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正方形日記 ~インスタで、その日起きた出来事を文字で書いていたら、気づいたこと


僕は写真が苦手です。

「あ、素敵だな」と思った景色が目の前に現れても、それからカメラを立ち上げて、アングルを気にして撮って、良く撮れたのを選んで......という作業に、以前からなぜかあまり楽しみを感じられませんでした。

一方で、言葉や文章が大好きです。学生時代から趣味で落語をやっているせいか、言葉で絵を描くように伝えることはとても楽しいと思っています。

だから、いろいろなSNSを使ってはいるものの、Instagramだけは上手く使えませんでした。

しかし、Facebookの友達が自動的にインスタグラムでつながるようになってきて、その中でもインスタだけを使っている友達が結構増えてきたので、ふと思いついて、インスタで140文字以内の日記を書いてみることにしました。下の投稿が一番初めのものです。


メモアプリを使い、その日起きたことを書いて、スクリーンショットを撮って上げるだけです。僕はTwitterをよく使っているのですが、Twitterではやたらと自分の思考とか気づきとか、格好つけていわゆる「意識高い」ことばかりを呟いてしまう癖があり、インスタでつながっているのは実際に仕事で顔を合わせる友達がほとんどなので、普段あまり見せることのない生活を切り取るように書いてみたら「インスタの写真の文字版」っぽくなるのかな? と思いながら始めてみました。

そうしたら、友達がたくさん「Like」をつけてくれたので、単純に嬉しくなって、毎日のように日記を投稿するようになりました。


これを日課にしていたら、この日記を書いているときに、脳がものすごく癒される、ということが起こり始めました。普段、仕事で考え事ばかりしていて、打合せではなんかカッコいいまとまったアイデアを話そうとして、SNSでは自分の思考を世界にぶちかまそうとしたりして......。そんな生活だったので、「ただ、あったことを、ウケなくてもいいから書く」という行為をとても気持ちよく感じました。

多分、ここで「Like」の数を見たりすると、他者評価を狙いに行ってしまってTwitterと同じになって癒しが減るだろうな、と悟ったので、数値的な反応は見ないで、とにかく事実だけを言葉で伝えようとしていました。


そうしていると、仕事の打ち合わせのときに、この日記のことを驚くほどたくさんの人に褒められるようになりました。「見てるよ」「面白すぎる」「センスがすごい」......。FacebookやTwitterのことは一切言われないのに。仕事のこともそんなに褒められないのに(笑)。
苦手だったインスタでの正方形日記が毎日誰かに褒められる。取引先の偉い人とかにもこの日記の話題で声をかけてもらえるようになりました。

そのうちに、「私もやってみたい」という声を頂くようになり、「ぜひぜひ!一緒に文字でインスタやりましょう~!」とお返事していたのですが、ほとんどの方から「やってみたら難しいね。これ、そうできるもんじゃないんだね。」という感想が返ってきました。

僕も、自分で続けながら、正方形日記というただの文字の日記をインスタでやることがいかに難しいのか、実は薄々感づいてきているタイミングに入っていました。


なぜ、インスタの中で文章の日記を書くことが難しいのか。

それは、実際に面白いできごとが起きないと、成立しないからです。


僕も正方形日記をやるまで、「え」とか「リア充」とかは、目に見える景色であり、それを切り取ってシェアできる人の人生が「インスタ映え」しているのだと、ぼんやり思っていました。だから僕はこの時代に写真がどんどん苦手になっていたのだということにも気が付きました。

僕はファッションやインテリアにはあまり興味がなく、毎日おもちゃの散らかった部屋で子供たちと遊んだり、家事をしたりするという、景色を見せようにも見せられない生活をしていました。でもそれは僕にとって最高の幸せで、写真には写らない面白いできごとが日常茶飯事に起きていました。

自慢するわけではないですが、僕の人生は本質的に充実していたのです。

インスタ上で面白い日記を書くことは、起きた出来事、つまり事実が面白くないとできません。写真よりも盛ることが難しいのが言葉です。盛ると「面白い」からかけ離れていってしまいます。僕の正方形日記が褒められたのは、文章力と言うより、実生活が褒められたということなのだと思いました。

そして、やはり人に褒められ、「見てるよ」などと言われると、より面白く書きたくなってきてしまうのが人の性。とはいえ毎日面白いことが起きるわけでもありません。正方形日記を面白く書く方法はただ一つ。現実で面白いことを起こすしかありません。

ここから、僕の生活にひとつの逆転現象が起き始めました。


正方形日記を、仮にも不特定多数の友達にさらすなら、面白い人生を送る方がいい。
そう意識するようになり、無理矢理ではないけど、家族との時間や仕事の中で、面白いことが起きる確率が高まりそうな行動をするようになりました。

面白いことは偶然にしか起きません。だから、面白い偶然が起こりやすくなるように行動を選ぶ癖がついていったのです。
まず、仕事をできるだけ早めに切り上げて家族といる時間を増やしました。そうなった自分に驚きました。「文章映え」を目指して行動変容が起きる。インスタの魔力を初めて知りました。人生が楽しくなるならそれが正解でしょう。
また、それまで家族の時間は結果的に4人全員でいることが多かったのですが、妻、長女、次女、それぞれと理由をつけて1対1で話したり遊んだりするようにもなりました。誰かと2人だけでいると、全員でいる時とは違う面白いことが起こることがありますよね。もちろん、3人のときも、家族以外の人がそこに加わるときも、普段と違う面白いことが起こります。


そうしているうちに、僕の正方形日記を見てくれていた友人が、「この文化は広めた方がいい!」と言って、絶大なる技術力で、iOS用の正方形日記を書く専用のアプリを作ってくれました。

これを使ってたくさんの方に「 #正方形日記 」でトライしてみて頂けると嬉しいなと思います。最初は難しいかもしれません。でも、この遊びは、僕も当初気付いていなかった力を持っています。日記が逆に人の生活を楽しく変えてくれるという力です。それはもちろん、写真でもイラストでも同じなのかもしれませんが、絵で切り取れない幸せは、幸せの本質なんじゃないかなと思う、落語好きからの提案です。終わり




※ちなみに、現実世界で誰にも褒められないTwitterはこちらです。↓


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