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稼ぐ力は不可欠

 人事院勧告が出て、国家公務員の初任給について、職種により異なるものの、少なくとも2万円以上は、上がることになりそうです。

 配偶者に対する扶養手当廃止は、現状において女性の社会進出を後押しする環境が既に整備されている中、それでも働けない事情を抱えた人を切り捨てる、強者の論理が見え隠れしており、
地域手当の見直しについても、何をもってその地域の物価が高いとするのかは難しいので、これらの手当の見直しについては賛否の分かれるところだとは思いますが、基本給の部分が引き上げられるので、全体的な賃上げにはつながるものと思います。

 バブル崩壊後、長らく公務員に対する風当たりは強く、給与や手当を下げる方向への見直しばかりが行われ、福利厚生についても低下する一方で、公務員全体に赤字財政の責任があるかのような雑な議論も、まかり通るような状況でした。

 ある意味、いじめ過ぎたことで、ここ数年は公務員離れが顕著になり、ようやく引き上げの環境が戻ってきた感じがします。地方公務員も国に準拠して勧告が行われるので、地域手当などの微妙なところはあるにせよ、大筋としては同程度の引き上げになるのでしょう。

 ただ、これにより、地域の公務員の給与水準が引き上げられることで、その地域の民間企業も、それに引っ張られるかたちで賃金の引き上げにつながるかといえば、微妙なところだと思います。

 やはり、民間企業の場合は、安定的に稼げないと社員の給与引き上げという構造改革は難しく、インバウンドの効果により、恩恵を受けている地域もあると思いますが、
そうした恩恵から外れ、物価だけが上がり、厳しい地域も少なくないので、経済のパイが拡大していた高度成長期とは異なり、将来の先行きも考えると、上げるに上げられず、都市部との賃金水準が拡大して、じり貧になるようなところも、出てくるのではないかと思います。

 また、公務員の給与は、今の環境では上げるべきだとは思いますが、付加価値の高い仕事をやっているわけではないため、高付加価値を生み出す企業を伸ばすための環境整備に、役所の人的リソースを割かないと、いずれ財政面で苦しくなり、給与抑制をせざるを得なくなります。

 福祉や医療、教育も大事なのですが、経済をけん引する産業を育て、伸ばさないと、これらの分野の財源を確保することが難しくなってきます。

 昨今は、人手不足の解消ということに、フォーカスがあたっていますが、経済をけん引する産業に限られた人材を重点配分する、ここは、稼ぐ企業が給与水準を引き上げて人を吸引する、市場原理に任せた方がうまくいくと思いますし、公的セクターは、そうした人的リソースのシフトが円滑に進むような政策を実行することが、求められているように思います。

 

 

 


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