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経済対策の限界を探る日本:前編(2020年6月4日)

緊急事態宣言が全国で解除されてから2週間あまり。心配される第2波も今のところ抑えられていて、人々の関心は経済回復に向いているようです。まだ行き渡ってはいないけれど、巨額の財政支出を約束した安倍政権。その政策の行方を、英エコノミスト誌も注目しています(かなり懐疑的に)。Finance & economicsカテゴリーに掲載された記事を2回に分けて共有します。

英語原文は、以下からどうぞ:

以下、マイバージョン和訳です:

経済政策の限界を探る日本(前編)
融資保証を含めると、今年度の財政支援額はGDPの4割に達する
2020年6月4日

1990年代の日本は、無分別なマクロ経済運営がいかに問題を引き起こすかという教訓を世界に示しているようだった。他の政府はとっくの昔にそうした政策に見切りをつけていたのだが、2000年代になると、多くの経済学者たちは日本を先駆者と見るようになった。日本がとった低成長の押し上げ、低インフレの持続、ゼロ金利という政策は、他の富裕国の間でも繰り返し踏襲されてきた。

日本の政策は、極端な手法の限界が経済学者たちが当初予想していたよりもずっと先にあることを明らかにした。こうした政策は今後も続くかもしれない。5月末、日本政府が発表した歳出計画では、今年度の財政支援の総額がGDPの40%に達している(ただし融資保証を含むため、財政赤字はおそらくこの金額の半分以下になるとみられる)。このような巨額の支出は他国の政治家の安心材料になるかもしれない。それにしても、日本の財政的な過激主義は、政府の借り入れでできることの限界を露呈している。

日本での新型コロナウイルス感染症拡大は驚くほど緩やかであった。高齢者人口が多く、流行初期には感染者数が急増し、厳格なロックダウンの実施には至らなかったにもかかわらず、報告されている感染率は100万人当たり134人と先進国中最も少ない部類に入る。これは感染拡大の抑制に成功したといわれている韓国やニュージーランドより低い率である。

しかし、日本はパンデミックの経済的影響との戦いを、すでに苦しい立場からスタートしている。ほとんどの国ではコロナ禍によって景気拡大がストップしたが、日本では昨年から景気後退が始まっていた。財政再建努力の一環として昨年秋に消費税の増税が行われた結果、消費支出が大幅に減少している。2019年第4四半期のGDPは前期比年率7.1%縮小し、2020年第1四半期は同3.4%縮小した。第2四半期の縮小ペースは他国同様、これをはるかに上回るものとみられる。

こうした暗い見通しに対して、日本銀行は異次元の金融支援を継続している。日銀は2012年に安倍首相が就任してから日本経済の再生を主導し、2016年に導入したイールドカーブコントロール政策では、10年物国債の利回りを0%に抑えている(この政策は米国の一部で支持されている)。満期が長い国債の利回りは1%未満である。他の多くの中央銀行と同様に日銀も基盤の脆弱な企業に緊急融資を行い、さらには約62兆円の資産を購入しており、バランスシートはGDPの110%以上とこれまで以上に膨れ上がっている。

しかし、それ以上に注目すべきは巨額の財政支援である。安倍政権は4月に117兆円、つまりGDPの約20%に相当する支出と保証を発表したが、これはパンデミック対策としては世界最大級である。政府の対応に不満を募らせている国民からの圧力を感じたのか、さらに5月下旬、第1次とほぼ同規模の第2次補正予算案を発表した。

その結果、今年の財政赤字は未曾有の規模に達した。日本は経済規模の約4割にあたる額の国債を発行する。他のすべてが同じと仮定すると、2020年には政府歳入の6割近くが借金で賄われることになる。第3次補正の可能性も否定できない。日本政府の債務水準はすでにGDPの約240%に達しているが、今回の借り入れの急増とGDPの低下により、この割合がさらに増大することは間違いない。(後編に続く)

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後編もどうぞお楽しみに。週末まであと少し!健康でよい1日をお過ごしください。



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