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Black Lives Matter:後編(2020年6月11日)

昨日に続き、ジョージ・フロイドさんの死をきっかけに世界中で発生している人種差別抗議活動を取り上げた記事の後編を共有します。The Economistは、トランプ大統領を「分裂の種をまこうとしている人物(a man who sets out to sow division)」と批判しながらも、アメリカという国が持つ思想とそれが社会にもたらす進歩に希望を託しています。

英語原文は、以下からどうぞ(後編はAmerica is both a country and an idea.からです):

抗議の力とジョージ・フロイドさんが遺したもの(後編)
2020年6月11日

アメリカは国であると同時に思想である。この二つが一致しない場合、アメリカ人以外の人々は、例えばメキシコやロシアで不正義が行われたときよりも敏感に、その不一致に気づく。このアメリカという思想に包まれているのは、進歩は可能だという信念である。

進歩の兆しは、すでに3つの形で現れている。最初の一つは、いくつかの州や都市で首を圧迫する拘束方法が禁止され、民主党の政治家たちが警察組合に対峙する姿勢を示していることである。6月8日、下院の民主党議員は、警察を起訴しやすくしたり国防総省から警察署への武器の譲渡を制限する法案を提出した。警察側を擁護するのではと思われた共和党議員も、独自の改革を進めようとしている。警察予算の「打ち切り」を求める動きは反発を招く危険性があるが、警察予算の一部を自治体による住宅や精神保健などのサービスに振り向けるという内容は考慮に値するかもしれない。

次は、自治体や連邦政府のより広範な改革が必要だという認識だ。アフリカ系米国人の家計資産の中央値は18,000ドルで、白人の米国人の10分の1である。この比率は1990年以降変わっていない。その大きな原因の一つに、多くのアフリカ系米国人が祖父母の時代から今に至るまで、白人居住区から離れた黒人居住区に隔離され、そこから抜け出せないことがある。これらの地域にある住宅は非常に安い。こうした居住地域の隔離は、学校教育、警察、保健の分野で不平等が続いている理由である。政府はこの不平等を解消する役割を担っており、連邦政府はすでに226億ドル相当の住宅関連支出を実施している。貧しいアメリカ人に住む場所の選択権を与える取り組みは、議会で共和党と民主党の支持を得ている。学校が良くなり、犯罪が減れば、隔離された居住区の改善が図られ、人種が混在するようになる。

そして、ビジネス界も責任の一端に目覚めつつあり、その動きは米国内にとどまらない。人々が最も混ざり合う場所は職場である。しかし、フォーチュン500企業のうち経営トップに黒人がいるのはわずか4社であり、米国人の上級管理職に黒人の占める割合はわずか3%である。こうした現状を懸念するCEOたちが続々と、状況改善のために取り組むことを約束している。企業には変革へのインセンティブがある。人種の多様性が利益率の向上につながり、その傾向が強まっていることが調査で示されている。ただし、多様性と好調な業績のどちらが先かを見極めるのは難しい。また、従業員や顧客の多くが人種差別に対処しない企業を敬遠することも明らかになっている。ありきたりなミッションステートメントは役に立たないだろう。最初のステップは、採用と昇進のすべての節目で多様性をウォッチすることである。意外なところでは、ゴールドマン・サックスやインテルがそうしたモニタリングを行っている。

大規模な社会変革は難しい。抗議活動は、広義の目的を達成するために巻き込むべき穏健な支持者を敵に回してしまいがちだ。変化への強い思いが具体的な改革に結びつかない国では、活動は一時的な盛り上がりで終わってしまうだろう。しかし、人種差別に取り組むのは難しすぎると考える人には、ジョージ・フロイドさんが生まれるわずか6年前まで、米国の16の州で異人種間の結婚が違法だったことを知ってほしい。今日では、米国人の約90%が異人種間の結婚を支持している。正義のために人々が一斉に立ち上がるとき、その活動は勝利を収める。それこそ抗議が持つ力である。(おわり)

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