学とは

電磁気学とは,電気と磁気に関する学問です。具体的には,点電荷にはたらく“Lorentz (ローレンツ)”という新たな力を導入するものです。

$$
\boldsymbol{F}_\text{Lorentz}=q\boldsymbol{E}+q\boldsymbol{v}\times\boldsymbol{B}
$$

……$${q}$$ってなんだ??
$${\boldsymbol{E}}$$ってなんだ??
$${\boldsymbol{B}}$$ってなんだ??

以下で簡単に説明します。

電荷

物質を細かく分けていくと,陽子,中性子,電子に分割することができます。陽子は正の,電子は負の電気を帯びた粒子[荷電粒子]とされますが,そのもっている電気の量[電気量]の絶対値は偶然等しく,これを”電気素量$${e}$$”とよびます。
多くの物質では,陽子と電子の個数は同じで,物質全体では電気量が0になります。

ここで,電気素量を基準にすると,時間変化しない電磁場がかかっている空間では,力を測定することで,電荷(電気を帯びたもの)の電気量を正負含めて決定することができます。この電気量が$${q}$$,電荷の速度が$${\boldsymbol{v}}$$です。

電場と磁場

$${\boldsymbol{E}}$$は“電場(の強さ)”,$${\boldsymbol{B}}$$は“磁束密度”または”磁場”とよばれる物理量で,基本的には位置と時間によって決まるものです。

ある位置,ある時刻における$${\boldsymbol{E}}$$と$${\boldsymbol{B}}$$をちゃんと求めるためには“Maxwell(マクスウェル)方程式”というものが必要になりますが,その話はまた次回に回すとして。
今回は,ある時刻における平面上の電場$${\boldsymbol{E}}$$と磁場$${\boldsymbol{B}}$$は簡単に描けますよ,というお話だけ。

電場の方向を表すような線と磁場の方向を表すような線を,それぞれ”電気力線”,”磁束線”といいます。
これらの線は,以下の条件を満たすように描けばよいです。
①電気力線は正の電荷から出て負の電荷に入る矢印。磁束線は,くるくるとループするような矢印(向きや場所は,実は今の段階では決まらない)。
②電荷から出入りする電気力線の本数は,その電荷の電気量に比例する。
③枝分かれしない。
④線自体は,ゴムのように縮もうとする。
⑤線どうしが,できるだけ反発するように描く。

この条件を満たすように,電気力線の例を描いてみました。
(矢印の▲は線の途中に描くのが普通ですが,面倒なのでPowerPointの矢印を使ったため終点にいます。)

大きさをもたない(点電荷)ような,同電気量の正電荷,負電荷が,
少し離れておかれているときの電気力線のイメージ。

また,下が磁束線の例です。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:VFPt_magnet_B.svgより。
左が磁石のS極,右が磁石のN極です。

Newton力学との違い(空間)

話は変わりますが,電磁気学が基本原理としているのは,“局所性”です。「ある場所で起こる現象(電荷が受ける力)は,その場所の近くにある情報だけで決まるべきだ」という考え方のことで,現代物理学の根幹をなす考え方のひとつです。
(“近く”などと曖昧な言葉を使っていますが,ご容赦ください……)

結果として,Newton力学とは異なる空間の捉え方が必要になります。
Albert Einstein (アルベルト・アインシュタイン; 1879-1955)の特殊相対論は,電磁気学における空間を力学に取り入れたものです。

相対論への橋渡しとなる電磁気学の世界。
一緒に見ていきましょう!!

演習問題


電気力線の図で,適当な領域をぐるっと取り出したとき,その中に入る電気力線の本数と,外に出ていく電気力線の本数はどうなっているか。
また,磁束線についても数えてみよう。
(ヒント:例えば電気力線については,正の電荷を含むとき,負の電荷を含むとき,電荷を含まないとき,電荷を含むが電気量の合計が0のときの四つに場合分けして調べてみよう。)


電気力線:正の電荷のみを含むときは出ていく本数の方が多く,負の電荷のみを含むときは入ってくる本数が多い。領域内にある電気量の合計が0のときには出ていく本数と入ってくる本数はつりあっている。
磁束線:出ていく本数と入ってくる本数は常につりあっている。

この結果は次回説明するGaussの法則につながります。

今回はここまで。
お読みいただきありがとうございました!

以下の数学的準備(準備中……)に目を通していただけると,理解の助けになると思います。
・極限と微分,積分
・微分方程式
・ベクトル,行列とベクトル解析
・Laplace方程式とPoisson方程式


電磁気学編 目次
① 電磁気学とは何か ←今ココ!
Maxwell方程式の導出
③ 真空中の静電場・静磁場
④ 静電場・静磁場とエネルギー
⑤ 物質中の電場
⑥ 物質中の磁場
⑦ 電磁場のエネルギー
⑧ 電磁波
⑨ 電気回路
⑩ 相対論と電磁気学
◼︎ 章末問題

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