決める毎日と引継ぎの難しさ

 このところ、難しい案件が次々と覆いかぶさってきたことで、心理的なプレッシャーを受ける日々を過ごしていました。
 僕の今のポジションでは、動けば何かを「決め」にいかなければならないため、動く前には、どの範囲まで自分の裁量で動けるのかを確認したうえで、次に相手の出方のパターンを描きながら、ここまでは踏み込んで決める、その代わりここは譲らないといった戦略を持ち、公式、非公式のさまざまな折衝に臨むことになります。
 事前の頭の体操は他人に任せられないため、自分の中でぐるぐる回すか、壁打ち相手をみつけて第三者的視点を返してもらうことで、澱んだ思考回路に清新な水を取り込んだりしています。
 また、僕が最終的に判断する案件については、自分のところに情報が来るまで待っていると、事態が悪化しており、巻き返しに余計な時間を費やすといったことも時々起こることから、アンテナは高く広く張っておき、情報は何となく把握したうえで、早く決めた方がよさそうな案件は、待たずに呼び込む、そこまで至らずとも、哨戒によって入手した段階で、ある程度、過去の経験則に基づき、頭の整理をしておくなども必要になります。
 仕事が仕事を呼ぶといいますが、注目されている困難な案件を抱えると、多方面から関心を寄せられ、その案件自体も、雪だるま式に仕事を増やしていくのに加え、そうし案件の持つ強い磁力は、反発と吸引の両方の動きを周囲にもたらし、予期せざる方向から大きな案件を吸引してくるということもあります。
 こうした経験値の蓄積は、組織として共有しなければならないものですが、肝となる、課題解決のプロセスや、その間の人間関係の機微に関わる調整については、属人的な要素も大きく、そこから属人的要素を取り除いたノウハウや知見を共有すると、魂の抜けた、味気のないものになりがちです。
 個人でビジネスをしていると、こうした属人的要素は、他者に対して参入障壁を築くことにもなり、歴然とした強みにもなりますが、組織の中で個人がそれを持ったまま異動してしまうと、全く生かされないわけではないですが、結果的に、力が削がれることになってしまいます。
 組織のトップが変わるときに、属人的要素も次代に引き継ぐには、先代から次代への「魂入れ」、あるいは、禅の言葉にある「一器水瀉一器(いっきすい しゃいっき)」をできる関係にあるかが重要ですね。
 ただ、これも、後継者指名ができて、ある程度の見習い期間も確保したうえでのことですので、1週間や10日前に後継が決まり、その間に引き継ぐという現状においては、好条件が重ならない限り、難しいところですが。

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