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経済政策の限界を探る日本:後編(2020年6月4日)

2020年6月4日号のFinance & economicsカテゴリーに掲載された記事の後編です(前編はこちら)。もともと「異次元の金融緩和策」を発動していた日本が、コロナ禍でさらなる財政出動を余儀なくされる中、国の借金経営はどこまで持つのか?日本政府のお手並み拝見。。。といった論調が伺えます。そして、政府がこれほどお金を使っているのに、国民がそれを実感していない理由も、最終段落にちょっと登場します。

英語原文は、以下からどうぞ:

以下、マイバージョン和訳です(後編はMarkets have yawned in response. からです):

経済政策の限界を探る日本(後編)
融資保証を含めると、今年度の財政支援額はGDPの4割に達する
2020年6月4日

巨額の財政支援の発表にもかかわらず、市場の反応は鈍かった。日本の株価は3月の安値から着実に上昇しており、これは間違いなく、日銀の大規模な上場投資信託(ETF)購入を好感しての動きである。しかし、日本以外の先進国のほとんどでも株価指数は上昇している。国債の利回りはほとんど上昇していない。これは日銀のイールドキャップがその一因となっている。しかし、日銀の国債購入ペースは3月および4月以降鈍化しており、5月20日から31日の間は5兆円にとどまっている。円相場は意外なほど堅調に推移している。今のところ、日本の財政の持続可能性やインフレリスクに対する市場の懸念は増大していないとみられる。

このような大規模な借り入れに対する市場の無関心は、経済回復に取り組む他国にとって好材料かもしれない。2007-09年の世界金融危機以降、景気後退への対応策として大規模な政府の借り入れが必要だという考え方が経済学者たちの間で広がっている。しかし、パンデミック対策として実施されることになった驚異的な規模の債務発行は、政府の借金に歯止めが効かなくなるリスクをはらんでいる。日本に対する市場の反応が薄いことで、同様の政策に踏み切る国も現れるだろう。

日本の経験を拡大解釈するリスクが存在する。GDPの40%におよぶ国債発行は、その大部分が日銀の緩和によって暗黙のうちに賄われているが、この日本の例は、手厚い社会保障を実施するための資金源として政府借入を行う場合、どこまでが持続可能な水準なのかについて、世界中の議論に影響を与えると思われる。これほどの大型の景気刺激策にもかかわらず、日本経済の大幅な改善の見通しはほとんどない。日本の一人当たりの実質GDPは、先進国の水準から大きくは変わらない。

実のところ、日本政府がパンデミック前からこれほどの借り入れができているのは、国内消費が非常に弱いことにある。家計や企業の純貯蓄額、つまり投資額を引いた後の貯蓄額が高いことは、以前から指摘されている問題であり、消費が戻っていないことや経済的能力のフル活用ができていないことを表している。日本の人口構成も要因の一つである。定年を間近に控えた人々は貯蓄を増やしており、それが企業の大規模な国内投資意欲を削いでいることは確かである。しかし、企業が投資をしないことは、改革の失敗や将来展望の喪失をも意味する。日本は持てる力を最大限に活用できておらず、そのため例えば移民にとっても魅力的な国ではない。日本は、一見持続可能に思われる政策を世界に示した。しかしだからといって、他国もそれに従う価値があるというわけではない。(おわり)

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GDPに対する債務残高が世界一でも、日本は破綻しない。そんな風にも言われていますが、将来世代にツケが回るのは避けられないのでは。気候問題と同じく、長期的な視野での政策展開が待ったなしの状況です。


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