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平和の均衡点を見出す

 毎週、僕が見ているNHKの番組「映像の世紀 バタフライエフェクト」の、10月31日の放映は、「ソ連崩壊 ゴルバチョフとロックシンガー」でした。
 当たり前ですが、10歳の息子にゴルバチョフと言っても、ソ連と言っても何のことかさっぱりわからないようです。今から40年前は、鉄のカーテンが東西陣営の間に下ろされ、冷戦構造はずっと続くと思われ、当時の映画やSF小説などは、そうした東西陣営の対立が先鋭化し、全面核戦争に突入する、そういう作品が多くありました。
 現在の北朝鮮並みに情報統制がされた、当時のソ連と東側陣営諸国については、流れてくる映像は共産主義賛美の政治体制と、検閲されて人間の感情を濾過したようなそれらの国々の人々の「灰色の」映像であり、そこからゴルバチョフのような表情豊かな指導者が現れたのは、当時、西側諸国といわれた欧米、日本の人々からすると、とんでもないサプライズでした。
 結果的に、ゴルバチョフの改革はソ連邦の崩壊を招き、その過程で経済は一層混乱したため、当時のソ連の中核であったロシア国民の評判は悪いようですが、ソ連の鎖につながれていた東ヨーロッパ諸国やバルト三国の人々にとっては、「盟主」の判断により、平和のうちに自由を手に入れたわけで、ゴルバチョフの決断は世界に多くの自由をもたらしたことは間違いなく、20世紀の偉人の一人だと思います。
 おそらく、1990年代の冷戦の終わりを見届けて亡くなった人々は、よもや世界が再び対立の構図に陥りつつあることは、思いもよらないかもしれません。
 ただ、平和というものは一度手に入れて、それがずっと続くということはありません。平和は状況の安定、配分の固定化によって実現されるものであり、国と国のパワーバランスが変化すると、力を持った側が不満を持ち、配分の変更を求めるようになります。
 今は国連などがあり、複合的な抑止力が働いているため、日本の戦国時代のようにいきなり力による配分変更を求める動きにはならないわけですが、それでも不満が高まると、昨今のような事態が発生します。
 とはいえ、戦争は権力者の権威を維持するために用いられ、国民には大きな犠牲を強いることになり、強引な戦争により権益を手に入れても長くは保持できません。平和は待っていて与えられるものではなく、常に関係を再構築する中で、均衡点を見出す、政治指導者は国家間で利害の対立する中、国内をまとめながら、根気のいる作業を強いられるわけで、大変だとは思いますが、人的交流を維持しつつ、次の均衡点を見出し、再び平和な時代を、次の世代に手渡したいものです。
 


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