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味がない人

 昨日はある企業の社長さんと食事をしていました。

 この人、最初は仕事を通じたつながりだったのですが、そのうち、仕事を超えた絆ができて、今は仕事では直接関係ないのですが、時々声がかかり、食事を共にしています。

 会社の方からは、現役の関係セクションの幹部と社長との間に僕が入ることで、この社長と率直に話し合える関係を築いてほしいと、言われているのですが、
社長にそれとなく話すと、仕事上の役回りで、昼間に話をするのは全然かまわないけれど、正直話していて「味がない」ので、場外で会うまでないかなという感じで、やんわりと断られます。

 この「味がない」という表現、何となく僕もわかるような気がします。

 話をしていても、広がりがないし、面白くないという感覚。

 自分の持ち場を守り、そこからはみ出ることはしない人を相手にすると、切り取った型しか見えないので、なんでこの人、こういう考えなのかとか、バックグラウンドもわからないので、後ろが漆黒なので、失礼ながら、少々気味悪くもなります。

 僕は、これはと思う場面で、人と仕事をするうえで、相手から求める以上のものを引き出すためには、経験則から、まずは自分の持てるものをさらけ出して、そこから切り取って提供するようにしています。

 イタリアンレストランで、まずはドーンと生ハムを持ってきて、あるいはチーズの塊を運んできて、目の前で生ハムをスライスしたり、チーズをすりおろしてその場でリゾットを作る感じでしょうか。

 全部見せたからといって、全部くれということにはならないし、何より、提供されている食材の出元がはっきりしているので、安心です。

 当然ビジネスにおいては、全部をさらけ出す必要も、それでうまくいくかもわからないですが、出し惜しみすると一期一会の引っ掛かりはないわけで、そこを点とした広がりも生まれません。

 もしご縁がなければ、その場限りでしょうし、波長や相性が合えば、仕事の損得を超えて、付き合いは続くし、つながった相手を起点に、いろんな人とのご縁を頂くこともできます。

 もちろん、僕の方も、相手のことを「味がない」と思えば、あえて切り取ったものだけを渡して、それで済ますこともあります。

 ただ、そういう相手であっても、型にはまったやり取りで終わらせる前に、何らかのかたちで、僕の背景の「チラ見せ」は、するようにしています。それで意外とリアクションがあり、そこから糸を手繰って面白き関係をつくることもありますので。

 こうした人は、自分を出すのが不得手なのでしょう。

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