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【図解】ティール組織における意思決定

僕がティール組織に惹かれる理由のひとつ。
それは、自主経営(セルフマネジメント)という概念。

ティール組織では、主体性を持ったメンバーが自分で意思決定を下す。空気を読んでとか、上司に言われたから、などの理由で意思決定を行うことはない。必要に応じて、関係者に助言を仰ぎながら、最終的に自ら意思決定を行う。

ティール組織は、ヒエラルキー組織と対比して用いられることが多いため、トップダウンとは真逆のボトムアップ(民主主義)で意思決定されると誤解している人がたまにいるが、それとは似て非なるものである。

「観点の広さ」と「思考の深さ」2つの軸を使ってその違いを説明したい。

「観点の広さ」と「思考の深さ」をどう補うか?

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当事者(個人およびチーム)が該当テーマについて、最も深く思考している前提にたった場合、思考の深さは担保できるが、限られたメンバーだけでは、観点が狭くなりがち。

そのため、施策の品質を高めるためには、図の赤枠エリアをどうやって埋めるか重要になってくる。ここまではどの組織構造でも同じだが、その埋め方に違いが出る。

ヒエラルキー組織での補い方

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ヒエラルキー型組織においては、上司から助言を受けることで、観点の広さや思考の深さを担保する。このプロセスを踏むことで質の高い意思決定ができる構造になっている。

つまり、
・意思決定品質は上司の優秀さに依存する
・当事者の納得度が低くなるリスクがある
といった特徴がある。

この記事を読んでいる人の中にも「納得してないけど、上司の○○さんが言うから仕方ないか、、、」と思いながら意見を反映した経験がある方もいるのではなかろうか?

ボトムアップ型組織(民主主義)での補い方

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ヒエラルキーとは真逆のボトムアップ型で意思決定を行うというのは、この図のような構造を意味する。

意見を広く集めるため、観点の広さは担保できるが、浅い思考の助言も含まれる。これらを平等に反映させる(同じ1票、同じ重みの意見として扱う)ため全体における納得度の高さは担保できるものの、品質の高さは担保できない。

つまり
・「意見を広く集めること=品質の高さ」の担保とはならない
・全体の納得度を醸成することができる
・全体から意見を吸い上げるため時間がかかる
といった特徴がある。

ティール組織での補い方

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ティール組織では当事者に意思決定が委ねられているため、広く助言を集めるものの、最終的にどの意見をどう反映するかは当事者が決める。

組織への影響度が大きいものほど、助言を求める範囲が広くなるため、ボトムアップと同じように広く意見を集める動きになるが、すべての意見を平等に反映させるということではない。あくまでも決めるのは自分(たち)だ。

つまり、
・当事者の意思決定力(見極め力)に依存する
・自分で決めるため、当事者の納得度は高い
といった特徴がある。

3つの違いを表にまとめる

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意思決定の品質を高めるために必要なこと

特定の組織の意思決定プロセスがベストという単純な話ではない。下の図のように、組織形態に合わせて意思決定の品質を高める施策を打つ必要がある。

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この手の話題は、「ヒエラルキー型組織の方が優れている」「いやティール組織が理想だ」というような論争になりがちだが、そうではなく、それぞれの組織形態の中で適切に課題を取り除くことができれば、どんな組織でもうまくいく。あとは、どれが自分に合っているかという世界だ。

もっとも危険なのは「流行っている」とか、「なんか良さそう」という安易な理由でティール組織を目指すこと。本質を理解せずに形だけを真似ると、ボトムアップ型と勘違いしたり、情報公開を制限してしまうなど、従来の意思決定品質よりも低くなり、ただ組織が崩壊する事態にも陥りかねない。

元ダイヤモンドメディアの武井さんも『ティール組織は「作るもの」ではなく「なるもの」』と表現されているが、言い得て妙だと思う。

僕がティール組織が好きな理由

ここまでで説明した通り組織形態に優劣はない。
それでも僕はティール組織が好きだし、この先もずっと関わり続けたいと思っている。

なぜか?

そこにいる人たちの幸福度がもっとも高い組織づくりにチャレンジしたいから。

「踊る大捜査線」の室井さんように(古い?笑)、偉くなって意思決定できるポジションについてから自分がやりたいこと実行することも一つの美学かもしれない。でも、そこにたどり着くまでは幸福とは言えないし、たとえたどり着けたとしても、ただ自分の幸福度が高いだけかもしれない。ヒエラルキー型組織は、構造的にそういう状況が起きやすいことは事実だ。

誰かにやらされるのではなく、自分の意思で選択して実行する、だから人は幸せでいられるのだと強く思っている。

ティール組織とは少し毛色が異なるが、経営にまつわるあらゆる権限を従業員に委譲する新しい経営スタイルを2000年代(もっと古いかも)から貫いているセムコ社を紹介している「奇跡の経営」という著書に記されている文章がずっと印象に残っている。

重要なのは、会社で働くことが、社員にとって辛く、疲れ果ててしまうようなことがあってはならないということだ。一週間のうち、5日間会社で働く。その5日間が苦痛で疲れ果ててしまう場所。そしてようやく週末になって、その2日間でエネルギーを充電し、活力を取り戻す。そして、次の苦痛である5日間に備える、などというのは人間が本当に望んでいることではない。

仕事をするのも、週末と同様に、社員が心から望むことであって、働けば働くほど元氣が出てくる、そういった休日のように充実した日々であるのが本来のはずだ。

それから、社員は大人なのだ。社会では大人とみなされ、そして家庭に戻れば、どこへ出掛ける、何を買うといったことを決めるデシジョンメーカーであり、リーダーだ。そんな社員が、会社組織の中では若造扱いされ、何をするにも上司の承認が必要で、やったことは逐一上司に報告しなければならない、なんておかしいではないか。社員は、立派な一人前の大人であり、自己管理できるのだ。それをなぜ管理監督しなければならないのだろう。そんなことは社員の誰も望んでいない。

そうそう!生きるってこういうことなんだ!と読みながら歓喜したのを今でも覚えている。この考え方は決して理想論ではなく、人が生きる上で本質的に大切なことだと心から思っている。

難易度は高いかもしれないけど、そこにいる人がみんな幸せな組織は夢物語ではないはず。これからもチャレンジし続けたい。

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