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フードデザート問題

 今日取り上げる話題は、今から10年以上前、東日本大震災の直後に発行された本のタイトルにもなっている、フードデザート問題です。
 「食の砂漠」ということで、意味的には、買い物難民、が近いような気がします。クルマ社会になり、近所の商店や中心市街地の商店街、高度成長期に建設された大規模団地内にある商店街から買い物客が離れました。
 その結果、鉄道利用の多い大都市近郊を除く地域では、そうした近所にある中小規模の食料品店はほとんどなくなり、ロードサイドに買い物場所がシフトしてきたわけで、このこと自体は、数十年も前から起こっていた現象であり、目新しい話題ではありません。
 ただ、そうしたクルマ社会前提の買い物スタイルをリードした、団塊の世代も高齢者となり、自ら自動車を運転することが難しくなってきています。そうなってみると、近所のお店がなくなってしまっており、路線バスなどの公共交通も本数が減って不便になっています。
 そもそも、自家用車で好きな時間に、手頃な価格で、好みの食材を買えることが当たり前になっているため、往復のバス代は割高に感じられるし、停留所まで行くのも億劫で、帰りのバスは1時間待ちはザラとなると、車を手放すことは容易ではありません。
 宅配サービスがあると言っても、どうしても割高になりますし、買い忘れとか、その時の気分で食材を選ぶとかもできないので、意外と不便です。
 結果的に、買い物に行けたときに日持ちするものを買い込んで、食生活も制約を受けて低栄養状態になる、そうしたことがこの本には書かれています。
 10年以上前の本ですが、今は団塊の世代も後期高齢者の年齢に入りつつあり、車の運転はいよいよ難しくなり、公共交通機関は感染症拡大後の利用者の落ち込みに加え、運転手不足問題もあり、利便性は低下しており、宅配の方は、以前よりは充実していると思いますが、インターネット利用がままならない高齢者もおり、全体としては当時より厳しい状況にあると思います。
 かくいう僕自身も、母がフードデザートに近い状況にあり、毎週の買い出しは欠かせません。近くにコンビニがあり、数分間隔で運行している近くのバス停からバスに乗れば、スーパーまで行くことはできますので、恵まれている方だと思いますが、それでも、車を自由に使えたころの利便性が忘れられず、食事への不満は強いようです。週3回、宅配弁当を取ってはいますが、当然ながら配送コストがオンされているため、価格に対する内容の満足度は低いようです。
 品ぞろえの豊富なお店で買い物する楽しみというのは、生活のQOLの維持にとっては、重要な要素なのだと、身近にそうした課題を抱えてみて、強く知らされます。

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