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京葉線の改正ダイヤ見直し

 京葉線が3月に改正したダイヤを一部見直し、各駅停車を快速に変更することで、東京から離れている、千葉市南部のターミナル駅である蘇我や、その先の外房線、内房線沿線の利用者の速達性を回復し、
さらに、これまで通勤快速が通過していた海浜幕張などにも停車することで、朝の時間帯に需要のある、房総方面から幕張新都心界隈への通勤、通学利用者の利便、幕張新都心居住者の都心アクセスの改善も図ることとなったようです。

 秋のダイヤ改正で実施ということで、通常のダイヤ改正は3月であり、秋の改正は特別な事情がない限り行わないことを考えると、異例の措置であり、自治体が経済界や利用者を巻き込んだムーブメントが、これまでこうした要望を正面から受け止めることのなかったJR東日本を動かした点において、画期的なことです。

 ただ、今回の京葉線のダイヤ改正は、単なる減便ではなく、列車種別の変更のため、3月から快速が各駅停車になることで乗車機会の増えた、快速通過駅にとっては、歓迎すべき改正だったわけで、この見直しに対する反発の声も、相応にあるのでしょう。

 京葉線に地域ブランドの価値を大きく依存する、内房、外房地域に配慮した見直しと言えると思いますが、この振り子を戻し過ぎると、今度は東京に近い地域からの反発が強まるため、県としてはここで手打ちをする、それが熊谷知事のコメントにあらわれているように思います。

 今回の京葉線のダイヤ改正は、利用の平準化を図ることでコストを最適化するという、人をモノと同様に効率第一に考え、しかも、一気にやり過ぎてしまった。

 一方の自治体サイドも、おそらくこうした改正は所与のもので変えられないという意識があり、初動では出遅れたものの、反発が燎原の火のように広がる動きをみて、急速に方針転換し、一気に攻め立てた、結果、難攻不落の要塞を陥落させた、そんなようにみえます。

 ただ、今回のことで、各地でJRとの対立軸のある、沿線の自治体や住民に対し「JR東日本と戦っても勝てるんだ」という、日露戦争における日本の勝利のようなインパクトを与え、減便や廃線の議論にも、影響を与えることは必至なように思います。

 京葉線という採算性の高い路線でのさらなる効率性を追求した今回のダイヤ改正と、出血を強いられている不採算路線の減便や廃線は、フラットに考えると次元の違う話であるものの、その切り分けを、廃線を巡る議論の現場で言明するのは難しいでしょう。

 中長期的なダウンサイズのトレンドは変わらないものの、今回の京葉線という戦場における地域サイドの「勝利」は、追い詰められつつある各地の自治体や住民に、強力な武器、あるいはやればできる。という「勇気」を、与えたのではないかと思います。

 今回の京葉線のダイヤ見直しは、全国的に注目を集めた分、今後の、鉄道やバスのありかたを巡る各地の議論に、具体的にどのような影響を与えるのか、興味深いところです。

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